第20話 光の名前 宇宙は、何ひとつ忘れない
三月の朝
三月になると、遥は毎年決まって、少しだけ呼吸が浅くなる。
自分でも気づかないうちに、そうなっている。
朝、目が覚めて、カーテンの隙間から春の光が差し込んでいるのを見て、ああ三月だ、と思う。それだけで胸のどこかが小さく締まる。痛みというほどではない。ただ、何かが引っかかっているような、古い傷口がかすかに疼くような感覚。二十年間、三月のたびに繰り返してきた感覚。
橋本遥は小学校の教師だ。
今年で三十二歳になる。担任を持つようになって七年目で、今年は二年生のクラスを受け持っている。子供たちのことは好きだった。あの真っ直ぐな目が、まだ何色にも染まっていない声が、好きだった。でも三月だけは、子供たちの顔を見るたびに、胸の奥で何かが揺れた。
八歳の顔を見るたびに、光のことを思い出すから。
弟の光が死んだのは、遥が十二歳、光が八歳の春だった。二十年前の三月。学校の帰り道、飛び出してきた自転車を避けようとして、光は川に落ちた。水はまだ冷たかった。二十分後に引き上げられたとき、光はもう目を覚まさなかった。
遥はその日、先に家に帰っていた。
夕方になっても光が帰ってこなくて、母が顔色を変えて走り出した。遥は玄関先に取り残されて、外が暗くなっていくのをただ見ていた。光が死んだと聞かされたのは、夜になってからだった。
あれから二十年。
遥は光の名前を、誰にも言えずにいた。
正確には、言えないのではなく、言わなかった。言うたびに、その名前が空気の中に溶けて消えていくような気がして。言葉にすることで、本当に遠くへ行ってしまうような気がして。だから弟の話をするときも、「弟」とだけ言って、名前は言わなかった。二十年間、ずっと。
その朝も、遥は三月の光の中で目を覚ました。
カーテンを開けると、空が薄く青かった。梅の花がもう散り始めていて、隣の家の庭に白い花びらがいくつか落ちているのが見えた。遥はしばらく窓の外を見てから、着替えて朝食を作った。トーストと目玉焼きと、インスタントのコーヒー。毎朝同じ献立で、それが遥には落ち着いた。
学校に着いたのは、八時を少し過ぎた頃だった。
職員室に入ると、同学年の松田先生が声をかけてきた。
「橋本さん、今日から転校生が来るの、知ってた? 二年三組に」
二年三組は、遥のクラスだった。
「聞いてます。川島ひなたさん、でしたっけ」
「そう。お父さんの転勤で。静岡から来るって。なんか、大人しい子らしいよ」
遥はうなずいた。転校生は毎年何人かいる。最初は緊張しているが、一ヶ月もすれば馴染む。そういうものだと知っていた。
でもその日の朝は、なぜか少しだけ、胸の奥がざわついた。
川島ひなたは、十時前に教室に現れた。
遥が「みんな、今日から一緒に勉強するお友達だよ」と紹介すると、ひなたは深々とお辞儀をした。「川島ひなたです。よろしくお願いします」。声が小さかった。目が、不思議な目をしていた。
何が不思議なのか、うまく言葉にできない。大きいわけでも、特別な色をしているわけでもない。ただ、どこか遠くを見ているような目だった。教室の中を見渡しているのに、もっと遠い何かを見ているような。
席は窓際の一番後ろになった。ひなたは静かに座り、最初の時間をじっと前を向いて過ごした。
休み時間、女の子たちが何人か声をかけに行ったが、ひなたはどこかぎこちなく、うまく会話が続かないようだった。遥は遠くからそれを見ていた。
昼休み、遥が教室に戻ると、ひなたが一人で窓の外を見ていた。他の子たちはグラウンドに出ていて、教室には二人だけだった。
「ひなたさん、外に行かないの?」
ひなたは振り返った。
「先生のこと、知ってる気がします」
唐突だった。遥は一瞬、言葉に詰まった。
「知ってる気がする?」
「うん。会ったことないけど、知ってる気がする」
ひなたは不思議そうでも、怖そうでもなかった。ただ、当たり前のことを言うように、静かにそう言った。
遥は笑顔を作った。
「そっか。じゃあ、これからよろしくね」
ひなたはうなずいた。それだけだった。でも遥の胸の奥で、あのざわつきが、もう少しだけ強くなった。
宇宙が覚えていること
それからひなたは、少しずつ遥に近づいてきた。
授業の後に黒板消しを手伝いに来た。給食の時間、配膳を率先してやった。放課後、遥が採点をしていると、「手伝えることある?」と声をかけてきた。他の子との距離は相変わらずあったが、遥とだけは自然に近くにいた。
遥にはそれが、不思議でもあり、くすぐったくもあった。子供に好かれることには慣れていたが、ひなたの近づき方は少し違った。懐くというより、確かめるような。もうすでに知っている何かを、もう一度確かめようとしているような。
三月の第二週、図工の時間のことだった。
その日のテーマは「好きな景色を描こう」だった。子供たちはそれぞれ、遊園地や海や山や、家の近くの公園など、思い思いの景色をクレヨンで描いた。遥は机の間を歩きながら、一枚一枚を覗き込んだ。
ひなたの席の前で、足が止まった。
川の絵だった。
青い川が横に流れていて、その上に小さな橋がかかっている。橋のたもとに、葦のような草が茂っていて、川の向こうに小さな山が見えた。空は薄い水色で、雲が二つ、ぽつんと浮いていた。
遥は息を止めた。
見覚えがあった。
光と二人で、よく遊んだ川だった。橋のたもとの葦。向こうに見える山の稜線。細部まで、記憶の中の景色と重なっていた。
「ひなたさん」
「うん」
「この川、どこの川?」
ひなたは首をかしげた。
「わかんない。夢で見た川」
「夢?」
「うん。よく見る夢。この川で、誰かと遊んでる夢」
誰かと、という言葉に、遥の心臓が一拍だけ跳ねた。
「その誰かって、どんな人?」
ひなたは少し考えてから、
「小さい男の子。でもよく見えない。いつも光の中にいるから」
と答えた。
光の中に。
遥はそれ以上聞けなかった。笑顔を作って「きれいな絵だね」と言い、次の席へ移った。でも胸の奥で、何かが静かに揺れ続けていた。
その週の金曜日、ひなたが一冊の本を持って職員室に来た。
「先生、これ、面白いよ」
図書室で借りてきたらしい。薄い本で、表紙に星空の写真が使われていた。タイトルは『宇宙はすべてを覚えている ——量子のふしぎな世界』。子供向けの科学読み物のようだった。
「どこが面白かった?」
「ここ」
ひなたがページを開いた。
遥は覗き込んだ。そのページには、こんなことが書かれていた。
『宇宙には、目には見えない大きな「場」があると考える科学者たちがいます。その場には、宇宙で起きたすべてのことが、波のかたちで記録されているといわれています。あなたの笑った顔も、泣いた声も、大切な人と過ごした時間も——すべては消えることなく、宇宙のどこかに残り続けているのです。』
遥はしばらく、その文章を見つめていた。
「死んでも消えないってこと、ここに書いてある」
ひなたが静かに言った。
「宇宙が覚えてるなら、消えないじゃん。どこかにずっと残ってるじゃん」
八歳の子供の言葉だった。難しい理屈でも、大人の慰めでもなく、ただ当たり前のことを言うように、そう言った。
遥はひなたの顔を見た。ひなたは遥を見ていた。あの、遠くを見ているような目で。
「ひなたさんは、誰かを亡くしたことがある?」
ひなたは少し考えてから、首を横に振った。
「ない。でも、なんかわかる気がする」
なんかわかる気がする。
遥は本をひなたに返しながら、「そうだね」とだけ言った。それ以上の言葉が、出てこなかった。
その夜、遥は一人でアパートに帰った。
夕食を作る気になれなくて、コンビニで買ってきたおにぎりを食べながら、ひなたの描いた川の絵を思い返した。橋のたもとの葦。向こうの山。光の中にいる小さな男の子。
二十年間、遥は弟の死をどこかで「処理」しようとしてきた。受け入れる、という言葉はなんとなく好きではなかった。受け入れるというのは、諦めることのような気がして。だから処理という言葉を使った。感情を整理して、棚の奥にしまって、日常を続ける。そのやり方でなんとか二十年を生きてきた。
でも光の名前だけは、しまい切れなかった。
名前は、棚に入れられない。
光、という名前は、その字のとおり、光そのものだった。明るくて、どこにでも入り込んで、消えようとしない。二十年間、誰にも言わずにいたのに、胸の奥ではずっと輝き続けていた。
遥は窓の外を見た。夜の空に、星がいくつか見えた。
宇宙はすべてを覚えている。
ひなたの持ってきた本の言葉が、頭の中で繰り返された。あなたの笑った顔も、泣いた声も、大切な人と過ごした時間も——すべては消えることなく、宇宙のどこかに残り続けている。
そうだったら、と遥は思った。
そうだったら、光はまだどこかにいるのだろうか。二十年前のあの川の記憶も、二人で橋の上から石を投げた午後も、光が折ってくれた星の折り紙も——みんな、宇宙のどこかに残っているのだろうか。
答えはわからなかった。でも、信じたいと思った。
今夜は初めて、そう思えた。
光、という名前
三月の第三週、遥は家庭訪問で川島家を訪れた。
ひなたの母・真由は、三十五歳の穏やかな女性だった。玄関先で丁寧にお辞儀をして、「狭いところですが」と言いながら居間に案内してくれた。
お茶を出してもらいながら、遥はひなたの学校での様子を伝えた。少しずつクラスに馴染んできていること、図工の時間に素晴らしい絵を描いたこと、先生のお手伝いをよくしてくれること。
真由は柔らかく笑いながら聞いていた。でも話の途切れ目に、少し表情が変わった。
「先生、ひとつ、お話ししてもいいですか」
「もちろんです」
真由はお茶のカップを両手で持ち、少し間を置いた。
「ひなたはね、三歳のとき大きな病気をしたんです。高熱が続いて、一時期とても危なかった。一度、心臓が止まりかけて」
遥は静かに聞いた。
「それからなんですけど、ひなたが時々、不思議なことを言うようになって。会ったことのない人の夢を見たとか、知らない場所を知ってるとか。最初は子供の空想かと思っていたんですが、あまりにも具体的で・・・」
真由は言葉を選ぶように、少し間を置いた。
「先生のことも、夢で見ていたみたいです。転校が決まったとき、ひなたが『あの先生のところに行くんだ』って言って。私、驚いてしまって」
遥の心臓が、静かに揺れた。
「それと・・・こんなこと言うのは変かもしれないんですが」と真由は続けた。「私、ひなたが病気をしてから、いろいろ調べたんです。こういう子供の話って、世界中にあるみたいで。科学的には、意識というのは脳だけにあるんじゃなくて、もっと大きな何かと繋がっているんじゃないかって考える研究者もいるらしくて」
「大きな何か」と遥は繰り返した。
「うまく説明できないんですけど。宇宙全体に広がっている場のようなもので、そこに意識や記憶が保存されているんじゃないかって。夢の中や、ふとした瞬間に、そこと繋がることがあるんじゃないかって」
遥はひなたの持ってきた本を思い出した。宇宙はすべてを覚えている。
「信じますか、そういう話」と真由は少し照れたように笑った。
「変ですよね、急にこんな話」
「変じゃないです」と遥は言った。
「むしろ、私も少し、そう思うことがあって」
真由は少し驚いたように遥を見た。
「先生も?」
「ええ」
遥は窓の外を見た。春の空が、薄く青かった。
「私、弟を亡くしているんです。二十年前に」
言葉が、自然に出た。
真由は何も言わずに、遥を見ていた。
「八歳のときに。だから、ひなたさんの顔を見るたびに、なんとなく、重なるものがあって」
「そうだったんですね」
真由の声が、柔らかかった。
遥は深呼吸をした。二十年間、棚の奥にしまい続けてきたものが、今日だけ、少し外に出てきているような気がした。
「弟の名前、誰にも言えなくて。言うたびに、遠くへ行ってしまいそうで。ずっと、名前だけは言えなかったんです」
真由は静かにうなずいた。
「光、っていうんです」
声に出した瞬間、胸が熱くなった。
光。
二十年ぶりに、声に出して呼んだ名前。空気の中に溶けて消えると思っていた。でも消えなかった。むしろ、言葉にした途端に、その名前がはっきりと輝いたような気がした。
「光くん」と真由が静かに言った。「素敵なお名前ですね」
遥は返事ができなかった。ただ、うなずいた。
その夜、遥はアパートに帰ってから、母に電話をした。
「光のことが聞きたくて」
電話の向こうで、母がしばらく黙った。それから、「どうしたの、急に」と言った。
「なんとなく。聞きたくなった」
母は少しの間置いてから、話し始めた。光が生まれたときのこと。よく笑う子だったこと。折り紙が得意で、星をよく折っていたこと。遥の後ろをいつもついて歩いていたこと。
遥は電話を耳に当てたまま、泣いた。
声を出さずに、静かに泣いた。二十年分の涙が、少しだけ外に出てきた。
「光のこと、好きだったよ」と遥は言った。
「光もそうよ」と母は言った。「遥お姉ちゃんのことが、大好きだったんだから」
絵の中の橋
学期末が近づいた頃、ひなたがまた図工の時間に絵を描いた。
その日のテーマは「大切な人へ」だった。子供たちは家族や友達や、ペットの絵を描いた。遥は机の間を歩きながら、声をかけて回った。
ひなたの席の前で、また足が止まった。
今度も川の絵だった。でも、先月の絵とは少し違っていた。
川が流れていて、橋がかかっている。橋の上に、二人の子供が立っていた。一人は女の子で、もう一人は男の子だった。二人は並んで立っていて、川の向こうを見ていた。男の子は女の子の隣で、少しだけ笑っているように見えた。
女の子は、遥に似ていた。
子供のころの遥に。
「ひなたさん」
「うん」
「これ、誰の絵?」
ひなたは少し考えてから答えた。
「夢で見た人たち。よく出てくるの。この二人」
「この男の子は?」
ひなたはクレヨンを持ったまま、絵を見た。
「名前、知らない。でも、光の中にいるから、光くんって呼んでる」
遥の手が、小さく震えた。
光くん。
ひなたが、その名前を知るはずがなかった。遥は誰にも言っていなかった。真由には言ったが、ひなたには言っていない。
「ひなたさん、その名前、誰かから聞いた?」
ひなたは首を横に振った。
「夢の中で、そう思った。光の中にいるから、光くん」
遥は声が出なかった。絵の中の男の子を見た。丸い頭、小さな手。光の中で笑っているような表情。
「先生、どうしたの?」
ひなたが遥の顔を見上げた。
遥は首を振った。「なんでもない。きれいな絵だね」
でも声が、少しだけ揺れていた。
学期の最終日、ひなたが放課後に職員室へ来た。
手に、折り紙で折った小さなものを持っていた。
「先生、これ、あげる」
差し出されたものを、遥は受け取った。
星だった。
小さな、六角形の立体的な星。折り紙の星。
遥の手が止まった。
光が、よく折ってくれた。あの星だった。折り方も、大きさも、紙の質感まで、記憶の中のものと同じだった。
「どこで覚えたの、この折り方」
ひなたは首をかしげた。
「わかんない。気がついたら知ってた」
気がついたら知ってた。
遥はその星を、両手でそっと持った。軽かった。折り紙一枚分の重さしかないのに、どうしてこんなに重く感じるのだろうと思った。
「先生にあげたかった」とひなたは言った。「ずっとそう思ってた。転校が決まった日から」
遥は顔を上げた。ひなたが遥を見ていた。あの、遠くを見ているような目で。でも今日だけは、少し違った。もっと近くを見ているような。今ここにいる遥を、まっすぐ見ているような。
「先生、弟さんのこと、大好きだったんだよね」
遥は息を止めた。
「うん」
「向こうでも、大好きだと思うよ」
ひなたは当たり前のことを言うように、そう言った。難しい言葉でも、慰めの言葉でもなく、ただ知っていることを伝えるように。
遥は返事ができなかった。
星を胸に当てて、目をつぶった。涙が出そうになるのを、唇を噛んでこらえた。こらえきれなくて、一粒だけこぼれた。
「ありがとう」
それだけ言った。声が震えていた。
ひなたは「うん」とうなずいた。それだけだった。でもその「うん」の中に、たくさんのものが入っているような気がした。
その夜、遥はアパートの窓を開けた。
春の終わりの風が入ってきて、カーテンが揺れた。空に星がいくつか出ていた。
遥は折り紙の星を窓辺に置いた。小さな星が、外からの光を受けて、淡く輝いた。
宇宙はすべてを覚えている。
ひなたの持ってきた本の言葉が、また頭の中に浮かんだ。あなたの笑った顔も、泣いた声も、大切な人と過ごした時間も——すべては消えることなく、宇宙のどこかに残り続けている。
光もそこにいるのだろうか。二十年前の三月の川の記憶も、橋の上で二人で見た景色も、光が折ってくれた星の形も——みんな、宇宙のどこかで、波のように広がり続けているのだろうか。
わからない。証明することはできない。
でも遥は今夜、初めて、「そうかもしれない」と思えた。疑いながらではなく、頭で考えながらではなく、ただ静かに、そう思えた。
「光」
声に出して呼んでみた。
返事はなかった。
でも、風がすうっと入ってきて、カーテンが揺れた。窓辺の星が、小さく揺れた。
遥は笑った。
泣きながら、笑った。
そういう笑い方があることを、遥は今夜初めて知った。悲しいのに笑えるのではなく、悲しいことと嬉しいことが同じ場所にあって、どちらも本当で、だから泣きながら笑えるのだということを。
翌朝、遥は学校へ行く前に、実家に電話をした。
「お母さん、光の写真、送ってくれる? スマホに」
母は少し驚いたように「どうしたの」と言ったが、すぐに「わかった」と答えた。
しばらくして、写真が届いた。
川の土手で撮った写真だった。八歳の光が、カメラに向かって大きく笑っている。目が細くなるまで笑っている。春の光の中で。
遥はその写真を、しばらく見つめた。
二十年間、棚の奥にしまい続けてきた名前が、今日は胸の中で、静かに輝いていた。痛みではなかった。あたたかさだった。
「光」
もう一度、声に出した。
今度は泣かなかった。ただ、笑顔で呼べた。
外では春の風が吹いていた。新しい季節の、やわらかい風だった。
遥は鞄を持って、玄関を出た。空が青く、高かった。どこまでも続く空の向こうに、宇宙があって、その宇宙のどこかに、光の記憶が波のように広がっているのかもしれない。
そう思いながら歩くと、足取りが少し軽かった。
三月の空の下を、遥は歩いた。
今年の三月は、去年までとは少し違った。胸の奥の締まりが、ほんの少しだけ、ゆるんでいた。




