【2-09】 洞窟の夜
洞窟内をあちこち調べて回ってたら、いつの間にか暗くなっていた。
そろそろ夜かな? 窓がなくて外の様子がわからないのが、洞窟の難点だな。
首を伸ばして入り口から外を覗くと、少し空が見えた。あ、もう星が出てる時間か。
洞窟で過ごす、初めての夜。
もう、森の中で寝るのに完全に慣れたぼくには、今さら洞窟で寝るくらいで特別な感想はない。むしろ、普通に部屋の中にいるのに近い感覚で、森の中で寝るよりも落ち着く。
少し暗いけど、もし何かいれば、たとえ岩のむこうに隠れていても、ドラゴンは気配で全部わかるからな。暗闇や狭い場所を恐れる必要は何もない。
というか、そもそも暗闇ではない。
さすがに夜の洞窟の中となると、ドラゴンの目でも昼間のようにとはいかないらしい。ドラゴンになって以来初めて、本気で暗いと感じたような気がする。
でも、それでも一応、周囲の様子はちゃんと見えてる。岩だらけで凸凹の洞窟の中を、何の不安もなく歩き回れるくらいには。
寝る前に、少し洞窟の入り口まで行って、外の様子を眺めてみた。
外の景色は、ドラゴンの目では昼間とたいして変わらない。少し薄暗いのと、空が暗くて星が出てるだけて……。
あ、もうひとつ違う点が。例の大きな町は、洞窟の入り口からちょうど真正面に見える。その町に、明かりがついていた。
まだ電気はないだろうから、たぶん炉とかランプの明かりなんだろう。正直言って、あまり明るくはない。ドラゴンの目ではもともと景色全体が明るいこともあって、夜景としてはいまいち映えないな。
『黒いビロードの上に宝石を散りばめたような』みたいな感じの夜景は、ドラゴンは見ることができないわけか。まあ、仕方ないけど。
さて、特にすることもないし、そろそろ寝るか。
どこで寝ようかなあ。洞窟の中なんて、どこで寝てもたいして変わらないとは思うけど。
天然の洞窟だから床が完全に平らな場所なんてないけど、なるべく凸凹の少ない場所の方が寝心地はいいはず。改めて見回してみると、洞窟の床には途中に小さな段差があって、奥側の3分の1くらいが少し台状に高くなっている。あの台の上、他より凸凹が少なそうだな。
上がってみると、広さもぼくが寝るのにちょうどいい感じ。よし、ここをぼくのベッドということにしよう。




