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一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい  作者: 司真 緋水銀
二章第二節 一流警備兵イシハラナツイ、〈続〉借金返済の旅

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■番外編.魔王と王女 ※エメラルド視点

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「………ん」


 私は気怠い感覚が身体を通り抜けたことにより目を覚ましたと思います。

覚醒した直後であることからか……寝る前の記憶が霞(かすみ)がかったように思い出せません。視界に入ったのは見たことも無いような紫がかった空と発光しているような大地が拡がる何もない空間でした。


(……これは夢でしょうか……? 夢だとしても……寝た時の記憶が曖昧なように思います……私は確か……)


「あら、目ぇ覚ましたの人間。おはよう」

「!!」


 夢見心地に微睡(まどろ)んでいると、視界の端から若い女性の声が聞こえて私は驚いたと感じました。

 視線を動かした先にいたのは……発光した大地よりも更に金色に輝く髪をした同い年くらいのごく普通の女の子でした。

 二つに結んだ髪の上部に生えている角を除けば、ですが。


「あの……どちら様でしょうか、と私は思いました」

「アタシ? アタシは魔王サマエル、ってさっきアンタにも自己紹介したじゃない。覚えてない?」


 女の子がさも当然かのように名乗るその名前に私は思考が一瞬働かなかったように思います。

 いえ、名前というよりも……その肩書き、『職業』に。

 私は口に出して女の子の名前を復唱します。


「魔王様のエル様……」

「違うから。魔王のサマエル、二度と言わないわよ? 何でかっていうと面倒だから」


 私が名前を間違えたことにも魔王様は平然と対応したように思います。

 その対応から……私はナツイ様のことを思い出します。

 

(どこかナツイ様に似通うような……会話すると不思議な感覚に陥るような……噂に聞く魔王様と大分相違があるように思います……)


 この御方が本当に魔王様であるならば、何故私の目の前にいるのでしょうか。ナツイ様は無事でいるでしょうか。プルート様は何処に行ってしまったのでしょうか、と気になる事を止められず溢れ出すうちに、私は徐々にここにいる前の出来事を思い出していきます。


「そういえば……ナツイ様のお館でプルート様と女の子がケンカを始めて……」

「それアタシ、技術で若返ってたの。それにしてもアイツ一体何者なのよ? アタシに本気出させるなんて普通じゃないわ」


 魔王のサマエル様は少し忌々しげな様子で腕を押さえる所作をします、よく見ると身体のあちこちに傷がありました。


「まぁもうどうでもいいけど。それよりアタシはアンタに用が……」

「魔王様っ! プルート様とはあのあと一体どう決着されたのですか!? ここは一体どこなのでしょうか!? そのお怪我は大丈夫なのですか!? 何故ナツイ様のお館に来たのでしょうか!? 館の皆様は無事でいらっしゃるのですか!? 魔王軍の皆様は何故人間達を襲うのでしょうか!?」

「ちょ、うるさい。アタシの話を聞きな……」

「お話では魔王様はこれまで所在不明で俗世に顔を出していないと聞き及んでいましたがそれは何故でしょうか!? 魔王軍は総勢どれ程の魔物がいらっしゃるのでしょうか!? その指揮系統もやはり前魔王軍団の体制と同じなのですか!? 前魔王様のサタン様とはどんな方だったのでしょうか!?」

「要点だけ言うわね、ここは魔界」


 私が矢継ぎ早に質問を繰り返しても魔王様はそれには一切答えてはくれません。まるで意地悪なナツイ様のようです。

 そして、ただただ簡潔に、面倒そうな表情をして私に言いました。


「アンタの職業適性が珍しいものだったからね、ちょっと付き合ってもらうわよ。『実験』にね。面倒だけど」

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