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一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい  作者: 司真 緋水銀
二章第一節 一流警備兵イシハラナツイ、借金返済の旅

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百二十一.魔女との邂逅


「ぶつぶつ……あーあー……うん、声出てきたっぽい。うん……じゃあ……改めて……私は魔女の【ドライ・アイ・スクリーム】」

「俺は警備兵のイシハラだ、よろしく」

「ニャ……えーと……うちはエアー、ニャ……」

「ぶつぶつ……うん……よろしく……」


 引きこもりの部屋っぽいところで久しぶりに喋ったので声が出ないらしかった魔女は発声練習をしたのちに改めて自己紹介をした。

 引きこもり魔女はぶつぶつ言って明後日の方向を向きながらなにかに没頭しているように見える。前髪に目が隠れているから何をしてるのかようわからんけど。

 

 猫娘は魔女を目の前にしてどうしたらいいのかわからずにまさに借りてきた猫のように大人しくなり、魔女は魔女で俺達を招いたにも関わらず眠そうに一人で何かをしている。

 そして俺自身は魔女に用はないので特に話す事はなく、魔女との邂逅から誰も話す事ないまま無駄な時間が過ぎていった。


「(ナツイにゃん!! 状況説明を淡々としてないで何か話してニャ!!)」

「いや、魔女に用があるのはお前だろ」

「(ニャ……そうニャけど……いざ伝説の魔女を前にすると怖くてしょうがないニャ! お願いだよぅ……)」


 まったく、陽キャのくせに何をビビってるんだ。

 俺もこの魔女もどう見ても陰キャなんだから話を弾ませるのはお前の役目だろうに。


「ぶつぶつ……そこの猫人族……陽キャかと思ったけどそうでもないっぽい……ぶつぶつ……陽キャうるさいから嫌い……滅べ……」


 魔女は俺と同じ感想をぶつぶつと述べた。

 なんか気が合いそうだなこの魔女とは、しかしオルス人であるくせに陽キャとか意味わかって言っているのか?


「……ぶつぶつ……お兄さんが今口に出してたニュアンスで理解した……そしてお兄さんはどちらかというと陽でも陰でもない……なんか違う次元に一人だけいる感じ……」


 魔女は人の事を勝手に見定めて適当な事を言った、俺を宇宙人扱いするんじゃない。


「な……なんの話ニャかさっぱりわからないニャよ……」

「ぶつぶつ……それで……話をしに来たんでしょ……今忙しいからさっさと話して……ぶつぶつ……」


 魔女は布団でごろごろしながらそう言った。

 特に何かをしているようには見えないが忙しいらしい。


「ニャ……ま、魔女さん……最近この近辺で発生源不明の魔物が増加しているニャよ、何か知らニャいかニャ?」

「……ぶつぶつ……知らない……話はおしまい……」


 どうやら魔女は原因を知らないらしい。

 さぁ、話は終わりだ。さっさと帰るとしよう。


「ニャ!? ちょっ、ちょっと待ってニャ!? いくらなんでも早すぎるニャよ!! 本当なのかニャ!?」

「知らないって言ってるんだから知らないんだろう、だったら魔女にもう用はない」

「ぶつぶつ……お兄さん変わってる……こんな淡白な人間初めて見た……頭の回転は悪くないみたい……気が合いそう……ぶつぶつ」


 魔女はまた勝手に人を過大評価しているがどうでもいい、これ以上時間を無駄にするわけにはいくまい。

 俺が帰ろうとすると魔女は初めて俺の方を向いて言った。


「ぶつぶつ……待って、お兄さんには話がある……だからここに喚(よ)んだの……私の住み処をこれ以上壊されるまえに……何やっても止まらなそうだったし……お兄さん異界人でしょ……?」

「その話に応じてやる義理はない、お前が何も知らないんだったら時間と話すエネルギーの無駄だから話したくない、面倒」

「ぶつぶつ……めっちゃわかる……私も久しぶりに会話して疲れてきたから……でもお兄さん、この私が創ったアフィンフィールドでは時間を止められるから時間は気にしなくて大丈夫……ぶつぶつ……」

「そうなのか、精神と時の部屋みたいなものだな」

「ぶつぶつ……ニュアンス的に時間の経過を遅らせる部屋っぽい感じ? その通りだよ……お兄さん達がここに来てからオルスでは一秒も経過してない……ぶつぶつ……」

「それなら安心だ」

「ぶつぶつ……時間は貴重……特に自分がなにかしようとしてた時に他人に邪魔されて経過していく時間の無駄さが一番嫌い……ぶつぶつ……」

「めっちゃわかる」


 俺は魔女と意気投合する。


「いや! ニャにを意気投合してるんニャ!? うちにもわかるように説明してほしいニャ!! 仲間外れにしないでっ!」


 猫娘は一人でうるさいが無視して魔女との話を進める。


「だが、お前は俺達の知りたい情報を持ってないんだろ?」

「ぶつぶつ……外に出たのが五十年くらい前だからわからないだけ……だからここ最近のオルスの状況を見ればわかる……」


 そう言うと魔女は布団から手を出して猫娘の胸を触った。


「ニャんっ!!?」


【魔女の技術『記憶読み取り(ダイジェスト)』】


 ニャンッと身体を大げさに弾ませて猫娘は顔を紅くした。

 魔女はどうやら技術を使ったらしい。


「……ぶつぶつ……大体わかったっぽい……前魔王『サターン』が前勇者『セルシオン』に敗れて……人間社会が一時復興し繁栄する……職業差別が始まり、職業大戦が起こったのちにそれぞれの子息……新魔王と新勇者『マクア』が誕生。力をつけた魔物達により人間達は劣勢に陥り、異界の戦士を召喚する技術を確立してからまた同じ事を繰り返してる……はぁ、これだから外に出たくない……ずっと引きこもってよう……ぶつぶつ……」

「ニャにするニャ!? ニャんで胸を触ったんニャ!?」

「ぶつぶつ……記憶を読んだだけ……お兄さんは異界人だからオルスの事あんま知らないだろうし……ぶつぶつ……」


 なるほど、対象に触れるとそいつの記憶を読めるのか。さすがに魔女、でたらめな技術を数多く持っているな。


「ぶつぶつ……大体理解した……だとするなら【発生源不明】とされてる魔物がどうやって産まれているかも察しがつく……ぶつぶつ……」

「ほ……本当ニャ!? 教えてほしいニャ!」

「ぶつぶつ……だけどただの推測……それに疲れたから一旦おしまい……今度はお兄さんに話を聞きたい……ぶつぶつ……」


 ふむ、まぁ時間の経過はないし別にいいんだけど俺も眠くなってきたな。

 そしてメンディ。


「ぶつぶつ……お兄さん、ここはアフィンフィールド……お兄さんがイメージするものは何でも出せるようにした……食物でも水でも……それで体力つけて……ぶつぶつ……」


 なん……だと……?

 俺は真っ先に炒飯と唐揚げとコーラをイメージした。


 すると何という事でしょう、不思議な音を立てて、目の前には絶品間違いなしのイメージ通りのものが出てきたではありませんか。


 俺はいただきますをした。


「ニャ!? ナツイにゃんちょっと待ってよぅ!! いくらなんでも怪しすぎだニャ!! 罠かもしれないのにっ……!!」

「ぶつぶつ……安心して……とって喰おうなんて面倒だから考えてない……それよりも話がある……お兄さんの世界に私を連れていってほしいだけ……ぶつぶつ……」

「ナツイにゃんの世界……? 確か……チキュウとかいう世界の事かニャ……?」

「ぶつぶつ……うん、私は魔界にもオルスにもうんざりした……別の世界に行きたい……ただ、いくら私でも他の世界にそう簡単に行けるわけがない……だからお兄さんにはオルスで地球に戻る方法を探してきてほしい……そして私も連れてってほしい……ぶつぶつ……そしたらお兄さん達に出来るだけ協力してあげる……ぶつぶつ……」

「……ど、どうするニャ……ナツイにゃん……なんかとんでもない事を言ってるニャけど……って魔女さん!! ナツイにゃんまったく話聞いてニャいニャよ!!?」

「ぶつぶつ……知ってる……お兄さんが食べ終わったら起こして……もう限界……」

「ニャ!? 魔女さんも寝るのかニャ!? 二人とも自由に生きすぎニャよ!? 」

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