八十一.盾盾パニック
「では、我が主イシハラちゃま。お館様にお仕えする使用人達の代表をご紹介させていただきまち」
執事のセバスが手際良く案内してくれた部屋はまさに貴族が住むような部屋でアンティーク的な家具や内装がこれでもかというほど輝いていた。
手入れの行き届いた綺麗な椅子に俺達は座る。
まるで映画のセットみたいな無機質な部屋だが、それは以前の館の持ち主の私物などを撤去した後なのだから仕方ないだろう。
ここが今日から俺の部屋らしい。さて、これからどんな部屋にするか。
部屋を自分だけの落ち着ける空間にするのは大事だ、疲れを癒す唯一無二の空間だからな。
すると、ノックの音が聞こえドアが開く。
「「「失礼致します……」」」
セバスに呼ばれた三人の人間が入ってきて整列した。
「左から【アキ・ハバラ】【スチュワート・バトラー】【ヴァレット・ヴァイオレット】でち。全員、前領主様にお仕えしていた使用人達でち」
メイド服を着た茶髪の女、執事服を着たロボット、赤髪のポニーテールのアマゾネスみたいな女だ。
三人の人間と言ったがロボットは人間じゃなかったな、失敬失敬。
「いやいや!? 突っ込むところはそこじゃないですよ!? 何ですかこの機械の人!?」
何驚いてんだムセンのやつは、宇宙パイロット少女のくせに。人型機械なんて専門分野だろうに。
「いえ……普通見た事ないですよ……」
「では、順に紹介しまち。【アキ・ハバラ】はこの館の清掃、調理補助、給仕、家具や服の管理、来客応対、馬の世話などを行う者達の統括管理者でち。いわゆる『家政婦長』でち。仕事は手際よく持ち前の明るさで来客をおもてなしする事に長けた、まさに天職メイドなのでち」
「ご……ご紹介にあずかりました……アキ・ハバラです………お館様……どうか……ぶ……ぶたないでください……」
二十歳くらいの茶髪メイドはびくびくしながら俺のご機嫌でも窺うように下を向きながら頭を下げた。
持ち前の明るさって、どこが明るいんだこいつ。
「続いて遥か北にある異界人達の国、『メモリア』からやって来た機械種の【スチュワート・バトラー】。領地の管理、借地料の徴収、境界線調査、借地人の間の争いを調停し、領収・支出の細かい記録を保管する執事でち。わたち一人では手に負えない争い事を解決する戦闘型執事でち」
「ガガ……宜しくお願い……ガガ……します……ピーッ……ピピッ……」
「よろしく」
「何事もないように普通に対応しないでください!! 故障してませんか!? この機械の人!?」
「そしてお館様の身辺のお世話をする従者の【ヴァレット・ヴァイオレット】。常に共に行動し、いざという時には盾となるお付きでち。戦闘に長けていまちから訓練の相手なりお館様の自由にしてくださいでち」
「…………」
褐色肌が傷だらけの赤髪の女は視線を合わさず何も話そうとはしない。しかし、いざという時に盾になるってそれは警備兵である俺の役目だろうに。
警備兵の盾になるということは盾の盾という表現になるのであってそれは最早誰を守るのかわからなくなりその盾二枚の存在意義がどこにあるのかわからなくなって盾盾パニックを起こしてんやわんやになるのであって矛盾に代わる新たな言葉『盾盾』が誕生してしまうことになり
「イシハラさん……私の突っ込みって皆さんに届いているんですかね……? 誰も反応してくださらないから私が一人おかしいのではないのかと錯覚してしまいます……」
「盾盾」
「他に必要な人材があれば申して頂ければ都度手配ちまち。料理人に関しましてはムセンちゃまが館におられる間はムセンちゃまにお願いしようと思っておりまち」
「私ですか? 構いませんけど……」
「良かったでち。それではお館様、明々朝はジャンヌ様にお城へ出向くよう仰せ遣っておりまちのでそれまでお休みくださいまち。それでは」
セバスは使用人達を引き連れ部屋を出ていった。
さて、新たな警備の現場が始まるまでなにか趣味でも探すとするか。家もできたことだし、休日とか暇だしな。
「しかし……使用人の方々の様子は何かおかしかったですね……メイドの方は怯えていましたし……褐色肌の方は痛々しい生傷が沢山ありましたし……」
「ロボットは壊れてたしな」
「それっ!! 私が突っ込んだ時に反応してほしかったですっ!!………なにか知らない間に色々な問題を抱えてきているような気がしてなりませんよイシハラさん。魔王軍や辺境伯爵の事だってそうですし……」
「問題を抱えてない人間なぞいない。一つずつゆっくりと消化していけばいいだけだ」
「……そうですねっ、イシハラさんでしたらどんな問題でもきちんと解決してくださいますもんね! 私も微力ながらお手伝いさせていただきます!! イシハラさんっ! このお館ってお風呂あるんですかねっ!? 良かったらご一緒に入りませんか!?」
「構わん、じゃあ行くか」
「えぇっ!?………あ……あ……あのっ……冗談っ! 冗談ですっ!! 心の準備を終えていませんからっ……シューズさんっ! 一緒に入りましょうっ!! 失礼しますイシハラさんっ!!」
ムセンは真っ赤になりながらシューズとウテンを強引に引っ張ってバタバタと退室していった。まったく、いつも姦しいやつだ。
ふむ、しかしこれでようやく落ち着いた。
オルスに来てからというもの何もせず一人きりで考える時間というものがあまりなかったからな。
たまには今までの事、これからの事をじっくりゆっくりと考えて備えるのも悪くないだろう。
考えるのは大事だ、あらかじめ何が起きてもいいように構えておけば慌てずに済むし対策もうてるというもの。
よし、時間はあるし考えてみZZZZZZZZZZZZZZZZ




