八十.叙勲式とマイホーム
<とある館>
「お待ちちておりました、執事が天職【セバス】ちゃんでち。警備兵一行様………そして、わたちの新たなる主……騎士【イシハラ・ライトセイバー】様。これからお世話してお世話になりまち。執事が天職【セバス】ちゃんでち」
俺達はとある館へと足を踏み入れる。
手入れの行き届いた豪華絢爛な西洋風な内装。絵画、シャンデリア、ステンドグラス、吹き抜けの大広間。
一見すると城と見紛える館では執事長を筆頭にずらっと使用人達が俺達を出迎えた。使用人達の顔は不気味ににやけている様に見える。
まるでこれから起こる惨劇を如実に物語るようだ。
何故こんな事になってしまったのか、それを一から説明せねばなるまい。
「……いえ、イシハラさん……全て自分が了承した事ですよね……? なぜ奇妙な出来事が起きてこんな事になった風な語り口調なんですか……使用人さん達はただ笑顔で出迎えてくれているだけですよ……」
事はシュヴァルトハイム第二王女のと辺境伯の結婚騒動が起きた翌日、遡る事二日前の話。
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-二日前-
<ウルベリオン城.玉座>
「それでは……【イシハラナツイ】。前へ」
「はい」
厳かなる雰囲気の中、ウルベリオン王にそう言われた俺は膝間付いていた体勢からゆっくりと立ち上がり、何段かある段差を上がり王に近寄る。
そして、再び丁寧に膝間付き頭を下げた。
入口から続く長い赤絨毯の周囲にはモブ兵士がずらり。
隅っこにはムセン、シューズ、ウテン、エメラルド、エメラルド母。
玉座周囲には何か個性的な兵士みたいなやつら。だもん騎士やですわ騎士がいるからあれが十二人の選ばれた騎士とかいうやつらだろう、五人くらいしかいないけど。
「(やったっ、やったっ……遂にナツイが騎士にっ……けど、私の下で一緒にいるはずが……いきなり十二騎士団に入るなんて……べ、別に一緒にいたかったとかそんなんじゃないもん!)」
「(認めねぇですわ……認めねぇですわ……いきなりワタクシと対等だなんて絶対認めねぇですわ……はぅぅんっ! ワタクシの事なんか見てもいねぇですわ!? あの冷たい眼……それに無視されただけで身体が反応してしまいますわ……)」
「(ふーん、あれが幹部を倒したっていう……男だし興味ないや。けどあっちの隅っこにいる可愛い子たち誰だろ?)」
「(ほぅ……あの御方がイシハラナツイ殿……こう言っては失礼ですが……あまりオーラというものを感じませぬな……しかし能ある鷹は何とやら…是非一度戦闘術をご教授願いたいものですな)」
「(……………………………)」
なんか叙勲式の最中なのに独り言がうるさい騎士団達が俺を見てきた。授業参観の場かここは。
ガキと喫茶店のマスターみたいなやつと黒づくめの殺し屋みたいなやつらがいるが、この騎士団はキャラ付けでもしてないと入れないのだろうか?
王の両隣には不在の王妃と王の三人の娘の王女達に代わり、美人神官と宝ジャンヌがいる。
「魔王軍幹部を退けた功績を称え、ウルベリオンⅢ世・ジョブズ・ユークス・ルイス・シーザーの名の下にこの者を新たな騎士候として叙任する。騎士称号は……除隊したアーサー・シャインセイバーの有する『光色の騎士』を引き継ぎ……【イシハラ・ライトセイバー】とする」
どうでもいいけどダサいな。
どうせだったらイシハライトセイバーとか繋げちゃえばいいのに。
もっとダサいな。
「有り難き幸せ、ウルベリオン王に絶対の忠誠を」
俺は適当に忠誠を誓った。
「では……イシハラ様。勲章と騎士冠……そして新たなる【職業】を授けます。こちらへ」
俺は立ち上がり美人神官の前へ行った。
「崇高なる職業の神よ、この者に栄誉たる【騎士職】の称号の福音を与え給え……」
美人神官が祈りを捧げると、玉座の上にある丸いステンドグラスみたいなやつから光が差し俺を照らした。
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イシハラナツイに新たなる職業が授けられた!
◇イシハラナツイ 職業『一流警備兵』『騎士』
全ての能力が上がった!
新たなる『技術』を獲得した!
New Skill
『浄化の光』『誘導の光』『無色の……』
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ピッ
いや、もういいもういい長い長い。
新たな技術なんかどうでもいい、どうせ使う事なんかない。
俺は目の前に出てきたステータスを拒否して消した。
「ふふ、イシハラ君。これで貴方も騎士よ、貴方の条件は全て呑むわ。その代わり国の危機には力を貸してもらうわよ。堅苦しい話を貴方は嫌うでしょうからまた後日顔を見せて頂戴。その前にアーサーの所有していた土地と町に行ってみるといいわ。そこはもう貴方の家……いえ、貴方の領地よ」
宝ジャンヌはニヤニヤしながらそう言った。
話から叙勲式までやたら早いのは宝ジャンヌが前もって各所に話を通し準備していたかららしい。
してやられたな、まぁどうでもいい。
俺は今まで通り、やりたい事をやって生きていくだけだ。
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<騎士イシハラの館>
と、いうわけだ。
警備協会には話をして一旦休暇を貰い、アーサーとやらの所有していたという領地に来たわけだ。ていうかアーサー何とかって誰だよ。
見知らぬ他人の家を貰い受けるなんて何か怖い気がしないでもないな。
「イシハラさん……興味が無い人でもちゃんと覚えましょうよ……戦っていたじゃないですか……それよりもイシハラさんの出した条件って何ですか?」
「これだ」
俺はムセンに紙を見せた。
条件を反古にされないように書面にしておくのは大事だ。
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1.騎士の仕事をしない(警備兵としての仕事と重複する場合はやむなし)
2.騎士としての給料はいらない。
3.その他、家と土地以外の特典はいらない。
4.自分の領地に関わる面倒事には関わらない(税金制定、徴収、裁判沙汰等、領地問題の内政全て)
5.家の執事事関連は全てセバスに一任する。
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「………よくこんな無茶苦茶な条件が通りましたね……しかし何故セバスさんに……?」
「ちがいまち、【セバス】ちゃんでち」
「勿論仕事が出来るからだ」
ホテル暮らしの時に仕事ぶりは見ていたからな。やるべき仕事をやり、仕事中には無駄話をしない。
素晴らしい、オンとオフを使い分けられるやつはどんな職業でも有能だ。
「それよりもいー君、私もここに住むけど部屋割りはどうする?」
「好きに使えばいいさ」
「ちょっと待ってください! 何故ウテンさんもここに住むんですか!?」
「仕事のため。これからも監視するからここに住んだ方が効率がいい。いー君と同じ部屋でもいい」
「ど……同居じゃないですか!! 駄目です!! 未婚の男女が同じ家に住むなんてっ……」
「ムセン・アイコムも住めばいい」
「……え!? よ……よろしいのですか……? イシハラさん……」
「おっけー◎」
「………ふっ……不束者ですが宜しくお願いしますっ!!」
ムセンもシューズも警備兵だし同僚だ。
行く当てがないなら勝手に住めばいいさ。
「………………」
「シューズさん?……どうかされたのですか? 何か……ずっと様子が変な気がしますが……」
「え? ううん。大丈夫だよー何も変わってないよー?」
「……なら、いいのですが……」
皆が浮かれる中シューズだけが、エメラルドの問題を一旦解決したにも関わらず何かをずっと考え込んでいる様子だった。




