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信長Take3【コミカライズ連載中!】  作者: 松岡良佑
20.5章 永禄7年(1564年) 弘治10年(1564年)

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236話 警戒下見旅 まさかの第2ラウンド 

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漫画版 信長Take3『8話  戦う前に勝つ(1)』がアプリ『マンガBANG!』で無料公開されました。

同時に、『8話 戦う前に勝つ(2)』が有料公開されました。

私はこの(2)を非常に楽しみにしていました!最高だ☆彡

八坂先生が見事に描き切ってくれました!


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作画担当先生は、八坂たかのり(八坂考訓)先生です!(旧Twitter @Takanori_Yasaka)

八坂先生の作品一覧→https://x.gd/Gj9zO

よろしくお願いします!!

挿絵(By みてみん)

【近江国/今龍城 斎藤家 凄く気まずくなった今】


(それにしても夫婦で本当に厄介だ! 信長とはお互い下馬せず意地を張り合ったが、こっちではお互い譲り合って争うとは!)(233話参照)


 長慶は信長とのあの意地の張り合いは、自分でも心地良い意地の張り合いだったと思っている。

 スポーツマンシップの様な勝負があった。

 まるで世界タイトルマッチの記者会見の様だった。

 だが、今の張り合いは、賄賂の渡し合いの様な、醜く滑稽な張り合いであり、だが、それが斎藤帰蝶らしいとも思う長慶であった。

 だが――


(な ん で じゃ よ!?)


 今度は上座の最上段、主君の座る場所で、下段に座る三好家一行に対し、平身低頭で土下座する帰蝶。

 せっかく場所決めが終わったらコレである。


(人間、こんなに平べったくなれるのか!)


 それ程までの沈み込みと見事な土下座ぶりであった。

 あまりの申し訳なさに、視覚的に小さく見える程だ。

 帰蝶が本気で委縮し申し訳なく思う気持ちが、幻覚を見せたのだ。


(こんなことなら両者下段で会談すれば良かった!! 何でそんな簡単なことが思いつかなかったの!?)


 一方、帰蝶は帰蝶で、そう思ったが時すでに遅し。

 第2ラウンドは始まってしまった。

 第1ラウンドは三好長慶と『勝負して負けた』ので上座にいる。

 それにより、仙石久勝、於勝丸、奇妙丸も主君に倣い土下座している。


「も、もう謝意は頂きました。頭を上げください! さもなければコチラも頭をあげるまで土下座しますぞ!?」


 やられっぱなしの日本の副王ではない。

 この程度を反撃できずして、魑魅魍魎渦巻く中央で強大な権力を維持などできないのだ。


「ッ!!」


 謝る相手に謝罪させるなど言語道断だ(?)。


「わ、わかりました。では頭を上げさせて頂きます」


 ようやく観念した帰蝶が頭をあげ、やっと会談が始まる準備が整った。

 どうでもいいやり取りで、時間がだいぶ潰れたが、戦場ではない場所での斎藤帰蝶の人柄は十分理解できた長慶一行であった。


「よかった。本当に良かった……! ん!? えぇぃ! 何しに来たか忘れてしまったわ!」


(兄上、()()、出産祝いです……!!)


 実休が耳打ちをする。

 既に松永久秀が三好家名代として祝いの品を渡しているが、今回は、祝いと見せかけたキーマンの視察だ。

 山城国の京の都だった所で信長と会って、信長の戦意を確認した。

 信長は当然、随伴する一騎当千の者達を確認した。

 長慶も然りである。

 だが、長慶だけが、斎藤帰蝶という、ある意味最大の障壁を確認していない。

 余りに意外なポンコツぶりは驚いたが、こんなものはオマケだ。

 今から再度チェックしてこそ今龍城に来た意味がある。

 これを直に確認せずして、来年の決戦はありえない。


「そうじゃった! こんな押し相撲をしておる場合では……いや、これはこれで意義はあったな」


 産後のハンデを背負ってなお、長慶に圧勝させない体幹バランスや、掴まれた両肩に絡まる蛇の幻影。

 産後のダメージ回復期間であってもこれだけ動けるなら、来年の決戦は万全で仕上げて来るだろう。

 今の状態以下はありえないし、過去以下もあり得ないだろう。

 指揮でも前線でも大暴れしてくるだろう。

 それで上座に押し上げられた帰蝶は、仕方なく平身低頭だ。

 上座なのに誰よりも地面にめり込んで見えるのは気のせいではないだろう。


(やはり素晴らしい。失態の規模も桁違いなら、その影響力や武力もやはり桁違いだ!)


 東最強勢力の中核者に相応しい力だ。

 きっと先駆けで飛び込んで来ると確信に変わる。

 今日の汚名を返上する為に普段以上の力を振るってくるだろう。


(惜しい! 惜しすぎる!)


 出来れば捕縛したいが、無理な場合もある。

 殺してしまうには惜しいが、こればかりは戦でコントロール出来ない。

 殺さなければ殺される場所で手加減など出来ないし、手加減したら負けて殺される。


(いや! それでも織田信長もこの斎藤帰蝶も両取りだ! それにはどう戦えばいいか? 決まっておる!)


 生かすは殺すより難しい。

 さらには自害も許さない。

 しかし、それをやってのけてこそ『日本の王』になるはずだ。

 倒して当然、生かして当然、救って当然、勝って当然、手に入れて当然。

 それを苦も無くこなしてこそ三好長慶だ。


(いずれにしても悔いの無い戦いをするはずだ。楽しみだ! 織田信長と斎藤帰蝶を倒さずして『日本の王』にはなれぬ!)


 日本の王になった後も考えれば、両者は絶対に必要だ。

 己、信長、帰蝶、そして両陣営が随伴させた武将。

 これで日ノ本の完全改革を断行出来る。


「あ、あの、先日、松永殿から頂きました宝剣、誠にありがとうございます」


 長慶が長考していたので、我慢と緊張と失態と恥ずかしさなど、とにかく居たたまれない気持ちが頂点に達した帰蝶が口を開いた。


「……ん? おぉ、あの装飾が見事な宝剣ですな。堺で荷下ろししていた水夫から……あ!? 松永から聞きましたぞ!? 斎藤殿の甥と織田殿の弟が船員で明国から仕入れてきた物だったとか!? だからあれは最初から斎藤殿か織田殿が手にするハズだったものとか!!」


「そ、そうなんです。本来なら普通に手に入るものが、三好殿が買い上げた分の銭が余計に織田と斎藤に入ってしまっていますので清算をしたいのですが……」


 本来は『信行、龍興が入手→信長、帰蝶に献上』が本来の本筋だった。

 しかし『信行、龍興が入手→長慶、松永が購入→信長、帰蝶に献上』となったので、余計な経費が掛かっていることになる。


「いやいや、それは知らなかったこと故、それも含めて出産祝いということで勘弁してもらいたい」


 長慶は極度に恐れながら言った。

 今度は『余計な経費の返金、一度出した物は受け取れない』の押し問答になりかねない。


「しかし……」


「斎藤殿!」


 長慶が覇者の圧力を全開で放射した。


「ッ!」


 長慶に従う『本当は面従腹背』の尼子、毛利、陶、長宗我部も『これは勝てない、少なくとも時期ではない』と納得させられた強烈なプレッシャーが襲い掛かる。


「どうしても返金したいのであれば、戦場で受け取ろう。あの宝剣をワシの心臓に突き立てればよろしい!」


「!!」


 緩み、歪み、奇妙で、滑稽な空間が、一気に戦場の空気に塗り替えられた。

 だが、斎藤家陣営が飲み込まれた訳ではない。

 帰蝶が即座に対抗できる覇気を放出し、蝶の羽と大蛇の幻覚を見せ、災害の如き長慶の覇気を跳ね返す。

 蛇の眼光に邪悪な笑顔は眼球が赤々と光る。

 完全に捕食者の威圧だ。


 これには初対面の尼子義久、山中幸盛、毛利隆元も面食らった。


(斎藤帰蝶の噂は西にも轟いているが、対面しての醜態から、こんな圧力を隠し持っていたのか!!)


(馬鹿な! 大殿(尼子晴久)を圧倒するのか!?)


(あの海戦での報告は本当だったのか! 来なきゃよかった!!)


 もちろん一度会ったことのある陶晴賢、吉川元春、小早川隆景、長宗我部元親も驚きを隠せない。


(あんな滑稽で面白醜態を晒しておきながら、一発で場を引き締めよった! ワシに同じ真似が出来るか!? ……出来ぬ! 何故斎藤帰蝶はこれ程までに!? 修羅場の数!? そんなのはこの時代に生き残っている者なら大なり小なり経験済み! なのにこの圧倒感! 説明ができぬ!)


 理由はしょうもないが、覇気は正真正銘の資質と貫禄が備わっている。

 あの失態に釣り合わぬのと、女であるのが最大の謎だが、これは転生故の経験の差。

 殺されて殺せば常人でも殺気も覇気も自由に放射し育てられる。

 ここまで育ったのは異常ではあるが。


(斎藤帰蝶が今日の失態を信長に話すかどうかは分らんが……ワシなら内緒にするな。そうすると、斎藤軍の訳分らん攻撃力に信長は戸惑うか? それは何とか逆用できないか?)


 織田と斎藤は夫婦大名という、史実にも存在しない巨大な一枚岩。

 一方三好は力で従わせたひび割れた一枚岩。

 じゃあどちらの一枚岩が強いか?

 これは勝った方の一枚岩が強いことになる。


(織田と斎藤は前代未聞の夫婦大名という巨大な一枚岩。三好は力で従わせたひび割れた岩。じゃあどちらが強いか? 勝った方が強い。それだけだ。そしてひび割れた岩で、騙し、油断させ、罠に嵌めるのは何十年も続けてきたワシの日課だ!)


 長慶はそう結論づけたが、絶対と言えない一抹の不安も残る。


(この2人相手に一抹の不安も残せん。必ず解消して攻略する! ワシなら出来る!)


 その手の戦は三好長慶が長年、京を中心に戦ってきた得意技だ。

 書状一つで将軍陣営を翻弄し、蠱毒計までもっていった。

 油断ならない部下を扱う方が得意なのだ。

 おかげで自分も絶対に油断しない。


(信長とこの斎藤帰蝶の覇気が、頑強な一枚岩を成立させているのか?)


 一方信長は、史実からして何度配下に裏切られても、部下に絶対の信頼を置く。

 仲間の力を信頼するのは良いことだが、結果が伴うとは限らない。


 迷ったところで王者の戦いは変わらない。

 力で勝つだけだ。


「さ、出産祝いも果たしたし、これ以上斎藤殿の体に負担をかけるワケにもいかん。そろそろお暇しようか」


 現状の帰蝶を見て来年の帰蝶の状態を予測した長慶。

 寸分たがわぬ状態で戦場に現れるであろう。


(ここ最近は策謀ばかりであったが、これが日本の副王としての最後の戦。その相手に不足はない!)


 長慶は気持ちを改めて引き締め帰路に就こうとしたら、配下の一人が帰蝶に申し出をした。

 吉川元春だ。


「何でしょう?」


「何事か?」


 帰蝶も長慶も『これで終わり』と完璧に油断していた所だ。 

 これが戦場なら討ち取られているタイミングだ。

 流石は吉川元春とでも言うべきか。


「最初に目撃したあの木刀での稽古? 某にも体験させて貰えぬでしょうか?」


「えっ。私としては構いませんが、毛利殿や三好殿の許可が無ければ、ケガをさせる訳にもいきませんし……」


 帰蝶の言葉に確かに聞こえた。

 カチン!

 そんな音が。


「まぁ良いだろう。この場で最強の豪傑が、斎藤殿の普段の訓練にどう対処するのか気にならないと言ったらウソになる」


「修理様!? (えぇい元春の馬鹿者が!)」


 見てみたい長慶と、目立ちたくない毛利隆元。

 結局長慶の意見が優先されるので、隆元の嘆きは届かない。


「普段は、自分の手足をあの人形にぶつけるのですが、今は産後で不自由なので、息子達に稽古がてら手伝ってもらっています」


 そう言われて見た視線の先には、人の形をした使い込まれた『なにか』があった。


「自分で叩くか、息子たちに叩かれるか、どちらが良いですか? あ、自分で叩く方法を見てませんね。叩かれる方が楽でしょう。於勝丸、奇妙丸準備を」


「母上、本当よろしいので?」


 於勝丸、奇妙丸が帰蝶と元春を交互に見ながら心配する。


「子供らよ。遠慮はいらん。斎藤殿と同じ程度にやってくれ」


「わ、分かりました。では縁側へどうぞ」


 結果から言えば吉川元春は耐えきった。

 顔を真っ赤にしながら耐えに耐えた。

 長慶以下、諸将は元春の武力を知っている。

 それなのに帰蝶は寝て、元春は全力で我慢している。


 かつて、船上での戦いは2対1でも圧倒したのに、この差である。


「いやぁ、面白い訓練でござった。領地に帰ったら某も真似をしたいと思います」


 豪傑元春は笑いながら言った。


「よし。では引き上げじゃ」


 長慶の号令で一行は今龍城を後にした。

 後にしてしばらくした後、獣の咆哮が聞こえた気がした。

 吉川元春が我慢に耐えきれず悲鳴をあげた、かどうかは分からない。


 また、後世に伝わる資料では、三好家と斎藤家による会談は、今後の京の再建に向けた建設的な意見が交わされた、と伝わっている――


 20章 永禄7年(1564年) 弘治10年(1564年)完

 21章 永禄8年(1565年) 弘治11年(1565年)に続く。

次章はすぐに5月中から始める予定です。

よろしくお願いします!

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