5話「二人と焦燥」
何だかんだあって、望月家。
いろいろ電車の中で悲痛な過去を聞かされた佳樹だったが、それをこらえ、なんとか涙流さずに望月家についた。
そこはマンション、しかもとても女子中学生が住まうものじゃなかった。一応インターホンを鳴らしてみる。もちろん反応はない。ここにすむのは望月だけで、ほかに誰も住まないからだ。
「アクセスキー解除。認証用パスワード入力。さあ、待たせたね、どうぞお上がり」
望月はそう言うと、部屋の中にスタスタと入っていく。どうやら支度をしているようだ。その間に佳樹は屋外用と書かれたノートパソコン、スマホを開き、対戦の準備を進めていく。
なぜ佳樹が屋外でも対戦できるようにノートパソコンをもっているかというと、別に佳樹がコンピューターを手放せないとかそういう意味ではない。それならスマホだけで事足りる。ではなぜかというとGROWUPはなんとゲームを起動してようがしてまいがマッチングの対象になってしまうからだ。スマホでもできるが、スマホだと反応が遅すぎる。一瞬の判断がいるGROWUPでは使えないのだ。
支度の終わったらしい望月がやってきて《カップラーメン醤油味》をもって差し出した。
「どう?おいしいかな…」
「先輩!先輩はカップラーメンの良さがわかる味を選びますね!」
「好みだったならいいの」
佳樹はカップラーメンをすぐ食べ終えた。そして、望月に本題を仕掛けた。
「約束通り対戦するよ。じゃあPC同士でケーブル接続しよう」
ドッキング完了。これから凄惨な殺戮が始まるとは…と思いにふけっているとポップ体の「You lose」の文字が登場した。
「勝ったときのぶつはPC部入部と好きに使う…だったよね。あのね、お願いなんだけど」
そこで声がでなくなったが、佳樹にはちゃんと聞こえた。
「一緒に 寝てほしいの」と。