第38話 サモン&同時&未来
「あー疲れた!」
自分の部屋に入って布団にダイブする。途端に全身に疲れがどっと押し寄せて来る。思ったより重かったんだもんなーあれ。いやその前からミーシャとリリーに付き合ってたのもあるか?
まぁ何はともあれ今日は疲れた。このまま夕飯ころまで寝ようかな。
「おーい、相棒?」
…なんか聞こえた。
「相棒?聞こえてんだろ」
なんも聞こえないです、気のせい気のせいほっておこう。
「いや、ほっとかないでくれよ」
聞こえてんのかよ。ていうか頭に直接語りかけてくるのやめてくれ、気味が悪い。
「あぁ、じゃあやめるよ」
なんだ、素直に寝かせてくれるのか。それじゃあ遠慮なく寝かせてもらうぞ。
……zzz
「どうせ寝てからの方が話早いしな」
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「おーいらっしゃい!よく来たね侑季君」
騙された。寝るのを止められないと思ったらこういうことか…
いや、まあよく考えたら月影のやりそうなことだ。だからっていくらなんでも人が寝てる時にこっちの世界に飛ばすかほんと。
「おう相棒、よくきたな」
「よくきたな、じゃねえよ。てめえ何寝てる時にこっちの世界に飛ばしてくれてんだ」
「いや、相棒がこっちに来れるのって現実での意識が薄い時じゃないとダメだからさ。ちょうどよかったんだよ」
なるほど、つまり好都合だったわけか。それならまあ納得。
じゃねえよ、俺の意見どこ言ったんだよおい。
「まぁ私が呼んだんだけどね、あはは」
グルかよ。だから俺の意思というか決定権はないのか。
「で、俺はなんで呼ばれたんですか」
「あ、そうそう。本題に入らないとだよね」
これで大した話じゃなかったら恨むぞ本当に。人の睡眠時間削ってるんだからなこれ。
「えっとね、今君が眷属化してるっていう話はもうルナから聞いたんだよね?」
「あぁ、その話なら聞きました」
「でね、こうなった以上私も全力で君のことをサポートしようって話になったんだ」
「?なんでそっからその話に」
こうなった以上ってどうなった以上だ?
「詳しい話はできないんだけど、君の向かおうとしてる未来は神様達にとっても関わってくることがわかってね」
「え?どういうこと?」
「要は、相棒の未来がこっちの世界にも密接に関わってくることが判明したってわけなんだ」
「そうだね、だから私とルナが君のことを全面バックアップしてあげようかなって!」
イマイチ話が飲み込めてない。俺の未来?当面の目標はミーシャを王国に返すことになるわけだけど、それが何か関わってくるってことか?
「バックアップって具体的に何がどうなるんです?」
「それはね、あの子が来てから説明しようかと」
「あの子?」
「ごめん、遅れた」
「あ、ルナ!遅いよーもう」
「…銀雪が起こしてくれなかったから」
「私は何度も起こした。非は全くないぞ」
あの子ってのはルナのことだったのか。てか銀雪まで来たのか。しかも名前すでに定着してるし。
「さて、全員揃ったところで説明を始めようか」
…左右に狼と狐。
前には神様二人。
そして、何の変哲も無い人間一人。
え?なにこの状況。
「君がよく分かってると思うけど。今のままじゃ勝てない相手がいるってことを身に沁みたと思うんだよ」
「それは…」
もちろんそれはあいつのことだろう。昨日突如俺たちの前に姿を現したエースという謎の女。
俺やミーシャやエリルはもちろんのこと、さらに月影でも敵わなかった。
「俺はあの時3人を守ろうとしただけだ。負けてねえからな」
「守るのに手一杯で動けなかった自分の不甲斐なさを恥じることはしないのか?」
「あ?攻撃しかできない狼に言われたくねえな」
「こちらこそ守ること以外ポンコツの狐にあれこれ言われる筋合いはないのだが」
「なんだと?」
「なんだ?」
「ちょちょ、月影も銀雪もストップ!喧嘩はすんなって」
え?この二匹っていざ出会うとこんな険悪だったのか。
「喧嘩ではない。こいつはこれくらい言わないと調子にのるから丁度いいのだ」
「けっ、俺からしたらそんなきっちりされてる方が生きづらくてかなわねえや」
「いやだから…はぁ」
これ止まらない気がするんだけど。おいおい勘弁してくれよ。
「大丈夫だよ侑季君、この子達いざって時は息ぴったりだから」
「そんなもんなんですか?」
息がぴったり、か。
「だいたいなんだ。私が怪我をしてる間に腑抜けた攻撃ばっかりして」
「腑抜けただぁ?お前がいなかった穴を埋めてやろうと頑張ってやってたんだぞこっちは!」
「ふん、感謝はするが。あれで私の代わりと言おうとは随分と私も低く舐められたものだな」
…息が合うねぇ。
「話が逸れてる。これじゃ終わらない」
そうだった。ていうか話逸れなかったときのほうが珍しいぜほんと。
「じゃあ言いあいもその辺にして、侑季君。そのグローブ貸してくれるかな」
アマテラスがくれたものだけどなこれ。どちらかというと俺が借りてるんじゃないのかこれ?
「じゃあルナ。お願い」
「分かった。…ちょっと待ってて」
「私たちからの応援の証として、君にあげたこのグローブをパワーアップしてあげるよ」
「パワーアップですか?」
パワーアップって…一体?
「うん、やることはシンプルだけど。これで君は同時に二体の召喚獣を扱えるようになる」
「二体ってことは」
「私と」
「俺だな」
いや、えー…さっきの見た後だと不安しかないんですけど。でももしこの二体が合わさったら…鬼に金棒だな。
「でも、そんなことが可能に?」
「手練れの召喚士ならそもそも可能。でも、月影と銀雪クラスのは負担がかかりすぎて普通はできない」
「お、早いねルナ」
「やることは簡単だったから、はい侑季君」
…つけてみた感じはあんまり変わんない、けど。
「これで、[サモン]で同時に呼び出せるようになったんですか?」
「うん、でも…多少は負荷がかかる。だから気をつけて」
「わかりました、気をつけます」
忠告覚えておかないとな、ただでさえ前は銀雪を召喚しただけでぶっ倒れてるんだし。
「それじゃあ、わざわざ来てくれてありがとうね」
来てくれてっていうかほぼ無理やり呼ばれたんじゃなかったっけかな。
「これから、大変だと思うけど。大丈夫。私たちがついてる」
「え、なんか不吉なんですけどその言い方」
「だから、大丈夫。それじゃあねー」
いや待って。そんなあからさまに意味深な言葉だけ残していかないで。何がこれから待ってるっていうんですか。
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ガバッ
「待ってくださ!…戻ったのか」
呼ぶときも無理やりだし戻るときも無理やりかよ。もう少しなんかあってもいいと思うんだけどな。
あ、でも体の疲れは取れてる。