第35話 暗雲&お誘い&相談
エルトリア王国 隠れ家
「はーい、ただ今帰還よ」
「…遅かったなエース、どこで油を売っていた」
「別に大したことはしてないわ…って。珍しくあなたしかいないのねキング」
薄暗くひんやりとした部屋に一人仮面の男が立っていた。キングという男は鉄仮面で顔を隠していて、素顔が全く見えない。
「ふん…デュースは始末した。そしてジャックがやられた」
「あら?ふーん…残念だったわね」
「お前の予言では勝てるはずだったな?」
キングはその場から一歩も動かない。しかしそこから出る気迫はエースを殺そうとするくらいのようだ。
「私のは予言じゃなくて占い。勘違いしないでほしいわね」
「ふん、裏切る気かと思ったのでな」
「あら、これは心外。失礼しちゃうわ」
キングはそこでようやく殺気を収めた。エースもそれを見て安心する。
「まぁいい、それより奴らの始末はどうする気だ」
「デュースとジャックがいなくなったから、次はあの二人なんかどうかしら?」
「…トレイとケイトか。いいだろう、ちょうど手に余っていたところだ」
「あら、それじゃあ遠慮なく借りていくわね」
それだけ言い残すとエースはキングを残して去っていった。
「…ふん、不気味な女だ」
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銀の槍
「ってことは、お前ら3人はあと7日後にはここを出発するわけか」
「はい、確定ではないですがエリルとも話し合った結果そうしました」
「そう、また終わったらここに戻ってくるのかしら?」
戻ってくるつもりだけど…デュースのことを考えると仮にここが俺たちがいることによって襲われる可能性もな。
「いつでも帰ってこいよ、そのために宿屋ってのはあるんだ」
「そうよ、美味しい料理作って待ってるわ」
二人の優しい言葉がすごく嬉しい。
「はい、3人全員無事に帰ってきます」
「エリル…」
「なにを驚いた顔をしてるんですか」
「いや、なんかエリルなら」
「私の命に代えても二人は無事に、とか言いそうだもんね〜?」
お、ミーシャナイス。そうそうそんな感じで言いそうだよな。
って思ったけどそこに賛同すると後が怖いから俺はしないぞ。
「心外ですね、ミーシャならきっと二人を犠牲にしても私だけ元気で帰るから。とか言いそうですね」
「いやいやいや!そんなこと言わないから!」
「もしくは、そうですね。いざとなったら侑季君を犠牲にしてでも帰ってくるね。とかでしょうか」
「犠牲になんの俺かよ」
結局俺に飛び火してくんのかよ。せっかく黙ったの意味ねえじゃねえか。
「男なら女の身代わりになって死ぬのは本望では?」
「それを女側から要求されることに関してはいささか異議を唱えたいな」
「おいおい、なんでもいいから縁起でもねえこと言わんでくれや」
縁起が悪いどころのレベルじゃなく死亡フラグまっさかりだなこれ。まあこんな軽口を叩けるうちは大丈夫なんだと思いたいけど。
「私もここで待ってますからねー!帰ってきてくださいよ!」
「ありがとなリリー。リリーはここに留まることにしたのか」
「はい!ようやく迅雷師匠が私を連れて行くと約束してくれたので」
あ、うん…約束守ってくれるといいなそれ。
「あ、そうだ!3人とも、ギルドカードを出してください!」
「ギルドカード?まぁいいけど」
「私も別に構いませんが」
「どうしたの?」
「ふっふっふ〜、これをですねーえい!」
リリーが3人のギルドカードに対して手をかざす。すると3つのカードに新しく茶色が刻まれていく。
「じゃーん!こういうわけ!です!」
「これは、称号か?」
迅雷さんと同じようにして今度は新しく茶色が刻まれている。ってことはそういうわけだよな。
「はい!私からのプレゼント、です!」
「私たちはこれもらうの初めてだね!」
「そうですね、どこかの誰かさんは既にもらってるみたいですが」
いやそう言われても…俺もあの時は貰えると思ってなかったし。
「ありがとう!リリーちゃん」
「いえいえ〜!私も一人前のギルドマスターですから!」
「一人前になるんだったらまずはギルドの集会には顔を出すようにな?」
「こ、これは失礼をしました。いやその時は忙しくてですねー」
「お前だけだったぞ出てなかったの」
おいサボりかリリー。それはさすがにいけないな。モラグも怒ってるぞ。
「ち、違うというかー。どうせ私出ても難しい話ばっかでわかんないからいいかなーって」
「な、に、が、ちげえんだよ。」
「まぁまぁ、貴方もそんな怒らないの」
「いやまぁそんな怒る気はねぇんだがよ俺も」
「つ、次はでますから〜」
全く、何やってるんだか本当に。
で、なんの話だったっけ?
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それは次の日の朝の出来事だった。
「侑季君、今日は私に付き合ってくれない?」
ミーシャが唐突にそう告げてきた。珍しいよなミーシャが俺のことを誘ってくるなんて。
「まぁ暇だけど、ミーシャは魔法の練習があるんじゃ?」
「それもやるけど、そのあと私に付き合ってほしいんだ」
「まあそれなら別にいいけど」
「本当!それじゃあ約束だからね」
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「って言われたのが今朝の出来事だったな」
「うんそうだね、間違ってないよ」
「で?なんで俺たちは今こんなカフェみたいなところでくつろいでるんだ?」
俺が連れてこられたのはギルドにあるメンバー専用の休憩所だ。
ここではギルド内の情報交換や仲間を探したり、あるいはただの休憩スペースに使ったりされている。
「まあまあ、ここならゆっくり話せるじゃん?」
「それはそうだけど、って言うかそもそも何がしたいんだ?」
未だにミーシャが俺を呼んだ理由もここに連れてこられた理由もわかってないんだが。
「ほら、これからエリルが旅の準備とか何が必要とか色々考えてしてくれるじゃん?」
「ん、そうだな」
エリルは頭がいいというか先を見通す目がしっかりしているので、旅に必要な食料からモンスターへの対処のための道具などを用意してくれている。
今回も一人で準備を始めるみたいだし、俺たちも手伝えればと思ったのだが。エリルの手助けにはならないだろうし、ミーシャも侑季君も他にやることがあるでしょう?と一蹴されてしまったのだ。
「でさ、今私がやってる練習って魔力の操りとかだけど。これって実戦だと役に立たないよね?」
「100パーとは言わないが、その可能性は高いかな」
だから疎かにしていいってわけではないのはもちろんだが、たしかにこれ単体で何か役立つってことはないだろう。
「だから、私も何か旅の役に立たなきゃって思ったんだよ」
なるほどそういうことか。要はエリルの役に立ちたいわけだな。といっても、役に立つとは簡単にいうものの実際難しいぞそれは。
「ミーシャ、気持ちはわかるけど」
「いや、私だってわかってるんだよ?逆に足を引っ張る可能性が高いから特に何もしないほうがいいっていうのは」
「いや、そこまでは言ってないけどさ」
「でも実際そうなると思わない?」
「それは…んー」
そうなるかと聞かれればそうなるだろうと答えるのが俺の率直な意見だけど。
「だから、今までは極力邪魔しないようにって思ってたけど。やっぱり違うと思うんだよ」
「違うって、何が?」
「確かに魔法は使えないし、バロンもいないし、エリルと戦ったら5秒も持たないけど」
すごい勢いで自分を罵倒していくなミーシャ。そこまで言わなくてもいいと思うが。
「やっぱり守られてるだけって違うと思うんだよね。事実侑季君とモラグを危ない目に合わせちゃったし」
「いや、別にあれはミーシャは何も悪くないって」
「でも私的にはやっぱりしっくりこないんだよ。それで、何か!私でも手伝えるものないかなーって思ってるんだけど」
「だけど?」
「思いつかないんだよねー、というわけで侑季君。一緒に考えてくれない?」




