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圧倒的ガチャ運で異世界を成り上がる!  作者: ケンノジ


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102/114

100話

 黒い焔を巻きつけた魔焔剣とジルエルの十字剣がぶつかる。


 剣が重い。


 ギシッと体が軋むような音がした。

 ふっと軽くなったと思ったら、切っ先が鋭くこちらめがけて飛んでくる。


 首をかたむけ回避すると、踏み込むと同時に斬りあげた。

 黒い焔が、白い光に受け止められる。


 次の攻撃を――。おれが繰り出そうとすると、そこにはもう姿はなかった。


 気配におれは前方へと転ぶ。

 後ろからヒョン、と空気を切り裂く音がする。


 あのままだったら首と胴が離れていただろう。

 飛び道具も使わないし、『指差し』もしないあたり、やっぱりリーファに介入されるのが余程嫌らしい。


 すぐ立ちあがり剣を構えると、また姿が消えていた。

 後ろに気配がない。右、左と視線で確認していたときだ。

 フッとおれの影に、違う影が重なった。


 上か――!


 ジルエルが降ってくる。上段に構えた剣を振りおろした。


「ハァアッ」


 おれは十字剣を顔面すれすれで受け切った。

 ギシシ、と骨の軋むような音が聞こえる。

 薙ぎ払うと、ふわっと浮いて距離を取った。


「何を入れたのかは知らぬが、奇怪な剣だ。しかし、私の神剣と違い物理的な剣であることに違いはない――そろそろだろう」


 何のことかさっぱりわからず、おれは考えるのをやめた。

 言葉の意味に気を取られている場合じゃない。

 迫ってきたジルエルの斬撃に応じる。


 振りあげられた剣を受けると、ふっと体が浮いた。

 防御用の【灰燼】を発動させ、おれの周囲を真っ黒な焔が包んだ。


 ジルエルはすでに数歩飛び退っていた。

 やっぱ、焔はダメージを食らうみたいだ。

 スキルを解くと、おれは一直線に疾駆した。


 そろそろMPがやばい――。


 攻撃の瞬間、剣でガードする瞬間だけに【灰燼】を発動させ、応戦していく。


「しつこい――」


「あんたもな」


 ジルエルが力任せに十字剣を振り下ろしてくる。

 打ち負けまいとおれも全力で応じた。


 バギン、と聞いたことのない音がする。

 おれの眼前で、魔焔剣が折れた。


 解けてしまったかのように、刀身は粉々に砕けていく。

 今まで刀身を包んでいた真っ黒な焔がボテっと平原に落ち、何かの生き物のように燃えている。

 バシュン、と黒い焔は明後日の方角へ飛んでいった。


「ッ」


 おれの動揺を見抜いてか、ジルエルがさらに攻勢に出る。

 鋭い突きを鼻先でかわし、横に振りはらわれた十字剣をしゃがんで回避。


 それを読んでいた斬撃が降ってくる。

 抜いた鞘で一撃目を堪える。けど衝撃を殺しきれず態勢を崩した。


 ッ――、ちょっとマジでやばいかも――

 冷や汗が背を伝う。


 そのとき、ジルエルのように瞬間移動してきたリーファがおれの前に立ちジルエルに手をかざした。


「【神域】」


 ジルエルの剣がリーファの神盾を叩く。

 バリリッ、と衝撃が稲妻のようになって盾の上下左右に流れていった。


「ジンタ、大丈夫!?」

「おれは大丈夫だけど、魔焔剣が――」


 魔神が宿った剣だから有効だったって話だ。

 スキル自体は覚えているけど、他の剣でスキルを使ってジルエルに効くのか……?


―――――――――――

種族:人間

名前:風見仁太

Lv:101

HP:105000/120000

MP:100/40000

力 :6200

知力:4400

耐久:3000

素早さ:3400

運 :999999


スキル

黒焔 灰塵 真・恫喝 ホモキラー

勇者見習い ジャイアントキリング


運否天賦(ハードラック) ←NEW(各戦闘につき一度だけ、運の数値を任意のステータスに上乗せ出来る)

女神(リーファ)の寵愛 ←NEW(女神(リーファ)に愛されている)


―――――――――――


 運否天賦か。ここぞという一撃にはおれの運数値が役立ちそうだ。おれ自身のスキルで、ようやくまともなやつを覚えた。


 ……あと、なんか、ちょっと照れるスキルを覚えてる……。

 シリアスな場面なのに吹き出しそうになった。

 そんなリーファは、おれに背をむけてジルエルの攻撃を防いでくれている。


「休暇が欲しいのなら届け出を提出するのが筋だろう」

「だからぁ! 別にサボりたくて下界(ここ)にいるわけじゃないって、さっきから言ってるでしょ! もっともっと大切なものを見つけたの!」

「天界には天界のルールがあるのだぞ」


 ルール……?


 そういや、おれはどうなんだろう。


 勝手にこの世界に無理やりきちまったけど。


 天界から何かの操作をして強制的におれを連れ戻せるんなら、転移したときからそうしてるだろう。


 その天界のルールってやつは、おれには適用されてないんじゃ……?


 魔焔剣に魔神が宿っていたから攻撃が有効だった――それも理由のひとつなんだろう。


 けど一番の理由は、使用者が神の定めたルールの外にいる人間――『おれ』だからじゃないのか?


「もぉー! ルール、ルールって! パワハラもモラハラも断固拒否よ!」


「フン、神の座にある者の言葉とは思えんな。口やかましく、自己中心的。……戻っても、神で居続けられないのだからもう構わんが」


「別に女神の地位とか、わたしキョーミないからっ! ご自由にどうぞっ」


 呆れを通り越したジルエルが、沸々と怒りを湧きあがらせているのがわかる。

 そっか……、とリーファが小さくつぶやいた。


「神だから連れ戻しに来てるのよね……ジルエル様は……。だったら――」


 おれに横顔を見せる。


「さっき言ってくれたことってホント!? 『おれもリーファにいて欲しい』ってやつ。それは、わたしが女神サマだから?」


「んなわけねえだろ。リーファがリーファだからだ。女神だから一緒にいて欲しいってわけじゃない」

「よかった。……だったら、わたしが迷う理由はもうない――」


 微笑したリーファが防御を解くと、反撃を警戒したジルエルが少し距離をとった。

 リーファが両手を胸におく。


「何をする気だ、女神リーファ」

「ジンタ。文字通り、わたしが、あなたの剣となる――」


 リーファの体が光りはじめる。ジルエルが焦るように言った。


「【創造力】を自らに使えば――もう元には戻れないのだぞ!」

「女神の地位なんてどうでもいい! わかったの。わたしは、この世界にいたいんじゃない。ジンタと一緒にいたいだけ――」


 さらに光が強くなる。おれは眩しさに目を細めた。


「たった一人の人間のために神の地位を捨てるだと――バカがッ」

「バカじゃないと恋なんて出来ないわよ――ッ!」


 一層激しくなった発光現象におれは目をつむった。

 目の裏まで貫いた強い光がおさまり、目蓋を開ける。

 そこには、何ら変わらないリーファがいた。


「リーファ、剣になるってさっき……」

「え? うそ? あ、あれ……そのまんま??」


 ステータスをのぞいてみる。


――――――――――

【神剣リーファ】

元は女神。人の姿になることも出来る。


HP +100000

MP +100000

力  +10000

知力 +10000


スキル

【神域(エリア・フォース)】1/10 消費MP500

物理、魔法、概念現象の一切を防ぐ世界最強のシールドスキル。


【神光(ハロ)】1/10 消費MP400

強力な聖攻撃魔法


――――――――――


 アイテム用のステータスになっていて、レアリティはないけど、神剣って表示されている。


「あれ? お、おかしいわね……?」


 きょろきょろと自分を見まわしたリーファが、「えいっ」と可愛らしく掛け声をかけると、ひーちゃんがそうなるように、また体が光った。


 次の瞬間には、リーファは確かに剣になっていた。


 光の粒子をまとう神々しくて美しい剣が、ふわふわと宙に浮いている。


 柄を握ると声が聞こえた。


『ジンタ、わたしを使ってジルエル様を追い払って!』



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