シンデレラの目覚め
アカリは潰されたゴキブリのごとく、手足をバタつかせていた。床に落ちた拍子に腰の骨にひびが入ったらしい。
「痛い、痛すぎよ」
一人で悶え苦しむアカリの体を、大きな人影が覆った。
「やっぱり、始末することにしたわ」
そこにいたのは、先程外に出て行ったはずのシルバであった。彼女はアカリのことが気になっていたらしく、再び廊下に舞い戻って来た。
「あんた・・・・」
「少し見ないうちに、かなり小さくなったわね。まあ、その方が面白いけど」
シルバは人形のように、アカリを手掴みにすると、彼女を両手に持ち替えて、万力のように力を込めた。
「あぐううう」
「痛いでしょ。このまま内臓ごと潰すのも悪くないけど、少し楽しませてね」
シルバはアカリを壁に投げつけた。
「ごふ・・・・」
アカリは壁に顔面から衝突すると、そのままズルズルと壁を滑り落ちて、床の上に大の字に倒れた。
「無抵抗の奴を殺すのは楽しいわ。きっと、この能力も、そんなあたしの気持ちをくみ取って、神様が授けてくれたのね」
「はあ・・・・はあ・・・・」
アカリは口から唾と血の混じったものを床に履くと、フラフラとしたまま構えた。
「何それ、やる気?」
シルバは右足を上げて、アカリの体を壁に向かって蹴り飛ばした。
「げぼ、げぼ」
アカリは吐血しながら再び床に沈んだ。
「このまま死ぬって言うの?」
アカリは自分の傷だらけの手足を見ながら、シルバの姿を見上げた。まるで巨人である。昔、蟻が恐竜に勝てるか、という台詞を聞いたことがあるが、アカリは正にそれを感じていた。
「どうやって殺そうかな。そうだ、肘鉄で殺しちゃお」
シルバは走りながら、アカリに向かって肘鉄を喰らわせようとした。
「お願い、誰か助けて」
アカリは眼を閉じて神に祈るかのごとく両手を合わせた。
「死ね」
「嫌ああああああ」
アカリの祈りが天に通じたのかどうかは分からないが、突然、彼女の体を金色の光が包み込んだ。気が付くと、彼女の体は元の大きさに戻っており、その姿も制服姿ではなくなっていた。
「な、何よこれえええええ」
アカリは両手で胸を隠して蹲った。彼女の服は黒いSMで着るようなボンテージ風のドレスで、髪の色は茶髪から青色に変わっていた。背も以前より伸びており、胸と尻が一回りは大きくなっていた。
「嘘でしょ。あんたも超能力を使えたの?」
シルバは言いながら小槌を出現させると、それをアカリに向かって振り下ろした。
「なんだかよく分からないけど。行くわよおおおおお」
アカリはシルバの顔を殴り付けると、そのまま両手で眼にも止まらぬラッシュを繰り出した。
「ごはああああ」
シルバはそのまま宙を舞い、床の上に倒れた。
「やったわ・・・・」
同時に、先程まで姿を消していたジンも元の大きさに戻った。
「先生、無事だったんですね」
「ああ、隙を突いて、奴を攻撃しようとしたんだが、体が縮んでてな。にしても驚いたぞ。お前が超能力を」
「これ、超能力って言うんですか。私、エスパーですか?」
「ああ、今日からお前は能力者だ。しかし、見てみろよ。これ」
ジンは倒れているシルバの姿をアカリに見せた。何と彼女の髪の毛は全て抜け落ちており、顔には無数の皺が刻まれていた。体も枯れ枝のように弱弱しく変貌を遂げている。先程までの彼女は、少なくとも10代後半に見えたのだが。
「私がやったんですか?」
「お前の能力だろう。しかし、殴った奴を老けさせる能力なんてあるのか。そもそも・・・・」
「分かりませんよ。私だって・・・・」
「恐ろしい能力だぜ。絶対に敵に回したくない。ちなみに、俺の能力はアーツ。触れた物体や肉体の一部を強化できる。お前の能力にも名前が必要だな」
「名前ですか。そうですね。じゃ、じゃあシンデレラで」
「シンデレラ?」
ジンは眉をしかめた。女の子のセンスには付いて行けないぜ。などと顔に書いてある。
「だって、この姿見て下さいよ。マブいドレスに、ナウい髪の色。まさにお姫様でしょ」
「一応ツッコんでやるが、お前はいつの時代のギャルなんだ?」