第5話「白い光 前編」
リューヤのα能力が今試される
アルテイル公国へ飛び立つ日が来、リッターとリューヤはアレクシーナ第三王女を警護し、専用機に乗り込んだ。
アレクシーナを中心にリッターとリューヤが両脇に座る。他にも八人ほどSPが座っている。
「妙だわ」
リッターがそう呟いた。
「人数が多いな。」
アレクシーナがそれに同調し、頷いた。
飛行機の昇降口の扉が閉まる。
「離陸は待て!」
アレクシーナが立ち上がりそう言い放った。
「気付いた時には時既に遅しってね。」
一番前に座っていた男が立ち上がり、こちらを向いてそう言った。それと同時にリューヤとリッターを除く全員が立ち上がった。手には拳銃が握られている。
リッターはアレクシーナを座らせ、立ち上がり拳銃をリーダー格の男に向けた。
「ハハ。勇ましいことだ。8人相手にたった二人でどうしようって言うんだい?リッター大尉。」
「殺す事が目的ではないようね。何を要求するつもり?」
殺すつもりなら有無を言わさず撃てばいい。そうしないには何か理由があるはずだ。
「いや、殺しが目的だよ。」
リーダー格の男はそう言って、片手を軽く上げた。敵のうちの二人が操縦席に向かう。
六人?やれるか?
「殺す前に、いろいろ聞きたい事があってね。」
「馬鹿な真似は止めなさい。ハイジャックが成功した例なんて数える程しかないわよ。」
リッターがそう言い放った。
「俺達はクライ王国開放戦線の者だよ。あんたらみたいに損得で動いちゃいないのさ・・・」
リーダー格の男はそう言った。
「ははははははは。」
アレクシーナが声高々に笑った。
「何がおかしい。」
「お前らの可笑しさを笑ったのだ。お前等を含め我々の神は、人を殺すことを戒めている。だがお前らは人を殺す事で事態を思うように動かそうとしている。神の徒を名乗りながらだ。それを笑わずに何を笑う。」
「黙れ!この魔女が!」
SPのフリをしていた一人が激高してそう言った。
「テロで人が動かせると思うのか!」
アレクシーナはその男を睨みつけた。
「事はそう単純ではないんだよ。お嬢さん。」
リーダー格の男は拳銃を向けたまま落ち着いた表情でそう言った。
「来るぞ。」
アレクシーナが小さくそう言った。
何が?
そう考える間もなく飛行機が大きく揺らいだ。




