第41話「我々」
リーンの内部に巣くうもの、それは神か悪魔か?
果たしてリューヤは、リーンの死の運命を変えれるのか?
「リーン!」
リューヤは苦しみだしたリーンに駆け寄る。
「今だ!取り押さえろ!」
アレクシーナが声をあげた。リューヤがキッとアレクシーナの方を見る。護衛たちは一斉にリーン・サンドライトに飛び掛った。その流れの中でリューヤももみくちゃにされた。
多くの兵士達が折り重なりリーン・サンドライトは完全に取り押さえられたかに見えた。アレクシーナが溜息をホッと吐き出した瞬間、折り重なっていた全ての兵士が吹き飛ばされた。ある者は壁に叩きつけられ、ある者は天井近くまで跳ね上げられた。
倒れていたリーン・サンドライトがゆっくりと立ち上がる。その体から青白い光が発されていた。それはリューヤのような特殊な能力を持つ者でなくとも見えるほどの光だった。
「愚か者どもめが!」
リーン・サンドライトの口からこの世の物とは思えぬ地獄から響くような声が響いた。
アレクシーナが護身用の黄金銃を素早く抜き、撃った。
だが、弾丸は途中で止まる。
「無駄な真似は止めるんだな。クイーン・アレクシーナ。」
リーン・サンドライトは底冷えのするような目でアレクシーナを見詰め、弾丸をアレクシーナの玉座の側に弾き返した。
「ようやく出てきたか・・・・・」
アレクシーナは不敵に笑みを浮かべ言った。
「俺を待っていたという訳か」
リーンの口からそう声が漏れた。
「いや、そういう訳ではないがな。お前達の事には興味がある。一体何の為に我々に未来を教え、何の為にこうも破壊を行うのか・・・・・お前達は我々の想像もつかぬ所で繋がっているのか、お前達の中にも階級や国といった概念があるのか・・・・・我々に伝わる伝承のどこまでが本当なのか?興味は尽きんさ。」
「ククク。クイーンアレクシーナ、お前は他の人間どもとは少しは違うようだな。普通このような事態が起きれば人間共は恐れ倒そうとする。自らの分もわきまえずにな。」
「強がった事を言う。お前らがいかに巨大であろうと、「人」を通さねば大きな力を発揮できぬのは調査済みだ。お前のヨリシロであるリーン・サンドライトの肉体を止めてしまえばお前らと言えど大きな力は発揮できない。」
「ククク、ハハハハ。たいしたものだ。しかし、これだけの力を持ってしまった俺をどうやって止める?核兵器でも使わねば俺は止められんぞ。」
「それはどうかな?切り札はまだ私の手の中にある。リューヤ・アルデベータというα能力者がな。」
リーンがリューヤの方を向いた。他の全ての人間が弾き飛ばされたというのにリューヤだけは、弾き飛ばされていなかった。リューヤはアレクシーナの声を聞いてゆっくりと立ち上がる。
「我々にも弱点がある。自分がこれからどうなるかという未来だけは、読めん。だが、この男が果たしてリーン・サンドライトというこの女の肉体を殺せるるかな?」
「大人しく病院の地下に戻るなら今度の件はなんとかしよう。」
「ふはは、もはや病院など跡形も無いわ。」
「予備の施設を用意してある。」
「戻る気があるくらいならば、ここにはいない。」
リーンとアレクシーナの視線がぶつかる。
「リューヤ!」
アレクシーナはリーンから視線を逸らさぬまま、大声でリューヤの名を呼んだ。
「こんな事になってすまないと思っている。だが、今リーン・サンドライトを野に放てば取り返しのつかない事になる。お前にしか止める事は出来ない。お前の正しい判断を私は信じるぞ。」
アレクシーナは静かにそう言った。




