第39話「破壊の跡」
衝撃の未来を聞いたリューヤ・・・・・その裏で既に別の思惑が動いていた。リーン・サンドライトの身に何があったのか・・・・・
リッター・フォーンフィールドはアルテイル公国へ、特別任務で赴いていた。
リッターは目の前に広がる惨状を見て、これがとてつもない何事かの前触れのように思えた。
白い瓦礫の山の中をリッターは注意深く観察しながら歩く。
(酷いものね・・・・これがたった一人のβ能力者のものだというの?)
リッターはそう思いながら、瓦礫の中の地下への入り口を探った。
ここはかつてのイレーザ病院・・・・・リーン・サンドライトが保護されていた病院だった。しかし、今は見る影もない。そこはもはや廃墟とも呼べぬ瓦礫の山で、死者30人、重軽傷者143人を出した大惨事の跡だった。
リッター・フォーンフィールド少佐に課せられた任務は、リーン・サンドライトの捜索と保護だった。だが、リッターはこの惨状を見て、正直それは不可能だと考えた。これを行ったのがリーン・サンドライト一人だと言うならば、捜索はともかく保護は難しい。抵抗すれば射殺する事すら許可されているが、銃がまともに通用するかは疑問だった。破壊の惨状から考えれば、リーンの保護の為には最低一個小隊が必要だろう。
だが、今のリッターには、一個小隊を動かす権限は与えられていない。この任務は隠密の任務であり、この事態は秘密裏に処理されるべき事だった。
瓦礫を取り除きながら、現場検証が進む。現場にはリッターが率いるメンバー以外に、別のメンバーがいた。α計画β計画に積極的な王直属の親衛隊員達である。
彼らの目的もリーン・サンドライトの捜索及び保護であったが、リッター達とは若干内容が違っていた。リッターの任務の重点が保護にあるのに対し、彼らの任務は「秘密裏」が何よりも優先された。故に、彼らに先に発見されれば、リーン・サンドライとは高い確率で死ぬだろう。アレクシーナを除く王家にとって、リーン・サンドライトはβ能力実験の失敗例であり、処分されるべき物であるからだ。
リッターにリーンとの直接的な面識は無い。だが、リューヤ・アルデベータと同じ施設にいた事は知っていた。リーンがリューヤの恋人であった事までは知らなかったが、同じ施設で育ったリューヤの気持ちを考え、生かして捕まえたいと考えていた。もちろん任務が優先される事は言うまでもないことだったが、リューヤを実の弟のように考えていたリッターはリューヤの気持ちを出来るだけ踏みにじらないようにしたいと考えていた。
「リッター少佐。王直属王国親衛隊が地下への通路を発見しました。」
「そう、私もそこに行くわ。」
リッターは青い透き透った目で王直属王国親衛隊の方を見、そちらに向かっていった。
「とてつもない破壊の跡ですね。」
リッターは指揮を取るレスゴ・ウィーア少佐に言った。
「その通りだな。この破壊がたった一人の武器も持たない女の仕業とはとても思えんよ。」
「同感です。」
レスゴ・ウィーア少佐はタバコを銜え火をつけた。
「ここの破壊の跡から、リーン・サンドライトの行き先について得れる物があると思うかね?」
「恐らく何も得れないでしょう。」
「では、ここで調査を続けても無駄骨という事だな。」
「リーン・サンドライトの部屋は特別な監視がされていたようですから、その記録があれば、あるいは手掛かりが掴めるかもしれませんね。」
「君の狙いもそこか・・・・・・だが、一つの事件に二つの部隊が別々に調査するというのは非効率だ。君達は帰ってアレクシーナ第三王女をお守りしておけばいい。」
レスゴ・ウィーアはそう言った。階級は同じでも王直属とアレクシーナ直属では明らかな差が意識されていた。レスゴはそれを言外に露骨に表したのだ。
その高圧的な態度にリッターは軽く微笑み、返した。
「リーン・サンドライトに関しては、アレクシーナ様に直属の保護権があったと記憶しておりますが・・・・・・」
「だからこそ問題なのだ。それに既に保護という段階ではなかろう。だいたい戸籍的には既に死亡した人間だ。王家としてはあくまで「秘密裏」に処理したいのだよ。」
「リーン・サンドライトを殺すという事ですか?」
「既に死んでいる人間に殺すも何もないだろう。」
一段高い所に立ったような目で見るレスゴを、リッターは強い目で見返した。
「我々は、あくまでアレクシーナ様の命令を遂行します。」
「勝手にするがいい。だが、我々の邪魔にならないようにな。」
リッターはレスゴに言いようのない不快感を感じた。




