バレルの目的
「――で、どうでしたかねぇオレの味は?」
「……不味イナ、オマエノ肉ハ酷ク不味イ」
不満の言葉を口にしながらも彼女は最後に残った肉片を喰らった。
「え~、酷い言いぐさだなぁ。文字通りに身体を張ってるっつうのに」
軽い調子を崩さず顔に薄笑いを貼り付けるバレルだが、その肉体は実に痛々しい様子である。
左腕が肩口からまるごと欠損していた。
目の前の人魚の体力を回復させる為、自ら断ち切ったのである。
その手にはとある骸骨が人魚に投擲した舶刀が握られていた。
バレルは軽口を叩きながら舶刀を残った右手の中で弄んだ。
「腸ヲ引キズリ出サレナカッタダケ幸運ト思エ……」
受け取った左腕を喰らいはしたが、体力の回復を図るなら心臓や腸、脳といった部位を喰らった方が手っ取り早い。
しかし、彼女がそうしなかったのはバレルを警戒したからだ。
「……ソレデ、貴様ノ目的ハナンダ?」
まさか、ただの善意で人魚である自身を救ったのではあるまい。
そんな考えからの言葉だ。
訝しげな視線をバレルに向けて彼女は問う。
「アンタ等の仲間になりたい」
「……ナンダト?」
バレルの言葉に彼女は眉を顰める。
「オレには為し遂げたい目的があってさ、その目的を遂げるにはアンタ等の仲間になった方が都合がいいんだ」
「ナニヲ言ウカト思エバ馬鹿ナコトヲ……」
「信用出来ないか? 証は立てたつもりなんだが?」
失った左腕を舶刀で指しながらバレルは人魚に自分が本気であると示した。
「……ソノ証ヲ立テタノガ只人ナラバ信用ニ値スル。シカシ、貴様ハ……」
疑念は取り払われず、人魚の瞳には剣呑な気配が宿る。
「厳しいなぁ……」
「信用ヲ得タイト言ウナラバ、貴様ガ果タシタイトイウ目的ヲ語レ。話ハソレカラダ」
「……オレの目的、ね。それは」
バレルの顔から薄笑いが消え真剣な表情へと変わった。
「――あの海賊達を一人残らず殺す事だよ」




