アスターと服
短くてごめんなさい・・・!
私がそんな目立つ服で来ないでよ、そういった次の日のこと。
もう来ないと思っていたアスターが今度はセントポーリアの若者と同じような服装で花屋にやってきた。
私は驚きのあまりにブーケで使うガーベラの茎をハサミで思いっきり短く切ってしまった。むしろ茎すらない。
にやけた店長がなにを気を利かせたのか今日はもう仕事はないと追い出されてしまった。
肩を並べて歩く。家に帰るわけにも行かず、セントポーリアの中心に位置する広場に行くことにした。 アスターは何も言わずに隣を歩く。言葉はなかった。
私はアスターの格好を横目で見た。
普通にシャツにベスト、チェックのズボンという格好なのに、アスターの元々の雰囲気からなのかあまりにも似合わない格好についつい笑ってしまう。
無言を崩したのは私だった。
アスターにも似合わない格好なんてあるんだ。
煌びやかな洋服を着たアスターしか見たことはなかったから違和感を感じるのかもしれない。
そうするとアスターは拗ねたように言った。
「お前がいつもの服もこの町の巡回騎士の服も嫌だというから!」
「だって、こんなに似合わないとは思わなくて。ふふっ似合わないね、アスター」
「はっきりと言うな!やっと、笑ったと思ったら・・・」
アスターがぶつぶつと文句を言う。
最後の言葉は小さくて聞き取れなかった。
だけどそんなアスターの不満気な顔にも笑みが零れた。
広場には人が沢山いた。といってもピークは過ぎているから広場で屋台を出している人や、それに並ぶ人。あとは噴水の周りで遊ぶ子供たち。雑談をする人。
噴水の淵に座る。
私が思っていたよりもアスターは広場の雰囲気に溶け込んでいるようだ。
たわいない話が流れる。穏やかな空気だ。花屋にはどんな客が来るのかや、街のこと。
だけど、アスターや姉のことや結婚のこと、屋敷のことについては話が出ない。話に出したらこの空気がなくなってしまいそうで怖くなる。
まだ出さないで。まだ私は貴方といたい。
たとえ貴方が姉のために私に会いに来ているのだとしても、服を変えてまで会いに来てくれるアスターに嬉しくなってしまう。
そう思ってしまう私はわがままだ。
そんなことを思っていると話が止まった。
アスターは私を見たまま喋ろうとしない。
ふいに掴まれた手に肩を震わせた。
アスターの手は大きくて、ぎゅと重ねた私の手を握る。
アスターが声を発するために口を開いた。
耳を塞ごうにも手を握られているから塞げない。
「メグ」
アスターが私の名前を呼んだ。
お願い、聞きたくない。
私は咄嗟に強く目を瞑った。
お話はできてるのに書けないこのジレンマ・・・