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初恋はきっと何処かで嘘をつく。[一話]

きっと恋愛なんて嘘だらけだ、相手と同じくらい好きなんてことはありえない。


好きだと言われるのは、嬉しい。

自分がその人を好きかどうか、まだ分からなくても。


だから、相手が喜ぶ言葉を探した。

寂しくさせないように連絡をして、困っていたら力になろうとした。

そうしていれば、いつか同じ気持ちになれると思っていた。


嘘をついているつもりはなかった。

ただ、言わなかったことはある。


会いたいと言われても、一人でいたい日があること。

笑っている相手の隣で、帰る時間を気にしていたこと。

それでも、もう好きじゃないと言われるのは怖かったこと。


相手を傷つけたくない。

そう思うたび、言葉を飲み込んだ。


飲み込んだ言葉がなくなるわけじゃないと、知っていたはずなのに。


あの頃の俺に、ひとつ聞けるなら。


「その人のこと、好きなのか?」


きっと俺は、すぐには答えない。

少し考えて、相手がどれだけ優しいかを話し始めると思う。

中学を卒業し、高校に入るまでの間に俺は振られた。


告白したのは、中三の二学期。

なんとなく憧れて、なんとなく告白してみた。

一度くらいこういうことをしておかないと。

その程度の気持ちだった。


告白は受けてもらえた。

しかしその先は何もなかった。


俺が彼女を好きなほど、彼女は俺を好きじゃない。

そんな気持ちをひしひしと感じていた。


しばらくして俺は振られた。

なけなしのプライドが傷ついたのか、とても悲しかった。


俺のことを好きになってくれる人には、そんな想いを絶対させない。

嘘でも良いから、そんな君を幸せに。

その時俺はそう思った。


サブタイトル

[一人目]


-高校一年生春教室・昼休み・相沢透-


入学式から一週間ほど経った、ある日の昼休み。

俺の名前は相沢透(あいざわとおる)。

高校は近いという理由だけで、偏差値を落として入った。


後ろから背中をつつかれた。

「相沢?部活決めた?」


こいつは三浦梓(みうらあずさ)。

小中高と同じ学校に通う、幼馴染。

背は低く、150㎝くらい。

髪は短いが、前髪だけ目にかかるくらい伸ばしてる。

ダウナー系のオタクで、「俺だけはこの子の良さが分かってる」と陰ながら思う奴が多そうだ。

少し儚げな女の子。


「まだ悩んでる」

中学では陸上部だった。

それなりに頑張ってはいたが、高校でも続けたいと思うほどの熱意はなかった。


「なら、私と一緒に部活作らない?漫画研究部」

三浦は、にこりと笑う。

ただそんな部活はこの学校にはない。


「ないだろ、そんな部活」


「作ろうよ、二人で!」


「別にいいよ、それなら帰宅部に入るわ」

三浦はよく話しかけてくる。

しかし、他のクラスメイトと話すところはあまり見かけない。


「あれ?三浦さんと相沢君って仲良かったんだ?」

この子は吉田綾香(よしだあやか)。

あまり可愛いとは言えない。

少しインドア気味の、明るく落ち着いた女の子。

吉田さんも同じ中学だった。


近くの高校を受験しただけあって知り合いは多い。

「ま……まぁ幼馴染だから……」

三浦が答える。


「少し羨ましいな、幼馴染がこんなかっこいいなんて」

少し目をそらし、照れたように言う。


「なんだよ……私と不釣り合いってか?」

三浦がわざとらしく膨れる。


「ち……違うよ!モデルにもスカウトされたんでしょ?純粋に羨ましいなって!」


「ありがとう」

わざわざ褒めてくれたんだ、礼ぐらい言っておくか。


「だってよー」と納得がいかなそうに、三浦は俺をつつく。


俺の見た目はというと身長は165㎝とそこそこ低いが、中学の頃モデルのスカウトが来たことがある。

男らしくはない、いわゆる中性的な顔立ちだ。


「吉田さんはどこの部活に入るの?」


「私は美術部かな?昔から絵が好きだし!」


きーんこーんかーんこーん。

そんなことを話してると、授業開始の予鈴が鳴る。


「じゃあ授業始まるからまたね!」

吉田さんは、手を振りながらそそくさと席へ戻る。


部活かぁ……。


担任の田辺先生が入ってくる。

「席に着けー!」

四十代くらいの優しい男性教師だ。

正直このクラスは穏やかだ、当たりと言って良い。

放課後は部活見学。見学できる部活は三つまで。

俺は陸上、美術、演劇部を見て回る。


-グラウンド・相沢透-

まずは陸上部。


「セット」

パーン!

紙雷管が鳴る。


おお!流石高校の陸上部。

紙雷管を使ったスタートダッシュの練習。火薬の匂いには胸が躍る。

中学にはなかった設備だ。


……うーん。

やはり、高校でも陸上を続ける人はみんな背が高い。


俺が陸上を続けない理由もほとんど、身長だった。


俺がやっていた高跳びでは、背が高い方が有利だ。


県大会では、自分の背より高いバーを越えても、大して注目されなかった。

背の高い選手がさらに高いバーを越えると、拍手が起きる。

分かってる。競うのは身長との差じゃない。

それでも、理不尽だと思ってしまった。


目標だった記録を更新した俺には、もはや心残りなどなかった。

先輩達の高い背を見て、それをもう一度確認できた。


「相沢!君もやっぱり陸上部に入るのか!」

こいつの名前は石川浩介(いしかわこうすけ)。

別の中学だが、何回か記録会で話したことがある。

確か短距離走の選手だったはず。

背が高くて男らしい、陸上好きのナイスガイってイメージだ。

なんで見学でスパイク履いてるんだ、こいつ。


「いや、俺はまだ悩んでて」

答えは決まっていたが、断ると面倒なことになりそうだ。


「一緒に入ろう!相沢と陸上一緒にやりたいぞ!」

すごい熱意だ、逆にこちらは冷めてしまう。


「まぁ他も見てみるからさ」

石川の熱烈な勧誘をかわし、俺は美術室へ向かった。


-美術室・相沢透-

美術室には吉田さんがいた。

「あれ?相沢君も美術部の見学?」


「そう、文化部も興味あって」


「そっかー。でも美術部男子少ないからつまらないかもよ」


「その方が俺としても嬉しいよ」

そう言っていたずらに笑った。


「不純な理由は良くないな〜。そんなことしなくてもモテるでしょ?」


「そんなことないよ。今も彼女いないし募集中って感じ」


「そっか、意外だね」

吉田さんもいたずらに笑う。


部員達は、石膏像のデッサンをしている。

基礎練って奴なのかな?


それにしても、部室はやけに静かだ。

眺めていても、あまり心は動かなかった。

ここも違うや。


「相沢君はどんな絵が好き?」


テンションの低い俺に吉田さんは話しかけてくる。

「モネとか?」


「画家の名前が出てくるなんて流石だね!」


モネといえば、印象派の画家で超がつくほど有名だ。

確か睡蓮の……。


適当に思い浮かんだだけの名前を言ったが吉田さんは嬉しそうだ。


「吉田さんは好きな画家とかいるの?」


「ダリとかピカソとか少し変わった画風の人が好き!型破りっていうのかな?」


型破りが好き……。


「ダリってあの時計溶けてるやつだよね」


「そう!現実の中なのにあり得ない風景みたいな?ワクワクするの!」


「俺も少しわかるかも」

全く分からないけど。

合わせといた方が喜ぶだろ。


「本当!?良かった!」


……。

無駄に合わせたせいで、変に盛り上がってしまった。


-視聴覚室前・相沢透-

最後は演劇部。

正直一番期待している。

ドラマなどで演じることには興味があった。

それに中学にはなかった部活。


それではと見学に向かうと、視聴覚室の扉が勢いよく開いた。

バタンっ!

扉から飛び出してきた三浦が、怯えた顔で息を切らしていた。


「え?三浦も演劇部の見学?」


「そ……そうなんだけど。ここの顧問ヤバくて!」

訳を聞くと、演劇部は部員が足りず廃部の危機。

活動時間は長いし、練習も厳しいらしい。


「入った瞬間鍵閉められて、『君には才能がある』とか『主役行けるね!』とか言われて。命からがら逃げてきた……」


三浦を主役って……。

髪切れば行けんのかな?


「相沢入ったら絶対捕まっちゃうよ!」


なら演劇部も無しかな……。


そう思っていたところに、長い黒髪の綺麗な顔立ちをした女子が視聴覚室に入って行った。


「うわー……ご愁傷様。あんな美人だと捕まるね」

三浦は顔をしかめていた。


えー……。そんなにやばいのかよ。


俺は結局部活には入らないことにした。


-三日後放課後・職員室・相沢透-

このクラスで部活に入らなかったのは俺と三浦だけだった。

そのせいで今担任に呼び出されている。

「まぁ部活自体は強制ではないがな。学生時代何かを頑張るのは良いことだぞ?それにお前らまだ一年なんだから……」


部活を退部して、部活に入らない生徒はちらほらといる。

しかし、最初から部活に入らない生徒は少ない。

しかも二人。


「こいつと天体観測部をつくります、屋上の鍵ください」

三浦はヘラヘラと笑いながら言う。


「渡せるかぁ!だいたい二人じゃ部として認められないぞ」


そりゃそうだ。

二人で良いなら、演劇部だってあんなに必死に勧誘してないだろう。


「まぁ入らないのは自由だからな!」

田辺先生はふーっと一息つき、背筋を伸ばす。

「ただ、部活に入らない者は一ヶ月に一度学校周りのゴミ掃除とか、奉仕活動を行ってもらうことになってるからな」


まぁそれくらいなら。

「はい、わかりました」

「えー……」


三浦はめんどくさそうにぶーたれてる。

それでも部活には入りたくないらしい。


-四月末・教室昼休み・相沢透-

この高校では昼食は自分で用意する、もしくは学食へ行くどちらかだ。


学食はめちゃくちゃ混む。

なので俺は、親から昼食代としてもらう五百円のうち、二百五十円でコンビニのパンを買っている。

残りは貯金。わずかだが、高校生には貴重な小遣いだ。


正直言って俺には友達がいない。

クラスメイトと軽口を叩ける程度には絡めるが。

放課後遊びに行くような友達は、高校に入ってからはいなかった。


そんな俺だ。

席から動くのも面倒で高校に入ってから、ずっと自分の席で食事をしていた。

そして三浦も自分の席で食べる。


そうなれば食事中は、三浦と話す。

「相沢、彼女とかできた?」

もう四月の末になる、彼女どころか放課後遊ぶ友達もいなかった。

「全然だよ、お前はどうなんだよ」


「はっ!ある訳ないだろ!」

なんで自信満々なんだ。

そんな俺たちの横に珍しく人が座る。


「一緒に食べて良い?」


吉田さんだ。

吉田さんはいつも美術部と演劇部のメンバーと食事をしている。

「どうしたの?珍しく」


「いやー。今日は少し……ね」

吉田さんの歯切れが悪い。


「もしかしてイジメとか?女だらけ怖いし」

三浦が小声で呟く。


「ち……違うよ!今日は相沢君に用があって!」

俺に用?


「二人って付き合ったりしてる?」


「付き合うって三浦と?」

吉田さんはこくりと頷く。


「違うぞ、ただ二人とも席で昼飯食ってるだけだ」

三浦が答える。


「そっか!良かった!」

良かった?

「じゃあ相沢君、放課後少し時間ある?」

「話したいことがあって」


「まぁあるけど」


「ちょっと教室残ってもらってて良い?二人で話したくて」


「わかった」

二人で話したいってこれ……。


吉田さんは足早に元の席へ戻っていった。

その周りの女子たちが、少しざわついている。


三浦が俺に耳打ちした。

「……これって、告白じゃね?」


-放課後・相沢透-


教室に残れと言われたから残ったが、まだ結構な人がいた。


窓越しに陸上部を眺める。

頑張ってるな〜。


肩をトントンと叩かれた。

振り返ると吉田さんが少し困り顔で立っていた。

「人多いね、別の場所にしようか」


「わかった」


-非常階段下・相沢透-

この高校には体育館の横に非常階段がついている。

ほとんどの生徒は行こうとしない限りは、行くことのないそんな場所。


誰も来ない、秘密の話をするならもってこいだ。


「話なんだけど」

吉田さんはもじもじと話し始める。

「わ!私と付き合ってください!」


意外だった。

何故ならほとんど話したことないから……。

「え?なんで?」


「え!?」


あ、理由を聞いただけのつもりが、驚かせてしまった。

「あ!嫌とかじゃなくてさ」

「あんまり関わりとかなかったからさ」


「実は中学の時から、一目惚れで」

「最近話すようになったでしょ?それでって感じ……」

「あまり男子得意じゃないから!結構勇気出して話しかけてたんだよ!」


確かに、吉田さんが他の男子と話しているところはあまり見ない。


本当に勇気を出して告白してくれたんだろう。

どんな女の子でもそう思ってくれるのは嬉しい。


「そうだったんだ」


「返事とかって貰えたりするかな?」


正直、吉田さんのことは好きじゃない。

可愛いとも思えない。

ただなんとなく、告白した勇気を無下にも出来ないなと思ってしまった。


「ありがとう、じゃあよろしくお願いします」


俺は吉田さんと付き合うことにした。


「ありがとう!」

「私これから部活あるから!また明日ね!」

パァっと明るく手を振る吉田さんを見送った。


これが俺の高校入ってから初めての彼女。


来る者拒まず。

そんな告白の受け方だった。


-夜自室・相沢透-


ぴこん。スマホの通知音が鳴った。

メッセージも通話もできるアプリ、○インだ。

既読というのは妙に緊張してしまう。


速すぎれば、暇人と思われるし、遅いと失礼にあたる。

まぁ今日ばかりはいいか。

メッセージは吉田さんからだった。


「今日はありがとう!まだ実感が全然ないや!」


「いいえ!こちらこそよろしくね!」

メッセージは相手のテンションに合わせるのが俺流だ。


「あのさ?明日から透って呼んでもいい?」


「いいよ!俺も綾香って呼んでいいかな?」


「ありがとう!綾香だと嬉しい!」


「わかった!じゃあまた明日ね!」


「じゃあまた明日!学校で!」


-翌日・教室・相沢透-

後ろの席の三浦が背中をつついてくる。

「昨日結局なんだったんだよ?」


新学期早々大して知りもしない女子と付き合うなんて。

三浦に軽いと思われそうで、報告するのは気が引けた。


つん。つん。つん。

こいつ、答えるまでやめない気かな?


そんな事を思っていると綾香が話しかけにくる。

「透!おはよう!」

今まで見たことがないくらい、元気いっぱいだ。


「おはよう、綾香」


「……透?」

名前で呼び合う違和感に三浦が気づく。

「なんで名前で?」


綾香が三浦に答える。

「私達付き合うことになったから、よろしくね」

少し圧を感じる。


綾香は三浦を意識してる。

確かに少し話しすぎかもしれない。


その一言に固まってた三浦が動き出す。

「そうか!良かったじゃん!二人とも。大丈夫!取ったりとか、全然そんなないから!席が前なだけだから……」


綾香は安心したように頷くと、今度は俺をみた。

「まぁそれなら安心だけど。そうだ!透。昼ごはん一緒に食べない?落ち着いた場所で!」


正直、席から動きたくない。

でも、交際初日から断るわけにもいかないだろう。

「わかった」

授業開始の予鈴が鳴る。


綾香の席は俺たちの少し後ろ。

三浦と話すのは少し控えよう。

恋人が出来たんだから、彼女を不安にさせるようなことはきっと良くない。


-昼食グラウンド入口・吉田綾香-

はじめて私に彼氏が出来た!

今日は二人でお昼ご飯!

三浦さんを置いて、グラウンドと校舎の間コンクリートのところで透と並んで座る。


「透はいつもパンなの?」


「そう、昼飯代五百円」


「そのパン五百円もしなくない?」


「半分使って半分貯めてるのよ」

「その方がデート行く時とかの足しになるでしょ」


「……嬉しい」

透はイケメンだ。みんなに自慢できる。

そんな彼氏。

「私、彼氏とか初めてだから、まだよく分からなくて」


「俺も高校入ってから初めてだよ」


嬉しくてたまらず、私は透にハグをした。

急だったかな?そんな不安を消すように。

透は優しくぎゅっとしてくれた。


「ありがとう」

初めての彼氏に胸が躍る。


ざっざっざっ。

いつも昼食を食べてるみんながやってきた。

ハグをみられるのは恥ずかしい。


サッと透から離れてしまう。


「あやかー!本当に彼氏出来たんだね!しかもめっちゃイケメン!」

「綾香をよろしくね!」


わちゃわちゃと5人から質問を受ける透。

「キスとかした!?」

「放課後会うの!?」


昨日付き合ったばかりなのだから、そういう話はまだなのに……。

でもみんなが騒ぐ姿を見るのはとっても嬉しかった。

私達が話題の中心。

「昨日付き合ったばかりだから、まだなんにもしてないよ」

透が爽やかに答える。


「まだだって!きゃー!!」

みんなは黄色い声をあげて騒いだ。


「もー。やめてよー」

恥ずかしいなぁ!


そんな中、一人だけテンションの低い子がいた。

中村夏織(なかむらかおり)。演劇部の子だ。

ツンケンしていて、「私がいつも正しい」って感じの女子。


「かーおーりー!あんたもこっち来なよ!」


「いいよ。私は」


「なんでよー!綾香の彼氏だよ!気になるじゃん!」


「大体、まだ四月よ……。お互いのことなんにも分からないのに付き合うなんて」


夏織は小声でつぶやいた。

空気読めねー。


「じゃあ、これから知って行くとかじゃダメかな?」


透がそう呟くと、みんなはまた騒ぎ始める。

「キャー!!これからだって!」

透は気まずくなりかけた空気まで、和らげてくれた。

そんな事もしてくれるんだ……。


こんな優しい彼氏と付き合えてる。

私は少し自信がついた。


-放課後・相沢透-


今日は綾香と下校する。

綾香は電車通学、俺は自転車通学だ。

一緒に帰ると言っても駅まで送るだけ。


部活が終わるまでの間、図書室で暇を潰す。


あれ?

図書室に向かう途中昼間みた女子が視聴覚室の前にいた。


「あ」

「あ」


向こうもこっちに気づいたようだ。

てくてくと、こちらへ歩いてくる。


「ごめんなさい。さっきはあんな事言って」


意外だった、この人さっきのやり取りで謝るんだ。

「曲がったことが嫌いだから、少し不純に感じちゃって」


流石、曲がったことが嫌いと言うだけあって謝罪してくる。

美人だなぁ。


「大丈夫、気にしてないから」

気にはしてないが、あの場であの発言はないだろう、とも思った。


「ありがとう、じゃああんまり話すと綾香に悪いから」

そう言うと彼女は視聴覚室へと入って行った。


曲がったことが「嫌い」か。

適当な気持ちで付き合っていた、そんな自分に刺さる言葉だった。


バタバタバタっ!

後ろから誰かが走ってくる。


「相沢!おはよう!今一緒にいたのは中村さんだな!」

石川だった。

「廊下は走るなよ、ってなんで知ってるんだ?」


「知ってるも何も、同じクラスだからな!中村夏織さん!演劇部だ!」


なるほど。

石川と同じクラスだったのか。


「珍しい組み合わせだな!陸上部の相沢と、演劇部の中村さん!」


「待て待て。俺は陸上部に入った覚えはないぞ」


「未所属だろう!なら、勧誘のチャンスはある!」

目の前で言うなよ。


「では!また!」

そう言うと石川は走って行ってしまった。


-校門前・相沢透-

きーんこーんかーんこーん。

最終下校の鐘が鳴る。


「お待たせ!」

綾香は少し息を上げながら走ってきた。


「大丈夫待ってないよ」

綾香を安心させようとにこりと笑う。


少し照れるように俯く綾香。

素直に好意を受け取ってくれるところは可愛らしい。

「でも本当にいいの?駅まで送ってもらっちゃって」


「大丈夫。帰宅部でやることもないし」


「ありがとう」


夕日を背に歩いていると、ドタドタとまた石川が走ってきた。

「相沢!今日はよく会うな!帰り道はこっちじゃないはずだが?」


綾香がサッと俺の背中に隠れる。

「ちょっと用があってな」

石川が怖いのか?確かにでかいが……。


「あれ?後ろにいるのは女の子か!これは邪魔をした!それでは!」


まるで嵐だ。

どひゅーんといった、効果音が聞こえた気がした。


しばらくして、綾香が顔をだす。

「もしかして石川苦手?」

確かにデカくてガタイもいいが……。


「いや!石川君だからって訳じゃなくて」

「男子がね……」

「今までのグループ他の女の子は結構男子からも話しかけられてるんだけど、私にはあんまりって感じでさ」


要するに他の女子はモテるのに、自分にはこなかったという訳ね。

それで変に距離を取るようになった。

あらかたそんなとこだろう。


綾香は少し卑屈なところがある。


「俺は大丈夫?」

答えの決まっている質問は心地が良い。


「大丈夫だよ!」


「なら、それで良いかな」

嬉しそうに微笑む、綾香。


よくもまぁこんなセリフを吐けるなと、自分を褒めてしまう。


駅前に着く。

「ありがとう。ここまで送ってくれて」


「いいえ。それじゃあまた明日」


もじもじと綾香が手を出す。

「手」

「握ってもらえる?」


差し出された手をそっと握る。

「自転車押してると握れないからさ!また明日ね!」


手を離し、ピッと改札を通り走って行く綾香。


さっきまで握っていた手を眺める。

とても恋人らしい。

前の失恋とは大違いだ。


そんな事を思い自転車に乗り帰宅する。


-帰り道・相沢透-

自転車を漕いでると見覚えのある猫背のショートカットの女子がとぼとぼと歩いてる。


三浦だ。

「みうらー!」


「あれ?相沢?」


「遅いから家まで送るよ」

自転車を降り、三浦の隣に並んだ。


「大丈夫だよ。彼女に悪いから……」


今まであんなに話してたのに急に話さなくなるのは失礼だと、俺の中で思っていた。

「ごめん恋人できた事、話すの遅れて。でも本当に昨日の事だったから説明できなくて……」


「大丈夫だよ。でも急に話さなくなるのは寂しいぞ」


「ごめん、でもお前も恋人が異性と話してたら嫌だろ?」


「……まぁそうだけどさ」


無言の帰り道。

いつもならここで二手に分かれるが家まで送るといったから最後まで。

そんな事を考えていた時だった。


「ありがとう!お前こっちじゃないだろ!」

「もう近いから一人で大丈夫だよ」


「そうか」


「気にするな!急だったから少し寂しかっただけだ!彼女と仲良くな!」


「ありがと」

俺がそう返事すると、三浦は分かれ道を一人で曲がって行った。

とぼとぼと歩く三浦の背中を見送る。

少しの罪悪感が俺にはあった。


-教室ロングホームルーム・相沢透-


しばらくは、そんな恋人生活を過ごしていた。

「相沢!俺にも春が欲しい!」


「まだ、春だぞ」

こいつの名前は坂本太一。

剣道部に所属している、良いやつだ。


「次のホームルーム、遠足の班決めだぜ!ここで俺は春を掴む!一緒に班を組もう!」



「はいはい」


遠足ではハイキングをしてキャンプ場でカレーを作る。

言わば新入生同士の親睦会のようなものだ。


班は男女二人ずつ、四人一組。

まずは同性同士でペアを組む。

俺は坂本と組んだ。


「それじゃあペアができたら席に着けー」

田辺先生が指示をする。


ペア決めとなり三浦が後ろでぶつくさとつぶやいている。


「親睦会とかいうならランダムで組ませてくれよ。て言うかこういうコミュ力が低い生徒にも配慮しろよ。五月なんて、グループ組んでるやつか余ってるやつの誰かしかいないだろ。しかもなんだよ二人ってせめて三人だろうがよ。三人なら二人グループに『すいやせん』的な感じで入れるのに二人はきついって仲良くないと組めないだろ」


呪いのようにぶつくさ言ってる三浦に綾香が話しかける。

「もしよかったら私と組まない?」


「ええ、ああ、でも」


「もう組んじゃった?」


「まだ……です」


「なら組まない?」

傍から見ても、言い方に少し嫌な感じがする。


「はい。お願いします……」

不思議な組み合わせだ。


そこが組むとなると……。

綾香が三浦を連れて、俺たちのところへ来た。

「私たちと一緒の班でもいい?」

「あぁ、大丈夫だよ」


「なんでだー!!」

坂本は激怒した。


あー言ってなかったなー……。

彼女がいること。


「なんでだよ!お前だけ抜け駆けしやがって!」


「ハハハッ」

坂本と目が合わないようにする。


「つうか!彼女いるならそう言ってくれよ!」

「これじゃあ俺だけピエロだよ!二人であの子気になってる?とかいろいろ語りたかったのによー!」


「お前遠足覚悟しろよ!全部聞くからな!ABC全部だぞ!」


「透!良かった!同じ班になれて!」

今はやめてくれ、坂本が憤死してしまう。


「と言うか!いつから付き合ってたんだよ!」


「せ、先週くらいかな?」

綾香はたじろぎながらもそう答える。


「え?相沢と吉田さん付き合ってたの?」

「いがーい」

坂本が騒ぐから知らなかった連中にまで、一気に広がる。

俺は知られても構わないが、綾香は照れくさそうだ。


「……。」

ざわめくクラスの中、三浦は狸寝入りを決め込んでいた。


嫌だよな、俺たちと一緒に遠足なんて。

……ごめん三浦。


-遠足・吉田綾香-

今日は遠足。

ハイキングの後に、キャンプ場でカレー作り。


「透……」

もじもじと手を差し出す。

透がその手を握ってくれる。


透の反対の手を坂本君が握る。

「なんか。こういうの初めて」

女声で話す坂本の手を透が思いっきり握る。

「痛ててて!」


「邪魔はするなよ」

そんなやりとりをみて微笑ましく思ってしまう。

「これは恋人同士の特権だよ。坂本君」


透と付き合って以来男子と話すことが苦じゃなくなった。

他の男子と比べれば透は間違いなく『上』だ。


「いいなぁ!俺も手を繋ぎたい!三浦もこんなに見せつけてって思ってるだろ!」


「……。」

三浦さんは目を伏せ視線を外す。


「無視……だと……」

ショックを受ける坂本君。

騒ぎすぎて引かれてると思ったのか坂本は少し静かになった。


透が私と付き合ってから三浦さんは誰とも話さなくなった。

元から透以外の人と話してるところはあまり見たことがない。


私は手を繋ぎ見せつけるように歩く。


ハイキングも終わりカレー作りだ。


「手繋いでお熱いね!」


「やめてよ。渡辺くん」

笑いながらクラスメイトの男子を叩く。

あぁ、なんて心地いいんだろう。

クラスの男子が話しかけてくれる。

そんな私にはイケメンの彼氏、なんて優越感。


「透ー!」

手を振りながら透の元へ走る。


「最近クラスメイトと話すようになったね」

そう言うと透は、少しだけ微笑んだ。


「みんなにバレてから色々と聞かれてて」


良し私もカレー作ろう!そう思って食材を切ろうとすると、三浦さんがぶつくさ言いながら人参を切っていた。

「え?三浦さんなんでにんじん千切りにしてるの」


「心頭滅却心頭滅却」

トトトトトト。ぶつぶつ呟きながら一心不乱に包丁を動かす。


そんな三浦さんを横目に透に話しかける。

「良かった透と付き合えて。私なんだか変われた」


「俺も良かったよ」


「嬉しい」


トトトトトト。三浦さんはまだ千切りにしてる。

はぁ……。あの子邪魔だなぁ。


肝心のカレーはちゃんと美味しかった。


-翌日下校時刻校門前・相沢透-


校門で、美術の活動を終えた綾香を待つ。


駆けてくる綾香。

「ありがとう!待っててくれて!」


いつも通り。

二人の帰り道。

しかしその日は少し違った。

「綾香ー!」

同じ美術部グループの女子が手を振る。

珍しく男子も混ざってる。

どうやらバスケ部のメンバーらしい。


「綾香!彼氏さんも一緒なんだ!良ければ駅まで一緒に行かない?」

活発そうな女子が声をかけてくる。


俺の顔をみる綾香。

俺はこくりと頷く。


綾香は答える。

「いいよ一緒に帰ろう」


その後の帰り道は正直楽しくはなかった。

もともと、大人数で行動するのは好きじゃない。


「へーじゃあ吉田から告白したんだ」

何気ない会話、彼女を吉田と呼ぶ男子。

悪い事なんて何にもない。


駅に着く。


「ありがとう。みんなと一緒だったからあまり話せなかったね」


「大丈夫だよ」

いつも通り最後に手をにぎる綾香。


「また明日ね!大好きだよ!」

にこにこしながらホームへ向かう綾香。


遠足が終わってからと言うもの。


確かに綾香は明るくなった。他の男子と冗談を言い合い。

気軽に肩を叩く。


俺は三浦と話すのを控えているのに。

綾香は、他の男子と楽しそうに笑っている。


俺だけ気を使ってるのも少しバカバカしく思えてきてしまっていた。


-昼食・相沢透-

そんな帰り道から数日経った昼食。


いつもの場所に綾香は来ない。

パンの包みを開け、食べ始める俺。

付き合ってから、なんとなくここで食べるようになっただけだ。毎日一緒に食べようと約束したわけじゃない。


しばらくすると、綾香が駆けてきた。

「ごめん!遅れて!渡辺君達と少し話してて!」


……。

ああ、こいつはもうダメだな。

俺の中でなにかが終わる感覚があった。


「大丈夫だよ。先食べちゃってごめん」

いつも通りの笑顔を彼女に向ける。


はぁ……。

俺なりに、吉田さんが喜ぶように行動していたつもりだった。

しかし当の本人は、この様子だ。

変わってほしいと伝える気にもなれなかった。そんなことを求めるのは厚かましい、と自分に言い訳した。


-翌日学校昼休み・相沢透-


綾香を取り囲む女子の群れ。


久しぶりに自分の席で食事をとる俺。

つんつん。

なんか久しぶりに三浦につつかれた気がする。


「どうした?」


「どうした?ってお前の彼女なんか泣いてるみたいだぞ」

こそこそと三浦が小声で話しかけてくる。


「……さっき振ったから」


「え?」

三浦は驚く。

「振ったって!?あんなに仲よかったのに」

あわあわしてる三浦。


「まあ、色々思うところがあってさ」


「えぇ〜……」



-時は遡り少し前・相沢透-


ああ、だるいな。わざわざグラウンドまで出て食べるのも面倒くさい。

なら今言ってしまうか。


トントンと友達と話している綾香の肩を叩く。

「どうしたの透?お昼もう少ししたら行くから待っててね」


「……いや、俺たち別れよう?」


「……え?」

訳が分からないと言ったようだった。

「どうして急に?」


「まあ、色々思うところがあってさ」


「ちょっと待ってよ、透。私嫌だよ」


「今はやめとこう。後で落ち着いた時に」

そう言って、話を続けようとする綾香を半ば無視し、自分の席に戻った。


-そして今に至る・相沢透-


「えぇ〜……」

説明を終えると三浦本日二度目のドン引き。

「じゃあお前昼飯食いたくて彼女放置して今パン食ってんのか?」


「そういうわけじゃないけど」


「じゃあなんでさっき言ったんよ!もうちょいタイミング選べよ!」

久しぶりの三浦のツッコミだ!心地いい。

そんな綾香に続々と人が集まる。


あらあら。

こんなに人が集まってくるとは思わなかった。

三浦の言う通りタイミングは、ずらすべきだったか。


そんな中キリッとした表情の女子がこちらに向かって歩いてくる。

中村夏織だ。

「ねぇ相沢」

視線が鋭い、怖えぇ。


隣で三浦が「ひぃ……」と声を漏らした。

やめてやれよ。三浦まで怖がってるだろ。


「放課後話あるんだけどいいかな」


「まぁ大丈夫」

綾香ではなく、その友達が来るとは想定外だったがまぁいいだろう。


「少し話が聞きたいだけだから」


「わかった」


あーあ、学校内で振るのはリスクが高いな。

まさかこんな騒ぎになるとは。


-非常階段下・中村夏織-

私自身、綾香のことは嫌いだ。


でも、相沢はあんなこと言ってた癖にすぐ別れるとか。

しかも、昼休みに振るなんて……。

一言言わないと気が済まない。


「話ってなに?」

相沢は面倒そうに聞いてくる。


「綾香のことなんで振ったの?理由なんにも聞いてないって言ってたよ」


「話したところでどうしようもないよ」

あくまでこの男は話したくないらしい。


「私には別に言わなくていいよ。ただちゃんと告白受けたんだからそれくらいの責任はあるんじゃないの?」


「責任ね……。中村さん?でいい?」


「いいけど」


「最近の綾香をみてどう思う?」


最近の綾香……。

「私は明るくなったと思うけど……?」

調子に乗ってるというか、ウザいというか。


「彼氏がいるのに別の男子と話して明るくなった?」

そう言われると最近の綾香は不純だった。

急に明るくなって、彼氏がいるのに男子とつるみ始めた。


「それに」と相沢は続けた。

「後ろの席に三浦って女子がいてさ。俺、そいつと幼馴染なんだ。あいつ、俺たちに気を遣ってくれてさ」

「遠足も同じ班なのに、俺と距離を置いてくれて」


「その子の事、好きなの?」

まさか、その子が好きなのに綾香の告白を受けたの?


「違う。三浦は、俺の彼女に悪いと思って距離を置いてくれたんだ」

「それなのに綾香は、他の男子と楽しそうに話してる……」


「綾香は気をつかえてないって?」


「そうかも」


「でもそれくらいなら綾香に話せば」


「そうだね。でも冷めちゃった」


「そんな自分勝手な……」


「そうだよ。自分勝手だ」

「でも綾香にそれを押し付けるのはもっと違うだろ?だから別れたかった」


「じゃあ。もし綾香が他の男子と話さなかったらまた付き合えるってこと?」


「いや、もうそういう人なんだなって見えちゃうからさ……」


どうしたものか。

相沢に話を聞いてくると綾香に伝えたが、これでは綾香になんて言えば良いのだろう。


「でも、あんなに仲よさそうだったじゃん」


「合わせてただけだよ、本心じゃない」


この男は結局、綾香のことを好きではなかったのかもしれない。

「好きじゃなかったの?」


「うーん……。告白されたから好きになろうとしてた」

「そんな感じかな……?」


……。

でも無責任だ。

説明を放棄して。


でも綾香程度でも付き合える……それなら。


「わかった」

「私は別にどっちの味方ってわけでもないから」

「相沢のこと悪く言おうとかも思わない。ただ理由が知りたかっただけだから」


「別に、なんて話しても気にしないよ」

相沢は「それじゃあ」と帰ってしまった。


男子と話さない。それくらいなら、私にもできる。


-夜自室・中村夏織-

私だって恋人とかに興味がない訳ではない。

だから綾香の問題に首を突っ込んだ。


だけど、男子なんてどうせ不誠実で不純で。

そんなふうに思っていた。でも、綾香の彼氏は少し違った。


彼女を好きにはなれなかった。それでも、付き合ったからには喜ばせようと頑張っていたのだろう。


綾香から電話がかかってきた。

「もしもし、透なんて言ってた?」


「その前にいくつか質問してもいい?」

綾香が本当に気つかいできずに相沢を傷つけていたか確かめたい。

「三浦さん?ってわかる?」


「透の幼馴染だよね」


「あの子どんな子?」


「私苦手なのよね」


「なんで?」


「彼氏の幼馴染がそばにいるって結構不安にならない?」


「まぁそうかも知れないけど……」


「だから念のため遠足の時見せつけるつもりで同じ班に誘ったの」


え?


「なんでそんなことを?」


「だって幼馴染にべたべたされたら彼女としては結構キツくない?」

「まぁ付き合ってるの分かってからはあんまり話してるところ見たことないけど」


綾香は、自分が不安だったことを理由に、三浦さんを傷つけたことまで正当化している。


「もしかして透、三浦のこと好きって?」

見当外れな問いに呆れてくる。


「違うけど……。もう一つ最近なんで他の男子と話すようになったの?」


「なんか私、透と付き合ってるんだって思ったら。他の男子も怖くないような気がしてさ」

「少し苦手が取れたっていうか。でも!そんなにたくさん話してるわけじゃないよ!」


相沢は異性との会話を減らしていた。

実際に三浦さんとも話していないみたいだし。


一方で、綾香が異性と話す機会は増えていた。


最初に相沢に会った時不純だと言ったが。

本当に不純なのは綾香のような気がしてたまらない。


「なんで、三浦さんと相沢には話してほしくないのに綾香は他の男子と話すの?」


「他の男子って言っても透と比べて全然イケテないじゃん。透はあんな人達に嫉妬しないよ」


あぁここでわかった。

綾香は、自分が嫉妬するかどうかで考えている。

相沢は、恋人のために何を控えるかを見ている。

少なくとも、私にはそう思えた


だから二人はすれ違ってる。


もし私なら彼氏がいるのに異性とべらべら話すなんて、そんなことはしない。


「で透はなんて言ってたの?」


「相沢は……。他の男子とたくさん話されるのは嫌って言ってたよ」


「え?そういうこと?私が男子と話しはじめたから別れるって?」


うーん……。

伝え方が難しい。

単純に男性と話すことが直接的な原因ではない気がする。

相沢が綾香本人に伝えていないのだから、分かるはずもない。


「それだけじゃない。ごめんうまく伝えられない……」

「明日時間ある?もし行けたら相沢と私と綾香の三人で話してみない?」

「外野がいる方がまとまりやすいでしょ?」


本当に綾香は酷い。

自己中心的で、今も他人を見下して。


それでも、友達が理不尽に振られたのなら、その彼氏に一言言ってやるべきだと思っていた。

それが正しいことなんだと。


そんな事を思ってたはずなのに。


相沢という男に少し惹かれている自分がいた。


-次の日・放課後非常階段下・中村夏織-


相沢は、帰ろうとしていたところを捕まえた。

そして三人で話すことをあっさり了承した。


非常階段下へ移動する。


綾香もいる。

「透、なんで別れたいの?」


「ごめん。別に綾香が悪いとかそういう訳じゃないんだ」


「それだけじゃ分からない……」

綾香はまた泣き出しそうだ。


「相沢は綾香にどうして欲しいの」

回りくどい言い方はやめてどうして欲しいのか直接言ってあげれば納得もいくだろう。


「どうしてって……別れたい」


綾香は目を手で覆ってしまう。

「ごめんなさい!もう男子とは話さない!だからだから……」


「うーん」

もうきっと相沢は綾香と付き合う気はないのだろう。


そもそも、相沢と綾香が釣り合っていたようには見えない。


部活の始まる時間だ。今日はここまでにするしかない。


「綾香そろそろ部活がはじまるから……」


「……わかった。透またね」


「またって……」


とぼとぼと部活に向かう綾香。


帰ろうとする相沢の手を掴んで引き留めた。

「ねぇ」


「何?」


「相沢はどんな人なら付き合うの?」


「どうだろう?ちゃんと恋人として気をつかってくれる人かな??」


「それは男子と話したりしない人?」


「今はそうなるね」


……。

それならきっと私にもできる。

綾香『程度』で付き合いはじめられるんなら、私でも。


[一話終]

登場人物まとめ

相沢透 主人公

身長165㎝ A型

帰宅部

好きなもの、RPG 甘いもの

嫌いなもの、特に無し


三浦梓 相沢の幼馴染

身長152㎝ A型

帰宅部

好きなもの、RPG 和菓子

嫌いなもの、群れてる女子

ワンポイント、実は合気道を習っていた


吉田綾香

身長158㎝ O型

美術部 相沢の高校初彼女

好きな人、相沢透

嫌いなもの、マウント取ってくる女子



中村夏織

身長163㎝ B型

演劇部

好きなもの、紅茶 努力

嫌いなもの、馴れ馴れしく話しかけてくる男子 パクチー


石川浩介

身長175㎝ AB型

陸上部

好きなもの、陸上 唐揚げ 勉強

嫌いなもの、雨

ワンポイント、運動神経抜群、実は頭もいい


坂本太一

身長168㎝ B型

剣道部

好きなもの、恋バナや噂話 

嫌いなもの、テスト

ワンポイント

自分ではモテないと思ってる、実は陰ながら坂本を好きな女子はちらほらといる

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