↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/4

冒険者ギルドと最初の準備

教会を後にした俺は、再び賑やかな中央通りを歩き、冒険者ギルドへと戻ってきた。

相変わらず酒場スペースには荒くれ者たちがたむろしていたが、一度来た場所ということもあり、先ほどほどの緊張感はない。俺はそのまま受付カウンターへと向かった。

「おかえりなさいませ。洗礼はお済みになりましたか?」

先ほど対応してくれた受付の女性職員が、丁寧な笑みで出迎えてくれる。

「はい、無事に終わりました」

俺は神父から受け取った、洗礼の証である羊皮紙のステータスプレートを提示した。女性職員はそれを受け取り、手元の魔導具らしき台座にかざしながら確認を進めていく。

「はい、確認いたしました。お名前はシンジ様ですね。……あら?」

羊皮紙の最下欄に目をとめた瞬間、女性職員の手がぴたりと止まった。

神父と同じように目を丸くし、プレートと俺の顔を交互に見比べる。

「あの……【容量・搬送力】の欄に【Error E】と表示されていますが……こんな表記、見たことがありません……」

困惑する彼女に、俺は神父から言われた通りの説明を口にした。

「あ、はい。神父様がおっしゃるには、あまりにも適性が低すぎて計測不能になり、エラーが出ただろう、とのことでした」

「神父様が……? なるほど、あまりに適性が低すぎるための誤作動、ですか……」

神父の判断だと聞いて納得したものの、女性職員はどこか痛々しいものを見るような、同情の混じった表情を浮かべた。

「見たこともない表示でしたので驚いてしまいましたが、神父様のご判断でしたら間違いありませんね。能力が皆無による測定エラーということで、この項目は最低評価として登録を進めさせていただきます」

そう言うと、彼女はカウンターの奥から金属製の小さなカードを取り出し、機械にセットした。カチリと静かな音が響き、一枚のカードが差し出される。

「こちらがシンジ様のギルドカードになります。冒険者としてのランクは最下級の【銅】となりますね」

受け取ったカードには、俺の名前と『銅ランク』の文字、そして『Error E』を含んだステータスが刻まれていた。これで晴れて、この世界の冒険者となったわけだ。

「登録が完了しましたので、続いて初心者向けのチュートリアル講義を受けていただきます。あちらの2階へ続く階段を上がって、右奥の講義室へお進みください。ちょうど間もなく本日の講義が始まります」

「分かりました。ありがとうございます」

指示された通りに階段を上がり、木製のドアを押して講義室に入ると、そこには俺と同じように今日登録したばかりと思われる若い冒険者が5、6人ほど座っていた。

「おう、最後の受講生か。空いている席に座れ」

教壇に立っていたのは、片目に眼帯をした傷だらけのベテラン風の男だった。冒険者らしい、醸し出す雰囲気が重い。俺は邪魔にならないよう後ろの席に静かに腰掛けた。

「よし、全員揃ったな。俺は講師のガルクだ。お前らのようなヒヨッコが初日でドブネズミの餌にならねえよう、冒険者の基礎の基礎を叩き込んでやる」

ガルクは黒板に大きな文字で『ランク』と書きつけた。

「まず、冒険者ランクについてだ。下から銅、鉄、銀、金、白金、ミスリル、オリハルコンの7段階に分かれている。お前ら銅ランクはただの『見習い』だ。受託できるのは街の中の雑用や、安全な街道沿いの素材採取程度。魔物退治の本格的な依頼を受けるには、実績を積んで鉄ランクに上がらねえとならん」

受講生たちがメモを取る中、ガルクは続いて『ダンジョン』と力強く書き足した。

「次にダンジョンについてだ。この街の近くにもある自然発生した地下迷宮――それがダンジョンだ。内部には無数の魔物が湧き、奥に進むほど強力になる。だが、魔物を倒せば『魔石』が得られ、ダンジョン内でしか手に入らん希少な素材や宝箱が存在する。まさに一攫千金の宝の山だ」

ガルクは懐から小さな布袋を取り出し、卓上にポーンと置いた。

「ダンジョンから魔石や素材を持ち帰るには、この『マジックバッグ』を使うことになる。ギルドでも手頃な値段で売ってる一般的な魔道具で、重さを無視して荷物を運べる優れもんだ。ただし中身の時間は普通に経過するから、ナマモノを入れる時は腐らせないよう気をつけろよ」

ガルクは布袋を指先で弾いた。

「ちなみに、このバッグに入れられる容量は、持ち主のステータスである【容量・搬送力】のランクによって変わる。だがまあ、普通に冒険する分には初期値で十分事足りる。わざわざ鍛えるような項目じゃねえ。もし容量が足りなけりゃ、荷物持ちの『ポーター』を雇えば済む話だからな」

そこまで一気に説明すると、ガルクは依頼の受け方やダンジョン内のマナーについての解説に移っていった。

ガルクの講義を聞きながら、シンジは自分のステータスを思い返していた。

(……俺の【容量・搬送力】は『Error E』だったな。女神様は『特別な運搬スキルをあげる』と言っていたけど、実際のところどうなんだ?)

神父は能力が低すぎてエラーが出たのだと言っていたが、女神の言葉が本当なら、何かしらの特別な恩恵があるはずだ。

それが具体的にどれほどの容量なのか。そしてなぜエラー扱いになったのか。

ガルクの講義は約一時間ほどで終了した。

「よし、講義は以上だ! あとは死なねぇように身の丈に合った依頼から始めろ!」

威勢の良い言葉とともに講義室の扉が開かれ、受講生たちがそれぞれ立ち上がっていく。

シンジも席を立ちながら、ポケットの中のギルドカードにそっと触れた。

(この『Error E』の真価を、一刻も早く誰の目にも触れない場所で確かめてみたいところだが……)

だが、その前にまずは生活の基盤を整えるのが先決だ。今日泊まる宿を確保し、冒険者として最低限の装備や道具を揃えなければならない。


いくらチートかもしれないスキルがあろうと、今日寝る場所も装備もなければ路頭に迷うだけだ。何をするにも、まずは金策と準備が先決である。


ズボンのポケットに手を入れると、指先にひんやりとした金属の感触があった。取り出してみると、見慣れぬ一枚のコイン――ずっしりとした重みのある金貨だった。

(異世界に来たときには何も持ってなかったはずだし……女神様のプレゼントか?)

だが、この世界での貨幣価値がまったくわからない。これをどこでどう使えばいいのかも不明だ。

シンジは先ほど対応してくれた受付の女性職員のもとへ戻り、手のひらの金貨をこっそり見せた。

「すみません、少し伺いたいのですが……この金貨って、どのくらいの価値があるんでしょうか?」

「あら? 見せていただけますか……まあ、これは『小金貨』ですね!」

受付職員は目を丸くしながら、声をひそめて教えてくれた。

「こちらの通貨で一万ゴールドに相当しますよ。大銀貨なら十枚分になります。駆け出しの冒険者様が最初に持つには十分すぎる額です」

「一万ゴールド……!」

ピンと来ていない俺の表情を見て察したのか、彼女は具体例を挙げてくれた。

「普通の食堂なら一食で三十ゴールドほどですから、かなり余裕を持った生活ができる金額ですね」

(一食が30ゴールド……前世の感覚で言えば、一万ゴールドはおよそ10万円相当ってところか。1ゴールドが10円前後の価値だな)

頭の中で換算し、想定以上の金額にシンジはホッと胸を撫で下ろした。

「もし最低限の装備をお探しでしたら、ギルド併設の売店で初心者用のセットが購入できますよ。軽装の防具一式にナイフ、腰につけられる小さめのポーチまで揃っています」

「本当ですか! ぜひ買いたいです」

「ふふ、かしこまりました。それらを購入しても、残ったお金で約1週間は近くの宿屋に泊まることができます。このギルドの裏手にある『木漏れ日亭』という宿が、安くてご飯も美味しく、新人の冒険者さんには特におすすめですよ」

「ありがとうございます! 助かりました」

さっそくギルドの売店で初心者用のナイフ、動きやすい軽装防具、そして拳3個分ほどの大きさのマジックポーチを一式買い揃えたシンジは、教えてもらった宿『木漏れ日亭』を目指すことにした。

当面の活動資金と生活費、そして最低限の装備が確保できたことで、強い安心感が湧いてくる。

(よし、まずは『木漏れ日亭』で1週間分の部屋を確保しよう。話はそれからだ)

購入した装備を身につけ、残りの小銭をマジックポーチに仕舞うと、シンジは冒険者としての最初の一歩を踏み出すべく冒険者ギルドを後にしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。