新生リリゴパノア編 1 〜っえ! 嘘でしょッ!?〜
『妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤ物語〜 #イセトラ』
タイトル回収が始まる新編です(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
「ゴクトーの奴、神代魔法の秘伝、亖を超え、
新たな伍を生み出そうとしてるのか?」
三柱が下界を眺める中、つぶやくトランザニヤの黒銀の目が閃く。
その言葉に神シロが「まさか!」と驚愕の声を上げる一方で、
女神東雲がさりげなく漏らす。
「本人も気づかないうちにーー偉大な始祖の血がそうさせるのですわ」
ーーその頃、模擬戦も終わり、
ギルド支部長に呼び出されたゴクトーは、
ボロボロな鍛錬場兼闘技場の有様に困っていた。
◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇
「ダー様、ハウゼン支部長が待ってますよ」
場が静まる中、アカリが冷静な口調で俺の肩にそっと手を置く。
「ああ、そうだったな……」
俺の言葉に一同が出る準備を始めた。
師団長たちのテントの片付けを仲間たちが手伝っている。
その光景に目を細めながらも大和式テントを畳む。
破損した鍛錬場兼闘技場の壁や床に目を落とし、
「どうする?これッ!」と自身に突っ込む俺は、あることを思いつく。
「みんな聞いてくれッ! この鍛錬場兼闘技場の修理を行う。
このままじゃまずいからな……
みんな、今から見ることは、あくまで俺の妄想ーー
実はそれが現実にできるんだ。
これから見ることはーー仲間内だけの秘密にしてくれッ! 頼むっ!」
そう言って仲間たちの様子を窺う。
ポカンと口を開けるイブと師団長たち。
アマゾネスのエリナ姉妹も同じ反応。
一方で、仲間たちは、クスッとした笑い声を漏らす。
どうやら仲間たちは、とっくに気づいていたみたいだ。
その表情には、秘匿を明かした俺をどこか揶揄うようにも見える。
そんな中、ポカンとしていたイブが口を動かす。
「殿、いきなり何を言い出すかと思えば、
そんな夢や幻のようなことーー
錬金術師が5人がかりでも、修理は難しいこの状況……。
ドワーフでも連れてくるのかぇ?
それとも何か、特別な魔法でも、お使いなさるのか?」
そう言ってイブが小刀を閃かせる。どこか喧嘩腰だ。
師団長たちも顔を見合わせ、首を傾げる。
一方のエリナとアマゾネスの姉妹たちも、不思議そうな顔で俺を見ていた。
「見た方が早いな。まぁ……初めての試みだから
うまくいくかやってみないと……」
一同にうまく説明できない俺は、胸中で命を下す。
『――来い、No.06。俺の妄想を現実に刻め。青銅のトライアングル!』
その瞬間、意識がズズズ、と深層へと潜り込む。
『妄想図鑑』がパァと輝き出し、ページがパラパラと捲られる。
次の瞬間ーー視界が青銅色の光に染まり、地面が微かに震えだした。
「え……っ、大地が……鳴ってる?」
イブが足元を気にして腰を落とす。
師団長たちが武器に手をかけ、緊張感が走る。
だが、俺の意識はすでに図鑑のページの中にあった。
――ガチャリ。
金属音が一つ、乾いた音を立てて響く。
鍛錬場の中心、闘技場の破損した壁の目の前に、
空間を切り裂くようにしてーーソレが顕現した。
「な、なによアレ……!?」
誰かの驚愕が混じった声が聞こえる。
現れたのは、巨大な青銅の装甲を纏った、
獣のようなフォルムの異形――青銅のトライアングル。
鋭利なスパイクが陽光を反射し、三角形のコアが鈍い光を放っている。
その胸元のフェイスプレートがカシャリと音を立てて回転し、
正面に向けられると、無機質な『笑う口』が浮かび上がった。
「――っ!?」
イブが息を呑んで後退る。無理もない。
この威圧感、この存在感。
だが、周囲の反応など知ったことではないとばかりに、
トライアングルが『泣きそうな目』をしたーー
フェイスプレートを破損した壁へと向ける。
『ガガガッ……防衛、および補修。 【オートリペア・コア】開始――』
低く、機械的な声が響く。
次の瞬間、
トライアングルの背中から伸びたスパイン(背羽)が複雑に展開し、
壁の亀裂へと光の粒子を流し込んだ。
砂礫が吸い込まれるように集まり、
強固な金属結合が壁を覆う。
まるで時を巻き戻すかのようにーー
瞬く間に壁が、そして崩れた床が、
元通り以上の頑強さを手に入れて復元されていく。
「っえ!嘘でしょ……。あの壁を、一瞬で……?」
師団長ガリが震える声で漏らす。
だが、俺の妄想はまだ終わらない。
壁が完璧に修復されると、トライアングルが満足げにーー
その装甲を鳴らし、今度は床のひび割れへと向かっていく。
「旦那、あれ、修復っていうか……要塞化してません?」
背後で『江戸っ子鼓動』が呆れたようなーー
しかし楽しげな声でツッコミを入れてくる。
確かに、壁には本来なかったはずの防御用スパイクが増設され、
以前より三倍は頑丈そうな見た目に仕上がっていた。
待て待て待て! 修理しろとは言ったけども……
何だあの物騒なスパイクは!?
「ま、まぁ、壊れにくいに越したことはないだろっ!
(頼むからもうやめてくれぇ!)」
俺は強引に笑って誤魔化すしかなかった。
イブがポカンと口を開けたまま、トライアングルと俺を交互に見ている。
「殿は……一体どれだけの秘密を隠し持っているのじゃ……?」
その困惑と驚きに満ちた表情を見て、俺は改めて思った。
これね? この癖を説明するのは、本当に骨が折れそうだな、と。
そんな中、修復が終わると、
「んじゃ、あっしらは、これでお暇します!」
そう言って『江戸っ子鼓動』が青銅のトライアングルを連れて、
顕現している『妄想図鑑』のページにスッと消えていった。
そしてーー妄想図鑑がパタンと自らページを閉じて、
目の前から陽炎のように霞み消えていく。
ーー静寂が、鍛錬場兼闘技場を支配した。
ギルドの鍛錬場を勝手に魔改造したら、
後で支部長にガチで怒られるの俺なんですけども!?
葛藤が心の中で湧き上がる中、
「ギギッ」た擦れるような金属音。
まるでトライアングルが笑ったように思えてならない。
先ほどまで青銅の輝きを放っていた空間には、
今や修復という名の過剰な防御装甲に覆われた壁と、
無骨なスパイクが突き出た床だけが残されている。
「……消えた」
イブが呆然と指さした先には、もう何もいない。
だが、その修復跡の頑丈さだけが、
今の出来事が幻ではなかったことを証明していた。
「な、なんなの今の術式……! 見たことも聞いたこともないわ。
それにあの装甲の密度、ただの修復術などとは呼べない……」
師団長のガリが、恐る恐る壁のスパイクに触れる。
その鋭利な金属質に、彼女はさらに言葉を失った。
イブが真っ赤な顔をして俺の前に立ちふさがる。
「ええい、殿! 隠し事をするにも程がありますぞぇ!」
その瞳には怒りというより、
呆れと隠しきれない好奇心が、入り混じっているようにも感じる。
「あれを戦術級魔法の類だとでも、言うつもりかのぅ?
……だとしたら、今の殿の魔力消費はどうなっとるんじゃ?
倒れるような真似は、せんで欲しいのじゃ!」
彼女の小言は、俺への心配の裏返しだ。
それを聞いて、アカリがクスクスと肩を震わせる。
「大丈夫よ、イブ。ダー様はこういう人なの。……ねえ、ダー様?」
「あ、ああ。悪い、説明は後だ。
今はハウゼン支部長が待ってるんだったな。
……おい、みんな!
鍛錬場兼闘技場は、これで三倍は頑丈になった。
これで存分に暴れても大丈夫だろう! ししし」
俺は照れ隠しに笑い飛ばし、足早にその場から離れた。
背後で、アマゾネスの姉妹たちが「今の術、すごい……!」
「あんな頑丈な壁、見たことがない!」などとーー
興奮気味で囁き合っているのが聞こえる。
「……骨が折れる、どころの話じゃねぇな」
俺は小さく漏らし、
胸の奥でまだ熱を帯びている『江戸っ子鼓動』にそっと語りかける。
なぁ、鼓動。次は、もうちょっとだけ、
目立たない方法にしてくれた方が、良いんだけども?
返事はない。
だが、微かな拍動が「へいへい!」と、どこか楽しげに鳴った気がした。
鍛錬場兼闘技場を後にする俺たちの背中を、
要塞化した壁が冷たく見守っているような気がして、
俺は冷や汗を拭いながら支部長室への道を急いだ。
鍛錬場兼闘技場を抜けて、隣にあるビヨンドのギルド支部へ向かう。
ーーギィィ…
アカリが支部の扉を開ける。
総勢約20名の大所帯。
その移動に視線が自然と集まる。
「おい、見ろよ。かなりの美人だぜ」
髭面の冒険者が隣の男の肩を叩く。
冒険者たちの囁きが次第に広がる中、視線も集まり、
ギルド支部内が騒つき始める。
「何だ何だ? スゲー人数だな……ゾロゾロと……」
「見てみろよ、あれは噂の……桃色姉妹じゃないか?」
目立つのはいつものことだが、今日はさらに人目を引く。
師団長たちが隊列を固めながら闊歩する中、
その後ろを歩く、エリナとアマゾネスの姉妹ーークラン『Goddess』。
涼やかな表情で歩く彼女たちに周囲からの声が漏れる。
「あの美女って、【七つの大罪】のエリナ・エイマスじゃないか?」
「なんて綺麗なんだべ」
「あの美女たちって、顔が似てるよな」
「知らねぇのかよ! 『Goddess』って言って、美人姉妹クランだぞ!」
「きっと、何かの依頼でしょうよ。私らには関係ないわ!」
パーティ内で、言い争いまで起きる始末。
さらに後方では、ミーアとクロニクが笑いながら並んで歩いていた。
二人が仲良く並んで歩く姿はどこか微笑ましい。
殿をつとめる俺の横ではミリネアが優雅に闊歩する。
冒険者たちの興奮と喧騒に耐えかねたのか、ミリネアが鞭を掴む。
「ミリネア。 鞭はやめとけ、目立ちすぎる」
俺の手がミリネアの肩に触れた瞬間、彼女の視線が鋭さを失った。
「……ふん。見逃してやりますわ。今日は、ね」
その瞳の奥には、怒りがほんのり混じっていた。
すぐにミリネアが落ち着きを取り戻し、甘えるように俺に寄り添う。
周囲の騒つきが収まると同時に、受付前に到着。
受付嬢が慌てた様子で応接室へ案内する。
トントントン
「リリゴパノアの皆さんが、いらっしゃいました」
「ああ、入ってくれ」
応接室の奥から野太い声が返ってくる。
受付嬢が軽く一礼し、急いで持ち場に戻っていった。
ガチャ
「失礼します」
「どうぞ」
アカリを先頭に俺たちは応接室へと足を踏み入れた。
イブや師団長たち、エリナとアマゾネスの妹たちにも遠慮してもらい、
ここで待機してもらった。
部屋に入った瞬間、ワインの芳醇かつフルーティーな香りが鼻をくすぐる。
「香りん、出るなッ!」と胸中に沈める俺を他所に、
笑顔を見せるハウゼン支部長も出迎えてくれた。
一方で額に皺を刻んだ男が、派手なローブを纏い立っていた。
恰幅の良い体躯にグレーの頭髪、立派な顎鬚が目を惹く。
従僕や側仕えの侍女まで連れているーー
高貴な貴族なのは、間違いない。
俺と目が合うと顎鬚を撫でつけ、目尻を下げる。
以前、『キヌギス砦』の一件で、
『宿屋帰巣』の女将さんと話していた『お偉いさん』ーーあの御仁だ。
貴人たる威厳を見せながら、その御仁が口を開く。
「イイダル・コス・ハルツーム叔父上より、私有地を授かった……
君がリリゴパノアのリーダーかね?」
ふんわりとした視線で、言葉を続ける。
「貴殿がゴクトー君かね? 確か八咫鴉と言ったかな……」
「ははははは」
苦笑をしながらも、ハウゼン支部長がキリッと口元を締める。
「シモンヌ卿、そうです。このリリゴパノアのリーダー、
こちらがゴクトー君ですよ。さあ、皆さんもどうぞお掛けください」
「そうであったか。すまん、改めて名乗らせてもらおう。
吾輩はシモンヌ・コス・ハルツームだ」
俺は手を差し出し、その御仁ーーシモンヌ卿と握手を交わした。
「ゴクトーだ」
シモンヌ卿が柔らかな笑みを浮かべたまま席を促し、
俺たちはソファに腰を下ろした。
場の緊張が少しほぐれたのを察してか、シモンヌ卿が紡ぎ出す。
「さて、叔父上にせっつかれてな……
土地の権利証と、それに関する書類一式を持参した。
この書類にリーダーのサインを頼む。
どうしても君のサインが必要だと、叔父上がやかましくてな」
その厚い書類束を見て、俺は眉をしかめた。
「それは構わないが……これはパーティ全員に与えられたものだろ?
俺一人が、どうこうするものじゃない」
その言葉を受け、シモンヌ卿が困惑しながら顎鬚を撫でる。
「好きにして良いと言われておる。
ただし、土地の所有者としては、
リーダーである君の名前で登録して欲しい。
でないと……吾輩が叔父上に叱責されてしまうのだ」
「つまり、土地はくれるけど、わけ方は俺次第ってことか?」
「その通りだ」
そう言ってシモンヌ卿が、書類を指でトントンと揃え、
俺の目の前に置いた。
一同が固唾を飲み見守る中、
アカリが静かな口調で割り込んだ。
「ダー様、お待ちください」
その声には冷静な鋭さがあった。
「いただく土地の場所や規模をまず、確認してからサインしても……
土地は恩恵でもあり、時として『足枷』にもなります。ご注意を……」
確かにその通りだ。
どんな土地かもわからないまま、受け取るのは少し不安だ。
「その通りだな。すまん、吾輩の不手際だ」
シモンヌ卿が苦笑しつつ、鞄から巻物のような地図を取り出した。
バァッ
「これが地図だ。印を付けた場所が、今回贈与する土地になる」
俺たちは一斉に地図を覗き込んだ。
ゴクリと誰かの喉が鳴った。
「ここの土地だ。昔からハルツーム家が代々受け継いできた私有地でな……
『タザ』の城下街には近いんだが……
小さな村がひとつある程度の土地だ。税収もほとんど期待できん」
そう言いながら地図を指差す卿だが、
微妙な言葉とは裏腹にその範囲は驚くほど広い。
「広さはざっと1000EKZしかないがな」
こともなげに落とすその言葉に、俺が尋ねる。
「1000EKZ? それってどれくらいなんだ?」
「ふむ、そうだな……ハゴネ地方の山が三つか四つ分の広さだ」
「「「「「 ええええええええぇっ!!!!!!」」」」」
仲間たちの驚愕した声が部屋に響く。
「あら意外に広いわねん」
「したっけ、オラにも権利が?!」
「ああ、もちろんだ……ゴクちゃんなら貴様にも犬小屋、
じゃない、カエル小屋ぐらいは、きっとわけてくれるはずだ……
そうよねん?」
「カエル小屋……したっけ、 殿様カエルのような御殿にしで、欲しいんさ!」
「貴様は贅沢を言うなああああああ!」
パメラとノビのいつもの恒例行事にシモンヌ卿が目を丸くする中。
一方で俺は息をつく。
そんな俺の表情と仕草に、シモンヌ卿が口元を緩め、
あっさりと言ってのけた。
「大したことない広さだ」
「そんな広い土地をもらっていいのか?」
「叔父上にとっては、これぐらいの土地は些細なものだ。
このアドリア公国の六分の一が、既に叔父上の領地になったのだからな」
男爵は胸を張り、続ける。
「今回の『キヌギス砦』と、ワイバーン討伐の一件で、
アドリア公王から爵位を二段階引き上げられ、
侯爵にもなり、領地も拡大した。
だからこそ、この土地は君たちへの感謝の印という訳だ。
むしろ、これでも少ないぐらいだぞ!」
俺は驚きつつも、息をつき、心を落ち着かせる。
視線を集めた俺は、意を決して口を開く。
「そういうことなら……」
「で、受けてくれるのか?」
シモンヌ卿が身を乗り出す。
緊張が頂きを迎えたーーその時。
ゴクリ。
誰かの固唾を呑む音だけが響く。
「で?どうなんだ?」
「いや……」
「お、おい!」
「ありがたく受け取らせてもらうよ」
「おお!!それは何よりだ」
シモンヌ卿が大きく息をついた。
「それとだな……」
口淀むシモンヌ卿に、今度は俺が尋ねた。
「ん? まだ何かあるのか?」
「……叔父上が……ゴクトー君をハルツーム家の男爵に取り立て、
軍総司令――大将に据えろと、どうしても聞かなくてね……。
……なぁ、どうか引き受けてはくれないだろうか?」
お読みいただき、ありがとうございます。
引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )




