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妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤ物語〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第3幕 動章  〜ワイバーン討伐と新たな仲間〜

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模擬戦編 16  〜【アッティラの鞭】と突然のお越し〜

 


 模擬戦編 ラスト☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆


 



 天界から見下ろす神シロが顔を上げた。


「アッティラか……懐かしいわい。ワシの憧れじゃったな」

 

 表情を緩めながらポツリ。

 初めて聞くその名前に女神東雲が眉を寄せる。


「あなた、アッティラって、もしかしてーー女性ですのッ!?」


 鼻息も荒く、神シロに詰め寄る。

 一方で、トランザニヤもーー初めて聞く名前に黒銀の目を見開き、

 キョトンとしていた。


 そんな中、神シロが軽く咳払いを一つつき、

 遠くを見つめながら紡ぎだした。

 


「約3,200年前ぐらいに遡るがのぅ、ズードリア大陸中央部――

 現在は「メデルザード王国」と呼ばれとるが、

 そこは不毛の荒野でな。かつては広大な草原地帯が広がとった。


 そこに君臨したのが、騎馬遊牧民族「ヴァルカ族」の大首長、

 嵐帝『アッティラ・ヴァルカ』じゃった」



 挿絵(By みてみん)


 神シロは遠くを見つめ、まるでその勇姿を思いだすかのようにーー

 ゆっくりと紡ぎ始める。



 「アッティラはな。

 単なる征服者ではなかった。

 彼は「大地の嵐脈」と呼ばれるーー

 自然魔力の奔流と直接対話できる、

 希代の「嵐巫師ストームシーア」でもあったんじゃよ。


 その鞭は一振りで竜巻を召喚し、

 稲妻を地上に縫い付け、敵国の城壁を音速の衝撃波で粉砕するほどじゃ。


 彼が率いたヴァルカ族は最盛期、

 ズードリア大陸の三分の二も掌握したんじゃ。

 しかし魔王の第一次降臨(約3,000年前)の際、

 アッティラは自らの命と引き換えに、嵐の魔力を鞭へ封じ込め、

「いつか魔王を討つ者の手に渡れ」と大地へ突き刺し自害したーー。


 その後、ヴァルカ族は魔王軍の侵攻で滅び、

 草原は焦土となり、今に至った訳じゃ」



 神シロのその言葉は天界の雲間に消えたいったーー。




 ーーその頃、ゴクトーたちとイブ率いる師団長たちの模擬戦は、

 終わりを迎えていた。




 ◾️(神シロが語り部をつとめます)◾️




 「ミリネア・ロカベル……さすがね。

 今回の勝負は、アタシの負けね……」


 そう言うと潔くエリナ・エイマスが敗北を認めたーー。



「いえいえ…」


 ミリネアも応じるように微笑むが、エリナの視線が鞭に向けられる。


「やっぱりその鞭…【アッティラの鞭】で間違いないみたいね」


「ええ!?そうなんですか…」


「だってそれ、ミリネア女史の意思を読むでしょ!」


「!!!」


 ミリネアが目を丸くする。


「確かに……そうとも知らず、30年以上も使っていたなんて通りで……

 思い通りになる鞭だなとは、思っていたんですけれど……」


 ミリネアの言葉を受け、エリナが揶揄うように零す。


「はははは。ミリネア女史、

 鞭って、そんな思い通りにはーー動かないわよ」


「そうですよね、はは。エリナ殿、あなたがお使いのその武器はやはり……」


「そうよ、七星の武器。これは戦斧の【ジェミニ】よ。

【斧】には、色々なタイプがあるらしいんだけど、

 アタシは雷神と謳われた母、女帝エランから譲り受けた、これを使ってる」



 ふとノビが七星の武器と聞いて口を挟む。


「おおおおお!七星の武器なんさ!」


「ノビ、貴様は黙っていろ!」


 パメラの恒例のツッコミが炸裂していた。

 場の空気を読みながらゴクトーが小さくつぶやく。

 

 「ノビ、お前……わかって言ってるのか?」


 そう言ってニタリと口元を緩め「ししし」と笑った。


 一方でエリナがニヤッと白い歯を見せる。


「ミリネア女史って……羨望って言うより、天然よね」


「エリナ殿だって、ご主様を見る目に色欲が滲んでますわよ」


 一瞬二人の熱い視線がバチバチと交錯する。


 だがーー。


 一同がその険悪なムードに固唾を飲む中。

 エリナとミリネアの笑い声が闘技場に響き渡った。


 場に張り詰めた緊張が消え、和やかな空気に変わった。


 ふとゴクトーが息をつく。すると、ミリネアが唇を動かす。


「ご主様……研究対象である七星の武器をーー

 まさか、ワタクシ自身が持っていたなんて……」


 ミリネアが日々追い求めている、研究の成果に触れるように、

 その鞭を見つめていた。


 その表情には驚きと喜びが入り混じり、

 どこか夢見心地のようでもあった。

 

 一同が静かに見守る中、ゴクトーが口を開く。


「【アッティラの鞭】って言うのか……びっくりだッ! 

 それと、研究してるって言うーー

機械銃(マシンガン)】も、七星の武器なんだよな……」


 彼の言葉に、ミリネアが頷き、研究者らしい真剣な顔つきに戻る。


「ご主様、今、わかっている七星の武器についてーー

 少しよろしいでしょうか?」


 「ああ」


「ありがとうございます。


 ワタクシが研究中の、

 魔力操作もいらない、物理攻撃ができるーー

機械銃(マシンガン)】。これはワタクシの手元にございます。

 その弾自体は研究中ですが、それはさておき。

 

 さらにワタクシの鞭が、【アッティラの鞭】だとはーー

 予想だにしませんでしたが、

 これはこれで……ワタクシにとっては僥倖です。

 

 この模擬戦で、エリナ殿がお使いの【戦斧ジェミニ】を知ったこと。

 

 ご主様とアカリ殿が既にお使いの【桜刀】。

 ハゴネのホビットの里、

 プレシャス翁殿が、お使いになっていた【ダンガルフのグローブ】。


 そしてーークロニク皇子がお探しの【趙槍ギャラクシー・スピア】と。

 段々とわかってきました……」


 ミリネアのエメラルドの瞳が目が輝きを増していき、

 その情熱が、まるで糸電話の振動のように伝わっていくーー。



 ◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇

 

 

 闘技場の空気が重苦しいものから、

 ふわりとした柔らかいものに変わったのを感じる中、

 俺はミリネアの表情を見て、喜ばしいとさえ感じる。

 一人でいた頃には持ち合わせていなかった感情だ。


 彼女の喜ぶ姿に自然と言葉が口をつく。


「今、エリナが使ってる【戦斧ジェミニ】や、

 俺とアカリが使っている【桜刀】は……


 もしかすると複数存在するのかもな。

 こうして、少しずつ七星の武器の全貌がわかってきて、本当に良かったな」


 言葉を継ぐと、ミリネアが瞳をキラキラさせながら身を乗り出す。


「はい、ご主様!……ワタクシ……興奮がおさまりません!」


 その無邪気な笑顔に、一瞬だけ見惚れてしまう。

 他の仲間たちも、どこかワクワクしているように見える。


 だがクロニクの声が、そんな空気を切り裂いた。


「兄貴、ミリネア姫とエリナ嬢の実力は、十分理解しただろう?


 エリナ嬢が望むなら、パーティに入れてやったらどうだい?

 どうやらエリナ嬢は、兄貴に惚れてるみたいだからな……ははははは!」


 腹を抱えながらクロニクが大袈裟に笑う。


 一方でエリナが頬を朱らめ、一歩後ずさる。

 その拍子に、彼女の胸が俺の頬に触れた。


 バクッ!


 飛び跳ねる『江戸っ子鼓動』を抑えつつも、

 顔には血が昇るのを感じる。

 平静を装う俺に仲間たちの視線が集まるーー

 心中、穏やかでいられないのだが。

 

 そんな俺を他所に、 エリナが少し寂し気に零す。


「アタシはでも、すぐには入れないわ……冒険者クランを運営してるから……」


 しんと静まる鍛錬場兼闘技場に、エリナの声だけが響いたーーその時。


「それなら大丈夫よ、姉上」


 その声に全員が振り向くーー

 そこには、アマゾネスの美女6人が立っていた。


 吹き込む風とともに、フローラルな馨気が場に広がる。


 それはまるで、朝の陽を受け、緑の稜線を湛える中、

 穏やかに目覚める花々のような香りだった。


 それぞれが金・銀・黒・青・緑・黄橙のーーー!

 ブラトップとハイレグな、おパンツにパレオな姿はーーまさに裸族。


 挿絵(By みてみん)


 その威容に場も静まり返る。


 この美女たちギルド支部で見かけたな。

 妙に【覇気】が違うと思った、あの時の水着大会の……?


 困惑しながらも心中に沈める。

 

 そんな俺を他所に歩み寄る、

 金のーー女性がエリナに話しかける。


「見ていたわ、姉上。大丈夫、

 アタイたちも、リリゴパノアに入れてもらうからッ!」


 彼女の姿は闘技場の灯りを浴びて煌めいて見えた。


「入れてもらうって……

 あなたたちにも、それぞれのパーティが、あるでしょう?」


 エリナが戸惑いを隠せず返す。

 一方で『金のアマゾネス』が小さく笑った。


「元々、アタイたちは姉上についていくと決めているの。

 リリゴパノアのメンバーが了承してくれるなら、何の問題もないわ」

 

 その言葉にクロニクがムキになって口を挟む。


「おい、勝手に話を進めるなよ……兄貴が困ってるだろう」


 そう言うと、一歩前に出てくる『金のアマゾネス』。


「失礼致しました。アタイは次女のアウリア・エイマスです。

 姉上がリリゴパノアに入るなら、是非アタイたちも……

 クラン『Goddess』は、すぐにでも解散致しますから」


 『金のアマゾネス』ーーアウリアの真剣な瞳が、俺に向けられる。


 だが、メンバーたちは戸惑った表情を浮かべていた。

 イブと師団長たちも、この突然の展開に固まっている。


 鍛錬場兼闘技場はどこか違った緊張感が漂う。


 そんな中、風が入り口から流れ込み、

 受付嬢が鍛錬場の方に駆け込んできた。


「あの、失礼致します!シモンヌ卿がお見えになっています。

 応接室の方へ来ていただけるよう、ハウゼン支部長が……!」


 突然の報告に場が騒つき始める。


 だが、影のリーダー・アカリが冷静に応じる。


「わかりました。すぐに伺います」


 凛としたアカリの声に、受付嬢は安心したように頭を下げ、

 慌ただしくその場を後にした。


 その背を見送り、俺は再び、

 鍛錬場の方に立つ、アマゾネスの妹たちへと視線を向けた。


 ふとアカリが俺に問いかける。


「エリナさんたちを加えるとなると……

  規模は個人レベルではなくなります。

 

 そうなれば、私たちは望まぬとも、

 クランとなってしまう気がします。

 それでもダー様は…… よろしいのですか?」


 彼女の表情には、少しばかりの諦念が滲んでいた。

 クランについては全くの無知ーー俺は思わず口を開く。


「クラン? それって……一体どういう仕組みなんだ?」


 少し考え込むアカリだが、彼女が口を開きかけたーーその瞬間。


「アタシが説明するわね」と、エリナが先を切って紡ぎ始めた。


挿絵(By みてみん)


「ひとつのパーティは、基本的に多くても十人くらいで組むものよ。


 だけどーー大規模な依頼や、高難易度の案件を請け負うためには、

 クランっていう仕組みが便利になるの…… 。


 クランに所属すれば、他のパーティと連携しながら依頼を達成できるし、

 ギルドからの優先的な依頼も受けられるようになるわ。


 …… もちろん、斡旋手数料がかかるけど……。

  代わりにクラン全体の報酬が、分配される仕組みなの」


 エリナの説明は、簡潔でわかりやすかった。


「なるほどな」


 俺は納得しながらも実際にはまだピンときていない。

 ふとノビが話に割り込んだ。


「とりあえず、エリナさんたちが加入か、不加入かの話は、

 あどから決めればいいんさ!」


 相変わらずの訛り。

 言ってる意味もよくわからない。

 

 案の定ーーパメラが怒りを露わにした。


「貴様ああああ! 余計なことを言うなあああ!」


 ノビに向かって鋭く叱責する。

 

 その瞬間、ノビが肩を窄めて目を泳がせたが、

 どこか楽しげに笑みを浮かべている。


 そんな恒例行事に、思わず零す。


「ノビってほんと面白い奴だよな、なぁコガラ?」


「おもしろいんさ!ノビたん」


 肩に爪を食い込ませるコガラが羽をパタつかせた。


 その後すぐ、ジュリが苛立ちを顕に声を上げる。


「ちょっと! 笑ってる場合じゃないってば! ヘンダー!

 イブのことだってあるし、

 クランについて詳しく聞くならハウゼン支部長に、相談するべきじゃない?」


 慌ただしいやり取りに、俺が応えようとしたーーその時。


「あ、あの……!」


 闘技場の一角で佇んでいた師団長のココが、突然声を上げた。

 その声はどこか震えているようにも感じる。


「我も……リリゴパノアのパーティに……

 ぜひ、参加させていただきたいのです!」


 言い終えると同時に、ココが深々と頭を下げた。

 その一言に場の空気が凍りつき、全員が彼女に視線を合わせる。


「へっ…?」


 俺が思わず漏らすとココの頬は朱く染まり、

 彼女の視線が地面に固定された。


「イ、イブ姫様を……お守りすることが我の使命であり、

 生き甲斐でもあります。ですが……」


 ココが顔を伏せたまま、声を詰まらせる。


 次の瞬間、顔を上げたココが俺の目を真剣な眼差しで見つめながら零す。


「あ……あなたのことも、命をかけ、お守りしたいのです!」


 挿絵(By みてみん)



 その強い意志と熱い感情が込められた言葉に、俺は思わず息を呑む。

 場にいる全員が一斉に、驚きの声を上げた。



 「「「「「「「「「ええええええええ!!!!」」」」」」」」」



 その声はまるで爆発のように鍛錬場兼闘技場に響き渡る。


 いや、その、この状況は……困った……。


 俺自身もどうしていいのかわからず。

 胸中複雑な思いが葛藤する。


 彼女がこんなにも強い気持ちを抱えていたとは、

 全く予想していなかったからだ。


 ココが恥じらいと決意が混じったような微妙な表情をしている。

 その姿はまるで俺に告白でもしているかのようで、

 妙な緊張感が胸を締めつけた。


「えっ?ココさんが?」

「まじかよ」

「したっけ?」

「貴様はもう、息もするなああああ!」


 一方、仲間たちは騒つきつつも、なりゆきを見守っていた。

 垂れ耳で目を覆うアリーを除いては。


「ココ……」


 つぶやく姉のガリ師団長ーー彼女の”たわわな胸”が赤光を帯びる。


 「男など要らんとーーあれほど言っておった、あのココが……」


 零すイブでさえ、言葉を失ったように、

 ココと俺を交互に見つめていた。


 まるで時間が止まったかの如く、場が静まり返った。






 


 模擬戦編 完。






 お読みいただき、ありがとうございます。

 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )


 次回より新編スタートです♪( ´θ`)ノ


 




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― 新着の感想 ―
〖アッティラの鞭〗の壮大な背景が明かされ、模擬戦編の締めくくりにふさわしい高揚感がありました! ミリネアの研究者らしい喜びや、エリナたちを巡る新たな展開によって物語が広がっていくのを感じます。 …
模擬戦編執筆、お疲れさまでした! 密度が高く、読みごたえがある話でした!(*´ω`*) リリゴパノアが一気に賑やかに。 そしてまた、ゴクトーさんに心を奪われた人か。 真に恐るべきは、そのゴクトーさ…
〖アッティラの鞭〗の正体が分かって、ミリネアさんの研究者としての喜ぶのは、っぽいなとニヤリ。七星の武器も少しずつ揃ってきて、世界観が広がり、ワクワクしました。 そこからエリナさんやアマゾネス姉妹の加…
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