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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第二章
22/279

悪魔使いは東を目指す①

「──()()に乗って行くの?」


 ケイシーが目の前にドンと居座る白い巨体を指差して言い放った。白い巨体は紫色の瞳で迷惑そうにケイシーを見てから、大きな欠伸をした。


「そうだよ」

「本当のホントーに?」

「そうだけど」

「本当に()()に乗るの?」


 かれこれ数十分間、レヴィとケイシーからこのやり取りを繰り返している。その為、白い巨体──狼の姿をしたロイド──は背中に鞍の様な物を着けられた状態で退屈そうに寝そべっている。


「さっきから言ってるけど、コッチの方が馬車よりずっと速いよ。普通の三分の一位の時間で子爵領まで行ける」

「…………」

「ここから東部まで往復2週間ぐらい。……どうかな?」


 レヴィが心配そうにケイシーの顔を覗き込む。ケイシーは唇を噛み締め、むっとした表情だ。レヴィはケイシーが何を躊躇っているか分からず困惑する。


『もういっそ馬車にしないか? 俺は構わない』


 もう何度目かの欠伸をしながら、ロイドが言った。いい加減言い合いに飽きたらしい。


「それだと、冬が来る前に戻って来られないじゃない」

『そのノロマと此処で言い合いしてても冬は来るぞ』

「ノロマですって!? ホント失礼な犬ね! 黙ってなさいよ」

『狼な。 お前はホント五月蝿い女だな』

「あんた何か犬で十分よ!」

『狼だ。()()()()


「ああー、もう」とレヴィが髪を掻き毟る。


 ──ケイシーがこの調子じゃあ、やっぱり時間が掛かっても馬車の方が良いかな。


 ふと、ロイドの横でレヴィ達のやり取りを座って見ているマーティンに気付いた。


「マーティンは? マーティンも嫌かな?」

「ケイシー様には悪いけど、僕はちょっとだけ乗ってみたいな……なんて」


 あははと決まり悪そうに笑う。

 実は、レヴィ、ロイド(乗り物)、ケイシーが子爵家に向かうにあたって、ケイシーと同郷という事でマーティンも同行する事になったのだ。


 ──何でマーティンまで一緒に連れて行けと言ったのだろう。


 レヴィは小首を傾げた。ケイシーだけならまだしも、マーティンも一緒にとなると有事の際、足手まといになりかねない。あるいはマーティンが一緒に行く意味が何かしらあるのだろうか? レヴィはロベルトとの今朝の会話を思い出しながら考えていた。



   ◆◆◆



「レヴィよろしいかな?」

「何ですか、ロベルトさん?」


 ケイシーが子爵家に一度戻る事が決まり、話合いは一旦お開きとなった。退出しようとした時にロベルトに声をかけられた。


「──貴女は何処までご存知何ですか?」

「何をですか?」


 何の事か分からずレヴィは首を傾げた。


「《()()()()》」


 ああ、その事か。と納得した。


「この国の建国に纏わる話だと聞いています」


 所詮レヴィも辺境出身の田舎者である。自分の知っている程度の話は周りも知っていると思っていた。ここに来るまでは───。


 《精霊の剣》──嘗て精霊王がこの国の建国の際、人──初代国王に貸し与えたものだと言う。《剣》以外に、《盾》と《槍》が存在し、それらはこの国が出来た後、ノースブルック侯爵を始めとする三大侯爵にそれぞれ与えられた。それが現在のそれぞれ紋章になっている。


 大体そんな話をした。実際、三大侯爵の紋章はそれぞれ剣と盾と槍をモチーフにしている。


「その他には?」


 畳み掛ける様に尋ねられた。それだけで無い事は分かっているのだろう。


「精霊の《剣》、《盾》、《槍》の3つが揃うと、フォーサイス王家に存在するという精霊界への《扉》を開く事が出来る。真偽はわかりませんが、《精霊の剣》が存在するなら実際にあってもおかしくはないのでしょうね?」


 ロベルトはええ。と頷いた。


「オーガストの狙いは恐らく精霊界への《扉》でしょうな。……ですが、貴女は一体誰からその話を聞いたのです? 三大侯爵家の当主と侯爵家に代々仕える者、それも選ばれた者しか知り得ない情報です」

「それは──」


 レヴィは少し口籠る。言ってしまって良いものだろうかと一瞬考えたが、彼女(アナスタシア)なら()()()()()()()だろう。


「師匠からです」

「悪魔使いの師匠という事ですか? 貴女の師匠とは一体何者なのです?」

「すみません。それは僕にも良くわかりません。養父の古い知り合いのらしいのですが、詳しい事は何も知りません」

「知らない?」


 ロベルトは訝しげにレヴィを見た。レヴィもロベルトを真正面から見る。数秒の後ロベルトは表情を緩めた。


「まぁいいでしょう。()()


 信用はされていないが、嘘は言っていないと思ってもらえたらしい。


「貴女に頼み事をしたいのです」



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