砂漠の封印の鍵争奪戦8 クラスメイトの救出
棚岡君視点です
翌日早朝、俺はアウ王女を連れて砂漠のアリの巣ダンジョンへやって来た。
アリの巣は侵入者を拒むようにまるで迷路のように縦横無尽に入り組んでいた。
だが照輝から貰った地図のお陰で安心して進める。
どうやらこの地図は今の所、俺に罠を掛ける気配はない。
たぶん信用出来る物で問題は無いだろう。
問題はアウ王女だ。
さっきから非常に五月蠅い。
「きゃっ! また死体よ死体! あんたどんだけ殺してるのよ! 敵とは言えこれだけ殺してるとドン引きするわ」
誰の為に殺してるんだよ!
お前だよ!
お前!
お前が魔王城の封印の鍵が欲しいって言うから殺したんじゃないか!
おまわりさーん!
ここに犯人が居ますよー!
主犯はアウ王女だから!
アウ王女に文句を言っても口で言い負かされるのがオチなのでぐっと堪えて黙っていた。
俺、子供じゃねーし。
負ける相手に喧嘩を売る程バカじゃねーし。
実は出発前、アウ王女が思いっきり足手纏いになりそうなので、アイテムボックスに収容しようとした。
それを話すと鬼の様な形相になって怒り狂った。
胎教に良く無いからあんまり怒るのはよく無いと思うぞ。
「わたしだって少しは役に立つんだから! そんなとこには入りませんから!」といって聞いてくれず収納拒否された。
強引に収納しても良かったんだが、出した時に大騒ぎされるのが目に見えてたんで止めた。
まあ、強引についてくると言ったのはアウ王女だし、怪我しても王女のせい。
だから、万一の事が有っても俺は知らん。
ダンジョンの中にに所々アリの死体が転がっていた。
いや、所々では無い。
かなりの数の死体が転がっていて、極端な表現をすると死体を踏み分けて先に進んでる感じだ。
今の所は死臭を放ってないが、腐り始めて悪臭を放つと帰り道が大変な事になりそう。
なので死体を回収しながら進む。
アリの死体を回収しながら進んでいると、王女が不思議そうな顔をした。
「あんた何をやってるの? 素材の為にアリを拾ってるの?」
アリは素材になるのか。
いいこと聞いた。
あとで街に行ったら売って来よう。
まあ、今回収してるのは悪臭を放つ前のゴミ回収だけどな。
「素材と言うか、片付けだな」
「へー、あんた意外ね。倒したアリのお墓を作る為に拾ってるのね。案外いいとこ有るのね」
お墓を作る?
弔うってこと?
昆虫相手に?
そんなつもりは一切無いです。
勘違いです。
でもまあ否定しても何の得にもなりそうも無いので黙っておいた。
*
ダンジョンに潜り始めて二時間。
ついに十七層の遭難予想地点へやって来た。
正確に言うと二十層だ。
ここから十七層に向かって登っていく。
地図にわざわざ赤字で書かれていた要注意ポイントだ。
ここにトラップが仕掛けられてなければ、この地図は信用出来る事になる。
なんで照輝が俺に地図を渡したのか考えていた。
俺の予想としては
・クラスメイトを餌に使ったトラップ
・単にクラスメイトを救出させたいだけ
のどちらかだろう。
俺の予想としては九十パーセントの確率で後者だ。
たぶん仲間の救出を願って俺に地図を託した。
そんなとこだ。
俺お人よしじゃ無いし、敵になる奴を助ける気なんてさらさら無いけどな。
俺は全神経を集中し、トラップの存在を確認しながら先に進む。
そんな俺の神経を逆撫でする様に、王女は鼻歌を歌っていた。
「ふふふーん♪」と呑気なもんだ。
「もう少し静かにしてくれよ。いま大事なとこなんだ」
「ごめんごめん。ちょっと嬉しくてね」
「嬉しい?」
「あんたは冷たい人だと思ってたからクラスメイトなんて放置で先に進むと思ってたのに、わざわざ遠回りまでして助けに来る人間らしい優しい一面もあって嬉しかったのよ」
「まあな」
助けたら敵になる可能性の有るクラスメイトの命なんてどうでも良かった。
罠の有無を確認したいだけ。
ただそれだけなんです。
でも、それをわざわざ言っても何の得にもならないので黙っていた。
*
十七層に行く途中、下り坂になっている部分が有ってそこに水が溜まっていた。
通路が完全に水没していて、泳ぎでもしない限りそれ以上進めなくなった。
たぶん水道管の悪臭トラップみたいな感じ。
「これ以上進めないわね。戻る?」
「いや、進むさ!」
俺は水を一瞬で取り込む。
通路はすぐに通れる状態になった。
それを見てアウ王女はしきりに感心している。
「あんたは本当に凄いわね」
*
それから二分程先に進むと遭難予想地点に着いた。
そこには衰弱したクラスメイト達が横たわっている。
どうやら罠の可能性は低そうだ。
転がっていた女生徒がアウ王女に気が付き、か細い声を発した。
「アウ王女?」
「助けに来たわよ、安心しなさい。すぐに助けてあげるから」
「ありがとう。このチュー太経由でクラスメイトに救出の要請をしてたんですが、まさかアウ王女が助けに来てくれるとは思いませんでした」
「私はもう勇者さん達とは離れてしまっているけど、いつもあなたの事は見守っています。すぐに回復しますからね」
王女は物凄く気品のある感じの言葉遣いで心にもない事を平然と言ってのける。
お前はそんな気品ある王女じゃ無いだろ?
そんな事思っても無いだろ?
俺の疑いの眼差しを無視して、王女はよそよそしい演技を続ける。
「ここには何人いますか?」
「十人です」
クラスメイトを確認すると衰弱しているものの十人が全員生きていた。
「みんな生きてて良かったわね。人殺しにならなくて済んだわね。さあ、回復を始めるわよ」
アウ王女はクラスメイトを一塊に集めると呪文の詠唱を始めた。
どうやら範囲回復呪文を使って一気に回復するつもりのようだ。
でも、回復なんてして大丈夫なのか?
こいつらをここで助けると、あとで確実に敵になりそうだぞ。
確実に敵に塩を送る事になる。
それに回復した途端、俺を襲って来そうな気もする。
ここは安全策を取るべき!
俺は奴らを全てアイテムボックスの中に取り込んだ。
回復魔法を中断した王女が憤慨している。
「回復途中なのになんでアイテムボックスにしまっちゃうの? 助けに来たんじゃないの?」
「助けるかよ! 敵だぞ!」
「じゃあ、なんでここに来たのよ?」
「この地図に罠が無いか確認する為に来たんだよ。トラップを仕掛けるならここしか無いだろ?」
「そう言われるとそうだけど、助けてあげてもいいんじゃない?」
「魔王城の鍵を奪い合ってるライバルだぞ! お前が魔王を倒して王妃になりたいって言うから必死で鍵取りを頑張ってるのに、それをアウ王女自らが敵を助けてどうするんだよ! 本気で魔王倒して王妃になる気有るのか?」
言ってから俺は後悔した。
アウ王女に口答えしてしまった事を。
こりゃ王女の長話が始まるぞ!
と思ったら、王女は涙をぼろぼろ流し始めた。
えっ?
俺まずい事言っちゃった?
「ごめ、言い過ぎた」
「ち、違うの。嬉しすぎて涙が出て来たの」
はあ……。
「タナオカ君は私の扱いが雑だから、あんまり好かれてないと思っていたの。それなのに生徒の命よりも私の事を考えてくれてたなんて! 感動しました! そこまで私の事を考えてくれてるとは思いませんでした! やはりタナオカ君は私の旦那様です! タナオカ君を旦那に選んだ私の目に狂いは有りませんでした!」
「おおう」
アウ王女は俺の胸の中に飛び込むと、しばらく泣き続けた。
回復しないでアイテムボックスに取り込んで処分した事で、「クラスメイトの命をゴミの様に扱うなんてサイテーね!」との言葉が返ってくると思ったのにな……。
いつも読んでくれてありがとうごさいます。
*
元ネタの『クラスごと集団転移』もよろしくお願いします。
(連載中)
クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱ランクの商人に偽装しました。
http://ncode.syosetu.com/n7017dt/
水土更新予定
※書籍化作業中です
正しいスキルの使い方 。~商人の俺がアイテムボックスで魔王討伐!~
http://ncode.syosetu.com/n7297ec/
平日(月火木金)更新予定




