一二尾
最終話です!
紅剡の言葉で我に返った我。
刀を握っていた手を離し、代わりに紅剡の胸に手を置いてワンワン泣いた。
「お、おい?」
「う、うぅ゛〜〜〜!分かっている、分かっているがっ、この馬鹿蜘蛛が我の婚活を台無しにっ!我の一番お気に入りのっ、簪を〜〜〜っっ!!」
「.....」
ただ普通に見合いが出来ると思ったのにこの仕打ち。
馬鹿の下だらない思惑のとばっちりを受け滅茶苦茶なモノとなってしまうとはっ、否、そもそも見合いですらなかった...。
その渦中で、我の簪コレクションの中で一番の今迄使用しなかった大切な玉簪を、目の前で破壊されてしまったのをまた思い出して、頭の中はグチャグチャで悔しくて悲しさで溢れ、みっともなく妖前でボロボロ涙を流してしまう。
我の涙を止めようとしてるのか、紅剡はぎこちない手つきで我の頭を撫でるが、その行為が更に虚しさを増させた。
「うぅ〜〜〜ぐすぐすっ.....」
泣き止まぬ我に業を煮やしたのか、根負けしたのか、紅剡はヤケっぱちな感じで、
「っああ〜〜〜!分かった分かった!俺が新しい簪作ってやるからっ!いい加減泣き止め!」
「───え?」
その言葉に我は自身でもビックリする位、ピタリと涙が止まった。
と言うか、今、作ると言ったか?紅剡が?我の為に簪を?
それは、もしかして大昔に流行っていたという───
「プロポーズと言うやつか!」
「違うからなっ!?」
「.....違うのか?」
じゃあ、何の為にほぼ初対面の我に簪を作ってやると言ったのだ?
態々作らなくても、その辺の店か露店で買えば済むではないか...ああ、違う。
「(我の考えが早計だった...。早く結婚したいと思うあまり、ついそっちの方に捉えてしまっていた我が愚かだった)」
己の早とちりな発言を恥じてしまうのと、心の何処かで期待していなのが落胆に代わってしまったのも相成る。
我は顔を俯かせ耳が頬にくっついてしまう程シュンペタリと下げてしまう。
同時に、紅剡から離れようとそっと胸においていた手を押して退いて貰おうとしたのだが、紅剡の身体は一向に動かなかったのだ。どうしたというのだ?
「紅剡、瘴気に当たって動けなくなったのか?それとも何処か怪我をしたか?」
回りを気にせずにキレ散らかしてた我だ。
攻撃の衝撃波で瓦礫とかが飛んで当たってしまったか、妖力で吹き飛ばした瘴気を取り込んでしまったのやもしれん!
慌てて紅剡の身体を診ようとしたが、
「安心しろ違うから。あー...あと、プロポーズで渡すんじゃなくて、だな、その、なんだ、お前さん変な男に引っかかりそうだからな、そうならない様、魔除け的な意味でのってやつだ。
だから、店にとかにある様な安物より、俺が作ったのならそういう効果強いからいいだろうって事でっ...て!ああ〜〜!もうそういうこった!!」
「何が「そういうこった!!」なのだ?」
早口で喋る紅剡だったが、それを大人しく聞いていた我の方は、始めは何故そこまでするのかよく分からなかった。
だって、我はこの通り強いし、まずこの国で我に力で勝てる男などいないだろう。
そんな我に何故、魔除けの効果のある簪を贈るというのか?
頭に「?」を飛ばして、俯かせていた顔を上げ、紅剡の顔を見た。
「はっ!」
「─────」
紅剡の顔に注目!!
見られたくないのか、そっぽを向いているが!我はしかと見たぞ!!
頬が紅椿の様に真っ赤に染まり、それは尖った耳にまで至っているのをなっ!!
「(もしかすると、もしかしなくても、これは───)」
そう言えば、簪を贈る意味は、プロポーズ、魔除けの他にもう一つ意味があったのを思い出す。
そう、それは確か───
“独占欲と愛情”
特に装飾の色が己と同じ瞳の色と同じ色の物であれば、“自分だけの色に染め、自分だけのものにしたい”と言う意思表示の表れだとも聞いたことがある───という事は.....。
「(脈有りか!?)紅剡、主に聞きたいことがある」
「...何だ?簪の形のオーダーか?」
まだそっぽを向いたままの紅剡を気にせず我はそのまま言葉を続ける。
「好きなタイプの女子は?あと、彼女いるのか?」
「はあぁぁ!?」
「答えよ!これは大事な事だ!と言うかっ、我とお主はまだ見合い中だろうが!!」
「ばっ!アレは見合いじゃねぇだろ!完全に妖身御供だったじゃねぇかっ!!」
「違うもん!見合いだったもん!みーあーいぃーーっ!!」
「自分の都合の良いように転換すんなーーー!!」
「見合いだ!」「見合いじゃねぇ!」と我と紅剡の激しい激問答は、【負ノ遺産】の気配を察知し(遅すぎるわっ!)駆けつけた【七曜】が来るまで続いたのだった。
因みに、我等二妖の方は抱き合って地面に転がったままの状態で、更に因みに、忘れ去られてた大蜘蛛の奴とそのチンピラ共はずっと気絶したままだったのだった.....。
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───その後の話だが、大蜘蛛は当然ながら【七曜】の御用となり、永久封印の刑に処された。
そこまで強くはなかったモノとはいえ、【負ノ遺産】を所持していたのだ、大小関係なく極刑になるのは当然のことだからな!
そして、大蜘蛛が処され、新たに町長となったのは、町長の座を一度追いやられたあの、ヒィヒィ悲鳴ばかりあげていた窮鼠のジジィだ。
ただ、この一件で何か思うところがあったのか、戻り町長は牛鬼のブートキャンプに入会し身体と精神を鍛え始めた。
合う度に、あのプルプル小さく縮こまっていた身体がムキムキの逆三角形になっていく様を見る我も、流石にちょっと引いてしまったのは内緒だ...。
あと物忌み状態だった町も、町長が戻った事で活気を取り戻し始めた。
紅剡、窮鼠達曰く、元々楽しい事が好きで毎夜賑やかな町だったらしく、町には商妖の掛け声、婦妖達の井戸端会議、子供達の笑い声がそこかしこに盛んに聞こえ、我も楽しい気分になってしまう程の活力溢れる心地が良い町だ。
ただ、何故か我が買い物に来ると、何故か町の皆が
「婚活の嬢ちゃん」だの
「婚活のお姉ちゃん」だの
「婚活」があだ名のような言い方で呼ばれるようになった...いや!合ってはいるんだけどなっ!
だが!他に呼び方あるだろう?ないのかっ!?
そして、その我と紅剡の今はと言うと───
「紅剡、すまぬがまた刀の調整を頼むぞ!」
「またか...。今度は何処で、何して、派手に暴れた?」
「なんか黒い峡谷だな。あそこは丁度良い具合の残穢が留まっていたのでな、ついでに【負ノ遺産】になりかけていたから斬ってきた!」
引退はしたが、適当に【七曜】でも見落とし、或いは対処出来なくて保留にしている、【負ノ遺産】の瘴気と穢れの残穢が多く残る場所へ【緋桜ノ夜】を携え、狩ってはその後、紅剡の店に向かい刀を調整したり直してもらったりしている。
「黒い峡谷...あの黒部峡谷かっ!だから少し【緋桜ノ夜】の“真”に傷が入ってたんか...!」
「どれ位かかる?」
「この具合だと一週間だ」
刀身を真剣に眺めながら答える紅剡に、我は目を輝かせた。
「ほう!一週間も紅剡が刀を鍛え直す姿を目に出来るのだな!楽しみだ!
なんたって我はお主が真剣に武器と向き合い直し鍛造する様を見るのが好きだからな!あと世話するのもな!」
「───お前、毎度毎度、恥ずかしげも無く好きとか軽々しく言うなよ...!」
「本心で言うのに、軽々しく言うはずなかろう」
「..........」
そんでもって肝心要、我の婚活の成果はと言うと、こんな感じで、絶賛アプローチ中だ!
紅剡が刀を直している間は、我が直接彼の世話をしている。
最初は世話をする予定はなかったのだが、紅剡は一度作業に掛かるとその後一切飲まず食わずの状態になり、終わったら泥のように眠るのだ。
その様を何度か目撃し、見兼ねた我はこれはいかん!と世話するようになったのだった。
始めはいいと彼は断っていたが、我の根気強い説得()に押し負けて、大妖しく世話をさせられてくれるようになった。
あと内緒だが、これなら我、いいお嫁さんになるよ的なアピールになるから丁度良いのだ!
───カンッカンッカンッ!
鉄を打つ紅剡を眺めながら、我はそっと緋桜色の髪に触れる。
そこにはまだ簪は挿していない。
紅剡が簪を作ってくれるまで、暫くは挿さない事にしたのだ。
因みに何処までやれているのかと言うと、デザインは出来たが、材料に問題があるらしく、相応しい物が見つからないとかで難航しているらしい。
待つのは苦手な我だが、今回は不思議と心に余裕を持って待つ事が出来そうな気がする。
紅剡がどんな簪を我の為に作ってくれるのを、ドキドキと想像しながら待つのがとても楽しくて気分が良いのだ!
その初めての感覚を少しでも長く感じていたいから、我は今夜も炎に照らされた紅剡の湖畔色の瞳を見るのだ。
───簪を彩る色を何色にするかに期待しながら...。
最終話まで読んで下さりありがとう御座います!
この物語はここで終わりになりますが、今後朔夜と紅剡がどうなるかは、ご想像にお任せします。
とか言ってしまってますが、少しは続きを考えてたりしちゃっている作者がいます...。
次からは【生贄竜】の方に執筆再開しますので、そちらも楽しみにして下さい!
それでは最後に恒例のおまけコーナーで終わりにします。
〜覚えて学ぼう【月ノ本】の世界と愉快な仲間達!〜
楓「皆様、こんばんは。このコーナーも今回で最後になりましたが、何とか会えて嬉しいと思う楓です」
作者「何とかネタを絞り出してコーナー書きました、作者です!」
楓「それで最後は何を語るのですか?」
作者「朔夜ちゃんの一番のお気に入りの玉簪について語ろうかと」
楓「あの蒼月石の玉簪ですね。私は朔夜様がいたく気に入ってるとしか知らないのですが...」
作者「あの簪実は、まだ尻尾が三尾の時に酔っ払いのオッサンから貰ったと言う設定だったりするんだな」
楓「乙女的要素皆無ですねっ!?」
作者「しかもそのオッサン、今現在の【守護七妖仙】の一番トップのオッサン妖怪です」
楓「酔っ払い妖怪オヤジが【守護七妖仙】のトップ!?情報がハチャメチャ過ぎて整理できないんですけど?!」
作者「そうだよねー。でも、この物語にそんなかわいい、綺麗何て思い出要素求めちゃいかんよ。
これ書いてんのウチだぜ?乙女チックなもの書けない、寧ろブチ壊して来るような展開に書いちゃうウチだよ?」
楓「嗚呼...そうでした。この作者そういうの雰囲気ぶち壊すようなもんばっか書くヤバい奴でした...!
───ッハ!そうなると!朔夜様と紅剡殿の今後の展開は?結ばれるんですかあの二妖??」
作者「サァ?サクシャワカラナイヨ」
楓「朔夜様ーーー!今直ぐ!今直ぐこの性悪作者を滅して下さいーーー!!
そうしないとっ、朔夜様の婚期が遠のいてしまいますーーー!!!」
作者「無駄無駄ぁ!作者は逃げるのが早いから滅せられんわ!っと言ってる間に撤退じゃーーー!!」
楓「ああっ!もう終わりの項にまで行ってしまってっ!」
作者「それじゃあ最後はなんかグダグダに締まりのない終わりになっちゃったけど、またいつかあえたらあいましょー!さよーならー♪」
楓「待ちなさいっ!もうっ!こんな終わりで本当に申し訳ありません!もしこの物語の続きを作者が書くような事があれば、また会えると思います。
その日まで暫くおさらばとなります。それでは、またいつか、さようなら」




