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誰かとごはんを食べたくなる物語  作者: 地野千塩


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片付けまでが料理です

「イクメンのつもりですか? 片付けまでが料理です」


 ある日、妻が切れた。子供を連れて実家へ帰ってしまったが、日曜日、昼ごはんを作った後の事だった。


 ネットの料理研究家の動画を見ながら、チャーハンを作り、味も最高だったはずだが、妻は不機嫌だった。


 どういう事かさっぱりわからない。今時は男女平等だし、ちゃんと家事もやっていたつもり。料理だって時々、チャーハン、天津丼、麻婆豆腐、唐揚げとか作っていた。


「なんだよ。なんで怒ってるか全然わからない」


 ぶつぶつ文句を言いながら、キッチンに立ち、チャーハンを炒めた。具材もネギ、かまぼこ、チャーシューと具沢山。いい匂い。米もパラパラだ。


「うん、うまいじゃん」


 一人で食べて自画自賛。一体、何が不満だったか不明だが、食べ終えてキッチンに向かって力が抜けた。


 そこはまるで戦場の跡だ。流しには汚れたまな板、ボウル、菜箸、トングが散乱し、フライパンは油がベトベト。コンロ周りが匂う。床も油っぽい。急いで換気扇のスイッチを入れる。


 それらを一つ一つ片付けながら、片付けも料理だったと気づいた。いつも片付けは全部妻に押し付けていた。「調理」だけやっていい気になってた自分って愚か……。


 とりあえず全部片付け、妻へ謝罪の言葉を送ったが、返事はない。しばらく一人で生活しろという無言のメッセージだろう。


 次の日も唐揚げを作ったが、これも片付けるのが面倒だ。油もどう処理したらいいかわからない。


 冷蔵庫を見ると、醤油の賞味期限が近く、これもどうしていいか不明だった。


「うん、わからない……」


 キッチンで子供のように途方に暮れる。再び自分ってバカだったんだと自覚したが、妻から連絡がきていた。明日には帰ってくるという。


「ああ、よかった……」


 胸を撫で下ろす。


 明日は久々に妻と子供と一緒に食事ができる。何よりもそれが一番。


 キッチンを片付けながら、今までの幸せを噛み締めていた。

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