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誰かとごはんを食べたくなる物語  作者: 地野千塩


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ホームベーカリーを手放しても

「なんでこんな家電ばっかり買ったんだろう……」


 優希はキッチンの戸棚を掃除しながら、ため息をこぼす。


 使っていない家電が奥にあったが、いい気分はしない。ホームベーカリー、ジューサー、ホットサンドメーカー、ヨーグルトメーカー、豆乳メーカー、ゆで卵メーカーまで出てきた。しかも、ホームベーカリーに至っては三台もあったが、最近どれも使ってない。埃がかぶっていた。


「はぁ……」


 思えば丁寧な暮らし、いい奥さん、ナチュラル系ママに憧れていたが、子育てと仕事を両立しながら、出来ることではなかった。


 膨れあがった理想は上手く消化できず、結局、家電を腐らせてしまってる。宝の持ち腐れ。そんな言葉が頭に浮かぶ。


「まあ、ホームベーカリーはさすがに手放すか」


 フリマアプリで売ったら、いいお小遣いになった。キッチンも広くなり、なんだか心も軽い。


 そのお金で宅配ピザを頼み、家族で食べた。みんな笑顔だ。たぶん、理想的な暮らしを追求するより、今のままで十分だ。ホームベーカリーを手放しても、別にそんなに困ってない。

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