18.やっぱり魔法はすごい
お久しぶりです。投稿が遅れてしまい申し訳ありません。お待ちいただいていた方ごめんなさい。あまり間隔が、開かないよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。
移動中、お互いに自己紹介をした。医師はランドルさんと言い、この街で治療院を開業しているそうだ。
ランドルさん曰く、教会の治療院との違いは、医師の異動がない、医師が自ら魔法薬、薬草、病について研究をしている、治療には魔法薬や薬草なども使うので治療費が都度かかる、などらしい。
教会の治療院は、教会員の中でも治癒魔法に適性があるものが、治癒魔法を学び、実践するために行っているので治療費は無料なんだとか。
これから僕たちがやることについて尋ねるとランドルさんは、
「重傷者の治療です。とは言いましても、応急処置ではありません。欠損部分の完全修復です。先程、ユウキさん、スーさん、ミーリヤさんが治癒魔法を使っているところを拝見していました。経験がないとのことですが、魔力のコントロール、魔法を発動する集中力がとても素晴らしく、ミーリヤさんは難しいかもしれませんが、完全修復を行えると判断いたしました。」
「完全修復ですか?それは、どのようなものなのでしょう?」
「治癒魔法と差はありませんが、重傷者の元の姿をイメージし、欠損部分を修復する上位の治癒魔法になります。経験上、身体の構造を知っている方が魔法の発動がしやすいように感じますが、出来そうでしょうか?最上級魔法薬でも、同じような効果は見込めますが、使用される薬草が手に入りにくいので、回してはもらえないでしょう。」
「自分と同じ種族の方なら出来そうな気がします。僕はこの街に来て初めて他種族の方を見たので元の姿をイメージするのが難しそうです。あと、最上級魔法薬ですが、錬金術師さんに似たような効果があると言われた魔法薬を所持していますが、これは使えますか?」
先日作った魔法薬を一本カバンから取り出し、ランドルさんへ渡した。ランドルさんは、立ち止まると、陶器の蓋を外し、手のひらに一滴落とすと再び蓋を閉め、出した魔法薬をしばらく観察していたが、魔法薬の瓶を僕に手渡すと、カバンからナイフを取り出し、魔法薬を載せている手の指先を切り付けた。
「!!」
突然のことに僕は声にならなかったが、ランドルさんは特に気にした様子もなく、血の滲んでいる指先へ魔法薬を塗りつけた。すると、傷口が淡く光り、すぐに消えた。ランドルさんが布で指先の血を拭うと傷口が綺麗に消えていた。
「良い魔法薬ですね。実際に使用してみないと、どの程度まで修復出来るかは分かりませんが。」
「それを含めて7本ありますので、効果があるなら使ってください。」
僕がカバンから残りの魔法薬を取り出そうとすると、
「もうすぐ天幕に着きますからこの1本を使用してみてからにしましょう。」
ランドルさんについて行くと、東門のすぐそばに大きな天幕が設置されていた。この天幕内に重傷者が集められているそうだ。中に入ると、今までとは異なり、痛みを止める魔法でも使用しているのか、痛みで苦しんでいる人はいないようだ。そのため、自身の状態を把握出来ているためか、雰囲気が暗く、諦めた表情の人が多かった。
それもそのはず、ここに運ばれた人達の怪我の程度が尋常ではないのだ。今までの所にいた患者は骨折や、裂傷など。しかし、この場所の患者は、身体の一部を切断されている重篤な人達が集められている。なかには、日本での経験上、即死を思わせるような人たちも含まれていた。
「あの、すみません。鉱山の事故にしてはこちらにいる患者の怪我は、異質な気がするのですが。」
僕は、目の前にいる患者の怪我の状態が、挟まれたりぶつかって出来るような怪我でない事が気になったのでランドルさんに質問した。ランドルさんが説明する前に目の前にいた患者である鉱夫が答えてくれた。
「単純な落盤による事故じゃないんだよ。鉱山の深い階層にいるはずの鉄ゴーレムが突然現れて俺たちに攻撃をしてきたんだ。鉄ゴーレムなのに風魔法を使ってきて逃げ切れなくて切断されたのさ。それた攻撃がトンネル内を破壊して落盤したんだ。」
思い出したのか、鉱夫は身体をブルリと振るわせた。
「思い出させてしまい申し訳ありません。教えて頂きありがとうございます。」
「いや、大丈夫だ。何もしていなかったらどうしても、これからの事を考えてしまうから。」
鉱夫は視線を足元に移しながら、ため息を付いた。
「ランドルさん、どのくらいの怪我まで、魔法薬で修復出来るものなのですか?さっきの魔法薬、本人の了承が得られるなら使ってみませんか?」
「わかりました。まずは、カルテを持ってきます。」
ランドルさんは、鉱夫に付けられていた札を確認し、隅に置かれた書類棚へ向かった。書類棚を管理していると思われるローブの男と会話すると、板に紙を貼り付けたものを受け取り戻ってきた。ランドルさんは鉱夫にギルドカードに似たものを手渡して言った。
「フィップさんで間違いありませんか?」
ランドルさんは鉱夫に向かって問いかける。
「ああ、フィップで間違いない。」
鉱夫のフィップさんは、ランドルさんにカードを返しながら答えた。戻されたカードとカルテを比較すると、魔法薬について話した。どのくらいの効果が見込めるか分からない魔法薬があるが、使ってみないか。と。
「それは、ありがたい。少しでも足を取り戻せる可能性があるなら頼むよ。このままじゃ家族の負担にしかならないから。」
フィップさんの了承が取れたところで、ランドルさんはカバンから先程自分の指先を切り付けたものとはサイズの異なる小さなナイフとナイフの刃が全て入るサイズの円柱の容器、陶器の瓶を取り出した。
陶器の瓶に入った透明な液体を円柱の容器に入れ、ナイフを差し込むと、横になっているフィップさんのそばに座った。
魔法薬の瓶をフィップさんに見せ、
「魔法薬の使用条件はご存じでしょうが、改めてこれからの手順を説明させて頂きます。治癒魔法とは異なり、傷ついたり、病を患っている状態で魔法薬を体内に入れる事により効果を発揮します。しかし、現在フィップさんは治癒魔法により、止血をされているため、傷ついた状態ではありません。この状態ではいくら魔法薬を摂取しても身体は修復されません。ですので、これからこのナイフで傷を付け、その後、この魔法薬を飲んでもらいます。見たところ痛み止めの魔法の効果がまだ効いているようなので痛みは無いと思いますがよろしいですか?」
ランドルさんの説明を聞き、フィップさんは問題ないと答えた。ランドルさんは説明した手順通り淡々と作業を行う。痛みはないみたいだが、見ているだけで痛そうだ。
フィップさんが魔法薬を飲むと足元を光が包み、足の形に伸びていき、光が消えるとそこには足があった。
初めて見る魔法薬の効果に驚いている間も、ランドルさんはテキパキと診察をしていく。カルテを片手に足以外の場所を触診し、フィップさんへ質問を始める。
「身体は元通りに修復されていると思われますが、気分などはいかがですか?」
フィップさんは質問が聞こえていないのか、しばらくの間、足を曲げ伸ばし、手で足を撫でたり、つねったりを繰り返すと徐にこちらを向いたその目からは涙が溢れていた。
「ありがとう…ありがとう…また、家族のために働くことが出来る。」
「大丈夫そうですね。体力はすぐには戻りませんからもう少し横になっていてください。魔法薬の効果は十分なようですね。問題は数が少ないと言うことですが…」
ランドルさんは周りを見渡した。ここに運ばれているのは同じ様な怪我をした人達ばかりだ。目の前で修復された様子を見たためか期待に満ちた視線を感じる。
「では、予定通り僕たちの治癒魔法で修復出来るかどうかをかくにんしませんか?もし、無理そうだったら魔法薬を持ってきましょう。…ランドルさん、確認なんですが、上級魔法薬で使う薬草も手に入りにくいんですか?」
「いえ、上級までの薬草は南側の森で採集可能ですから、それほどではありませんよ。」
ランドルさんは不思議そうな顔をしつつ答え、ハッと手元の空き瓶に目をやり、こちらを見る。
「では、ランドルさん、僕たちは使った事のない魔法なので、きちんと修復されているかの確認をお願いします。どなたか僕たちの治癒魔法を受けてくださいませんか?不十分な場合でもきちんと対応しますので。」
僕は、周りを見渡した。すると、沢山の声が上がった。使ったことがないと宣言しているのに全くためらいがないようだ。僕が驚いて固まっていると、ランドルさんが仕切ってくれた。
「みなさん、きちんと順番に対応しますのでお静かに。奥にいる患者さん達が驚いていますよ。ミーリヤさんは今回は見て学んでいただく事にして、ユウキさんは他種族は難しいと言われていましたが、スーさんはいかがですか?」
「私は特殊な種族でなければ会ったことがあるので大丈夫だと思います。」
スーの話を受けて、ランドルさんは周りの患者を見渡した。2人を選びそれぞれに付けられた札を確認し、再びカルテを受け取りに行き戻ってきた。
「まずは、先程のフィップさんと同程度の方にかけさせてもらいましょう。こちらのオットーさんとレオンさんです。オットーさんは普人族、レオンさんは獣人族です。」
僕たちはそれぞれにカルテを渡された。カルテを読むため、僕はカバンから取り出したメガネを掛けた。
「まずは本人確認をしてください。カルテに書かれている固有標章と本人の固有標章を見比べます。緊急時、軽傷者の場合には必要ありませんが、重傷者の場合は必ず行います。急いでいても確実に行ってください。このカードは持たせるか、意識がない場合は、素肌に触れさせることで対象者の固有標章を強制的に表示します。そして、カルテと共にある時しか発動しませんし、カルテに記載されたのと同じ固有標章でないと表示されません。しかし、誤作動の可能性がありますので必ず見比べてくださいね。カルテの内容を確認して、外損部分以外にも問題ないかも確認します。では、お願いします。」
僕の担当はオットーさん、カルテによると左腕肘から欠損と、右足の骨折、内部は特に問題ないようだ。内容を確認した後、オットーさんにカードを渡して個人標章を確認する。
「オットーさんですね。カルテには左腕と右足のことしか書かれていませんが、他はどうですか?」
「オットーだ。風魔法で吹っ飛ばされて、壁にぶつかったんだが、全身が痛くて何処が痛いのか全く分からなかったよ。今は痛み止め魔法が効いてるから全く問題ないしな。」
「分かりました。では、横になって楽にしていてください。治癒魔法をかけますね。」
僕は、人体模型を思い浮かべてつつオットーさんが健康な身体になるようにイメージしながら周りから魔力を集め、『修復』と魔法をかけた。
全身を淡い光が包み、続いて左腕の先に光が伸びていく。しばらくののち光が収まると無事、左腕が修復されていた。実際に見ると治癒魔法の凄さをひしひしと感じる。
「オットーさん、お疲れ様でした。ランドルさん、魔法は発動しましたが、確認してもらえますか?」
ランドルさんは近づき、僕からカルテを受け取るとオットーさんの身体の触診を始めた。その様子を見ながら、もし、このまま治療を続けるのなら確認に治癒師を付けてもらおうと思った。
スーの方はどうかなぁ、と目を向けるとレオンさんはすでに起き上がり、自分で身体を確認していた。そこへ、オットーさんの触診を終えたランドルさんも合流し、レオンさんの触診をするとスーと一緒に戻ってきた。
「オットーさん、レオンさんとも、完全に修復されていました。お二人とも能力は十分です。ご自分の魔力、集中力を確認しながら続けてもらい、次は重症度の高い方からお願いします。」
「ランドルさん、患者の確認をするのに、治癒師さんをつけてもらえませんか?確認をするのは経験豊富な人がいいと、思うんです。」
「そうですね。分かりました。あと、あの魔法薬なのですが、どちらで手に入れたのです?」
「それはですね…」「ユウキさん!」
ランドルさんと話をしていると、後ろから声がした。振り向いてみると、少しヨレヨレになったグリールさんが立っていた。
「グリールさんもこちらにいたんですね。」
「えぇ。治癒魔法も使用出来ますから。しかし、向こうから見ていましたが、スーさんも治癒魔法が使えるとは思いませんでした。」
僕が首を傾げると、目を輝かせたグリールさんが続けた。
「自己治癒力は人以上にあるでしょうが、治癒魔法は聖属性です。普通、魔物は使えませんよ。」
そういえば、スーが初めて人化して、僕を助けてくれた時にスーが言っていた気がするけど、本当なんだ。
「気になるでしょうが、この件についてはまた後で確認するとして、今は都合が良かったと思いましょう。グリールさん、あの魔法薬をプリシラさんに使わせてもらえるように頼めませんか?治癒魔法で治すより負担が少ないですし、誰でも使えますよね?後日同数の魔法薬を納品としてもいいですから。ここで使うことで、魔法薬の効果が広まって良い宣伝になりますよ。」
するとグリールさんは、紙とペンを取り出すと、サラサラと何かを書くと、紙飛行機を作り、そのまま空に向かって飛ばした。紙飛行機は空でくるりと方向を変えるとそのまま飛んで行ってしまった。
「これで、プリシラに連絡がつきます。ありったけ持って来るはずですが、30分程かかるでしょう。その間は、治癒魔法での修復をお願いします。」
「グリールさんはミーリヤちゃんと軽傷者の治癒をお願い出来ませんか?一人で治癒させるのは不安があったので連れてきたんですが、治癒魔法での修復は難しそうですし、お父さんを探すにも同じ場所に居ると効率が悪いので、付き添いをお願いしたいんです。」
グリールさんは僕の説明に頷き、ミーリヤちゃんと天幕の外に出て行った。
僕たちはプリシラさんから魔法薬が届くまでの間、ランドルさんの手配してくれた医師と一緒に天幕の中を歩きまわり、魔法薬での治療が難しい人から順に治癒魔法をかけ、修復を行なっていった。
幸いと言って良いのか、普通のレシピとは異なる魔法薬だったことから天幕内に残っていた人たち全てに行き渡る量が残っていた。
魔法薬と一緒にあったプリシラさんからの手紙には、『ユウキくん以外でもこの魔法薬を作れるようにする為の研究に協力する事。』と条件が書かれていた。




