第49話
「君には日没と共に山本君とアスタゴに上陸してもらう」
事務連絡の様に冷淡な声が少しばかり広い部屋に響いた。
『あの、間磯が死んだというのは本当なのでしょうか?』
「残念だがね……。だが、そのおかげで戦力は分散されている。君と山本君の力で道を切り開くのだ」
無線機に向けて岩松は指示を出す。
岩松の予想通り、タイタンの数はリーゼの数を上回るが、それも問題はない。何より、マルテアとグランツ帝国の支援もある。
「アスタゴの東海岸から攻撃を仕掛ける。マルテアとグランツ帝国の応援もある」
上陸前に合流し、突破できるだけの戦力で突っ込めと言うことだ。
「指令は以上だ」
岩松は返答を聞かずに通信を切った。自分に歯向かうわけがないという自信があったからだろう。
通信が終わったのを見計ったかの様に、扉が叩かれた。
「入ってきたまえ」
三度のノックの音を聞いて、岩松が告げると、扉がギイと音を立てて開かれた。
「坂平君」
入ってきたのは軍服を着た男性、坂平だった。
「残念ながら間磯君は死んでしまった様だ」
椅子から立ち上がり岩松は坂平の隣に立つ。
「それを指示したのは、岩松大将ですよね……」
こうなることは分かっていたはずだ。単独で間磯をアスタゴ合衆国に送り込み、西方からの攻撃を警戒させる。
「私は指令としての判断をした。死んだのは彼に、生き残るだけの実力がなかったからだ」
非情な男だ。
冷酷な男だ。
「さて、そこで君には次の兵士を選んでもらいたい」
「私が、ですか……?」
坂平は顔を青ざめさせる。
怖いのだ。ガチガチに体が震えるのを坂平は感じている。もし、ここで彼が選択をして子供の命を散らしてしまうことが。
「ああ、だが阿賀野君は駄目だ。私は美空か川中君がいいと思うが……」
君はどう思うね。
岩松は笑みを浮かべながら尋ねた。
「わ、私、は……」
「ははっ、そう固くならんでいい。気軽に考えるんだ、坂平君」
どうせ自分の命をかけるわけでもなし。何より、国の役に立つことができるのだから。
「四島では、駄目でしょうか……」
坂平の考えつく、最大の戦力。しかし、その考えを岩松は否定した。
「まだ早い。四島君にはもっと攻め込んでから行ってもらったほうがいい」
結局の所、岩松は美空か川中に戦争に行ってもらいたいと考えているのだ。
「考えて、おきます」
そう言って坂平は退室した。
その背中を岩松は見送った。
「……ああ、二人とも送るということも出来るか」
パイロットが誰か一人死んでしまったとしても、もう一人送ることで、すぐに代わりを用意できる。
とは言え、リーゼを破壊された場合においては陽の国から送る必要があるが。
「ふむ、坂平君が一人選ぶだろうから、私がもう一人選んでおこう」
再び考えてみるが、ここで美空を消費するには勿体ない。愛することはないが道具としてはそれなりに有用である。能力として四島には劣るが、飯島と同程度の力を持つ。さらには岩松に従順である点も評価は高い。
今、ここで死んでも構わない人物。
となれば。
「ふむ。……彼女だな」
ただ、坂平が美空を選ばないという保証はない。尤も、その時は言いくるめれば良いだけだ。




