バレッタと少女
牢屋の軟禁生活7日目。
以外と私は不自由な思いをしていない。
何故なら――――
「え……!ヴィオラ様にはお兄様がお二人もいらっしゃるんですか?」
「えぇ、そうなの。」
三日目にヴェリテちゃんがここを訪れてから以降、
フォルテの計らいでヴェリテちゃんがほぼ朝から晩まで話し相手になってくれていたからだ。
(はぁぁ……幸せ……。)
ヒロインちゃんとこんな風に親しくなれるなんて思ってもみなかった。
いや、親友ポジを狙ってはいたんだけどね?
でも、いざこうしたしくなってみると夢のようだ。
「貴方にひどいことした男がいたでしょ?
あの男の腕を掴みあげたのが長男のフラットンお兄様よ。そして、もう一人の兄は王立学園で講師をしているの。」
「まぁ、そうでしたか……。
なんとなくですが、フラットン様の事は覚えております。とても素敵な方でした。」
(おっ……?)
素敵な方。
そういうヴェリテちゃんの顔はほんのり赤い。
もしやこれは、ヴェリテちゃんの想い人はフラットンお兄様になる感じなのだろうか。
(でもまって。フラットンお兄様は攻略対象キャラじゃないわよね?)
どちらかといえば最後まで妹の無実を信じていた。
ヴィオラがヴェリテちゃんにひどいことをしていたと知った以降はごみを見るような冷たい目で見てい多様な気もするけど。
でも、とにかく攻略対象でもないのに、何故ヴェリテちゃんは頬を赤らめるのであろうか。
しかも、覚えているのはなんとなくだというのに。
「……もしかして、フラットンお兄様にご興味が?」
気になった私は素直に気持ちを聞いてみる。
すると、ヴェリテちゃんは頬を赤らめ、私に手を横に振って見せてきた。
「ち、違います!誤解しないでくださいませ!
私はフラットン様にあこがれを抱いているのではなくっ……!」
「あら、そうなの?」
とはいえ、焦る姿を見ると怪しいものだ。
「わ、私はその、ヴィオラ様も男性だったら
フラットン様のようなお方だったのかもと
想像してしまいまして……。」
「え?……そうね。そうかも。
よくよく考えると、フラットンお兄様とメルディンお兄様ってどことなく似ている気もするしね。」
なんてことを言うとメルディンお兄様が怒りそうだ。
でも、二人ともとても美しい顔立ちをしていて、
似ているといえば似ている気がする。
女装とか、正直二人ともに会う顔だ。
「……ヴィオラ様。
あの、一つお伺いしてもよろしいですか?」
「え?えぇ、もちろんよ。」
ヴェリテちゃんはすこし照れくさそうに身体をもじもじさせて私を見てくる。
一体、何を話したいというのだろうか。
「そ、その……私はすこしでも綺麗な宝石に近づけたでしょうか……?」
「……え?」
「……私がつけているバレッタ、お覚えですか?
ヴィオラ様が【女の子はみんな磨けば可愛いく、美しく光る原石なの】といって、私に握らせてくれたものです。……私はずっと、このバレッタに見合う女性になろうと日々、精進してまいりました。」
(……ヴェリテちゃん……。)
愛おしそうにバレッタに触れるヴェリテちゃん。
その表情はとても女性らしくて見ていてきゅんとしてしまうほど愛らしい。
素敵すぎる、正直。
「ヴィオラ様。私はこのバレッタに恥じぬ女性になれていますでしょうか?」
「……えぇ、もちろんよ。
貴方に恥じるべき部分などありはしないわ。
とても素敵なレディよ。
私が保証をするわ。」
気恥ずかしそうに笑うヴェリテちゃんの肩に手を置きながら私はそういった。
ヴェリテちゃんは可愛い。
すごく。
美し可愛い。
正直、多分思われているであろうフラットンお兄様に嫉妬してしまうくらいに可愛い表情だ。
(……どうせ転生するなら、私、攻略対象に転生したかったわ。)
そうしたらきっと、私が町がいなくヴェリテちゃんを幸せにできるのに。
……なんて思うけど、正直自分がそういう立場になっているのは想像できない。
(まぁ、誰のルートに入るかわからないけど、
誰のルートに入っても幸せになってもらいたいものね。)
気弱そうに笑う美しい少女を見て
私はそんな事を思った。
そう、このときの私はまだ知らなかったのだった。
まさか、まさか――――
あんなことになってしまうだなんて。




