ロンドの本心
【……一つ聞かせてくれ。ヴィオラ嬢。お前はフォルテが嫌いか?】
【いいえ?最初は苦手意識はありましたが今は別に。むしろ変に大人ぶっていないフォルテは可愛いとすら思っていますわ。】
「……どちらかというと好意的……か。」
辺りはもう夜のとばりが落ちきり、真っ暗になっている。
お茶会はずいぶんと前に終了し、フォルテもヴィオラも帰っていった。
そして俺、ロンドは昼間のやり取りを思い出していた。
(まさか、庶民願望があったなんてな……。)
つくづく噂とはあてにならないものだと思う。
噂と真実は違ったし、ヴィオラ嬢は気位が高く、人を見下しているという噂を聞いていた。
その実は見下す態度は見られなかったし、気位の高さも感じなかった。
割と聡明な令嬢に見えた。
(……いや、庶民願望ある時点で聡明ではないのか?……って、俺も憧れた事はあったなぁ。)
俺はヴィオラやフォルテよりは二歳ほど上になる。
二年前くらいの俺は正直なところで駆けるたびに外で自由に走り回る同じ年ぐらいの奴らを見て「羨ましい」と思っていた。
だから一度だけ邸をこっそりと抜け出して町へ出かけてみた時はひどく驚いた。
少し薄暗い道へと入ればそこには着るものすらまともなものを着れないような子供たちがたくさんいたからだ。
そして思った。
どれだけ自分が恵まれていて、今の生活を手放すことがおろかなことなのかという事を。
(……ヴィオラは知っているのか?そんな世界がある事を。)
いや、多分知らないだろう。
引きこもっていると話していた。
ヴィオラはきっと、街を自由に動き回ったりなどしたことはないだろう。
(……ヴィオラ・アルトバーン。会って少し話しただけで思った。彼女はフォルテにふさわしいと思う。)
自分の意思をはっきり発言できるし、フォルテの言う様に終始姿勢が凛々しく堂々としていた。
さらに社交界が苦手といっておきながら思い直しこれからは参加をしていくとすら言っていた。
自身の行動を見つめなおしてそれが正しいことなのか、そうでない事なのかを判断できる。
ひどく聡明な女の子だ。
そんな彼女が成長すれば間違いなくフォルテの隣に立つものとしてふさわしい人となるだろう。
(…………ヴィオラ嬢には悪いけど、やっぱり将来的にはフォルテの隣に立ってもらう。でも、それはいやいやではなくて彼女の意思で、だ。)
返答する際、俺は迷った。
そして決めた。
婚約破棄を協力するふりをして、彼女にフォルテの魅力をたくさん伝え、フォルテを好きにさせる。
そして庶民願望を捨てさせて二人を結び付けよう、と。
やっぱり俺にとっては大好きな弟分であるフォルテが優先だ。
フォルテが幸せになれるよう手助けしてやりたい。
(……大丈夫だ。きっとうまくやろう。)
ヴィオラに必ずフォルテを選ばせて見せる。
(……よし、そのためにはまずは作戦を立てなきゃだな。)
ベッドに寝転がっていた俺は起き上がり、机へと向かう。
そして、ヴィオラとフォルテに手紙を出したのだった。




