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お茶会のお誘い

「え……お茶会?」


「はい。なんでもお嬢様と同じ年頃のお嬢様とご子息がいらっしゃるとのことで是非にと誘われたのですが……いつも通り不参加になさいますか?」


「えぇ、不参加で―――――ん、いえ、ちょっと待って。」


安易に面倒という気持ちから不参加にしようとしてしまった私は自分の言葉に思いとどまり少し考える。


非常に癪だけれど私は悪役令嬢ヴィオラだ。


前世の記憶を取り戻す前に【ヴィオラ】として生活をしていた時の人格はゲーム制作者の作ったヴィオラではあったけれど、同時に私自身でもあった。


その性格から出た面倒くさいから不参加という判断はもしかするとあまり良くないのかもしれない。


(そうよ、そうよ!ヴィオラは絶対的権力者ではあったけれど、わがままで気分やだから周りとはとっつきにくくされていたわ。その印象を崩して、良い子の印象を社交界で与えて、いざってときに「あんないい子がそんなことをするなんて間違いだ!」と口々にかばい建ててくれる大人をたくさん作っていたら何かを未来でしでかしても投獄死刑は免れるんじゃ……?)


いかにゲームのキャラとはいえ、子供は子供。


幼いころからこんな策略を立てて大人たちと接するという事は流石のヴィオラもなかったはずだ。


それに、ヴィオラはあまりいい評判がなかった。


それをいい評判ばかりのヴィオラで迎える未来は絶対私の知る未来とは変わっていてくれるはずだ。


(そうと決まれば作戦決行ね。)


「リディ。そのお茶会、参加するわ。」


「えぇっ!?」


「……何よ、その驚き様は。」


「だだだ、だって、低レベルなものの集まりでただただ身を肥やすためだけの意義のないお茶会に参加するなんて時間と労力の無駄だわとまで言っておられたお嬢様がっ……その、どのようなお気持ちの変化で……。」


「あぁ……そういえばそんなことも言っていたわね……。」


(記憶を取り戻す前に。)


兄の前でこそブラコン気味なのもありそこまで歪んでいないけれど、使用人たちの前ではすでにわがまま女王様の性格は表れていたことを思い出した。


でも幸い、私はまだ幼い。


まだまだやり直しがきくはずだ。


「お、王子の婚約者になったからにはいろいろな人とお付き合いをすることも大事でしょう?面倒くさがらず将来の為になる事をしてもいいかもと思ってね。」


「まぁ!素敵なお考えですわ、お嬢様!あ、そうだわ!せっかくでしたら新しいドレスを新調致しましょう?」


「……え?」


「そうですわ、それが良いですわ!参加のお手紙を返して行商人を手配いたしますね!」


「あ、ちょっ、リディ!?」


私がパーティーに参加することがリディにとってうれしいことなのかリディは私の気が変わる前にといわんばかりに足早に立ち去って行ってしまう。


「お、大げさだわ……。」


そんな事を思いながら私はぽかんと口を開けていた。


「ヴィ~オ~ラァ~?」


「っ!!」


リディが立ち去って行った扉の向こうからゆっくりと不機嫌そうなお顔を出してくるメロディおに……お姉様。


その姿に私は一瞬、背筋が凍る思いを味わった。


「メ、メロディお姉様、どうかなさったの?」


「……あんなに、あんなに王子との婚約を嫌がっていたのにどうして急に前向きになっているのぉ!」


「えっ!?」


「その気になんてなっていないわよね!?王子となんて結婚しないわよね!?いざとなったら私と愛の逃避行をするのよね!?」


「え?あ、あはは……。」


あまりにも怒涛の勢いで攻めてくるお姉様に私は曖昧にも苦笑いを返す。


結婚する気はないけれど、私の将来の為に利用したとも言えない。


(王子様を利用したなんて嘘でも言えるはずがないもの。)


何処で誰に聞かれているかわからない。


怖い話だ。


「べ、別にそれだけで行くことを決めたわけではないですよ。私はただ、本当に同年代の子たちと仲良くするのもたまにはいいかなと思っただけなんです。」


「……本当に本当?」


「え、えぇ。」


正直、親に良い印象を与えたいのだけど、そのためには子供の評判も大事だったりする。


なので子供の中でいい評判を得て、良いうわさを流してもらえるように参加するのだ。


強ち嘘ではない。


「……男に近づきすぎては駄目よ?」


「え?え、えぇ……。」


「男はオオカミだわ!みんなあなたの可愛さにメロメロになって何をしでかすかわかったものじゃないんだから!」


(あ、あんたが言うな!!)


「は、はい。」


「あとは、後は―――――」


その後しばらくメロディお姉様の注意すべき事柄がたくさん紹介された。


お茶会に参加するという私の返答に喜んでいたリディが戻ってきたころには私は軽く聞き疲れのせいで干からびていたのだった。

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