103話 湖
朝。目が覚めると、いつものように辺りを見渡す。まだうちの家族は全員寝ているみたい。リンヴィ様は多分外。
よし。起こさないように外に出ようかな。幸い外は近いし…。
ミノムシみたいに馬車の中を這って…、幕を除けて頭を出す。
うえっ、眩しっ。ああ、でも気持ちのいい光だ…。でも、安眠妨害。中に光が入らないように注意して外に出よう。よいしょ、よいしょ…、あ。ダメだ。失敗した。この芋虫みたいな変な体勢で落ちる。
頭は守らないと…。あれ? 止まった?
「何をしているのだ…。寝ぼけておるのか?普段のそなたならガードせずとも、身体能力で立てただろうに…」
リンヴィ様の呆れたような声。一発で眠気が吹き飛んだ。
「あー。すみません。寝ぼけていました」
普通なら、あんな動きしない。やっぱり『触媒』魔法3連発──そのうち一発は全力じゃなかったけど──は体に来ていたみたい。昨日は気づかなかったけど…、倒れなかっただけ良しとしよう。
「…大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。寝ぼけた原因を考えていました。おそらく疲労です」
「…さもありなん。皆が起きるまでゆっくりしているといい。センも我が起きてから交代したぞ」
交代してくれたのか…。センもスヤスヤと寝ている。任せきっても大丈夫だっただろうけど、その気持ちよさそうな顔を見ると交代してもらってよかったと思える。
そのリンヴィ様は馬車に寄りかかって目を閉じている。…集中しているのか? リンヴィ様にお礼を言って…、湖のそばで座ってようか。
湖畔に座ると、空の向こうから指してくる朝日が水面に反射してきらきらと水が輝く。風一つ吹かない湖面はシンと静まり返っていてまるで鏡。それがずっと向こうまで続いている。
「綺麗だな…」
「ですねぇ」
ん?
「おはようございます。習君」
「あ、ああ。おはよう」
声で分かっていたけど四季だった。…朝日に照らされている四季の顔が余りに綺麗だったからちょっとドキッとしてしまった。
「じっと眺めていましたからね…。声をかけづらくて…」
俺が黙っていたのを幸いにも、別方面で解釈してくれたみたい。うっすら四季の頬が染まっていたような…、気のせいか。とりあえず四季の言葉に乗らせてもらおう。
「見てみなよ。綺麗だよ?」
「既に十分満喫しましたよ」
悪戯をした子供のように微笑む。ひょっとして俺、かなり熱心に眺めていたのか…。
「綺麗ですよね…、水も底が見えるほどに澄んでいますし…」
「だねぇ…。向こうでは綺麗すぎると生き物が少ないって言われてたけど…」
ピチャン
タイミングよく、小さな水音が静まり返った湖に木霊する。
「あ、小ぶりの魚が…」
「だね。あ、さらに大きな魚が…」
「「バシャア!」って音を立てて、食べましたね」
「だねぇ…。あれ?まだ何か…?」
ザパッ! と水しぶきをあげて、凶暴な鮫っぽい魚が2匹まとめてそれらを喰らう。大きな肉体が太陽光を反射してテラテラと輝く。
「…力強いですね…」
「だね。で、「「「グアー!」」」……」
思わずまだあるのか。と顔を見合わせた俺らは悪くない。
鮫を待っていたかのように嘴がドリルのようになった鳥たちがどこからともなく飛んできてぐっさぐっさと鮫の身を貫く。そしてそのまま数の暴力でお持ち帰り…、かと思いきや水中から大貝が鳥もろとも鮫に喰らいつく。そしてそのまま鮫の取り合いが始まる。
うわぁ……。
「あの鳥と貝は珍味『『ロックランス』』……」
リンヴィ様の言葉を聞いた瞬間、反射的に口が動いていた。珍味なら食べてみたい。仕方ない。
岩の槍が全てまとめて串刺し。本数が少ないから、鳥全部とはいかなかったが…、おいしいかどうかもわからないのに無駄に殺すのはあれだし、逆によかった。
槍は威力を調節して粉砕しないようにした。ついでに長さもいじってだいぶ長くした。というか魔力の大部分を長さに割いた。だから、未だに槍の柄は紙から出ている。それを掴み取って、腕力で引き寄せる。
「…怒涛の連鎖だったな」
ですね…。食物連鎖はもうお腹いっぱいだ。
「最後はそなたらであったが…」
「「……」」
「解体は後でしましょうか!」
「だね!」
皆にも見せてあげたいから解体は後回しだ。
「あ、この貝、ハマグリみたいですね…」
大きな黒い貝を見て四季がそう言った。貝博士じゃないからよくわかんないけれども、それでも、模様から判断する限りアサリや、シジミではないはず…。たぶん。
でも、知っている貝でそれっぽい名前を言っただけかもしれない。
「じゃあ、この鳥は…、なんだろ?わからない」
少なくとも俺の知識の中ではこんなスラッとしていて羽にまだら模様があって…、水辺にいるような鳥は…、あ。いたわ。
「シギ?」
「シギですか?…ああ!なるほど、確かにそうかもしれません!となると…、ぴったり『漁夫の利』の古事と一致しますね」
「シギとハマグリはそのままに、漁師が俺らね」
「そうです。ちょうど合致していたでしょう?」
「だね」
争いしているところを横からかっさらうところまでまるっきり一緒。強いて違うところをあげるなら……、あげるなら……ない? いや、こっちは男女二人であっちは一人という点が…、
「ブルルッ」
「あ、おはよう」
「おはようございます」
いつの間に起きたのか、センが俺らのそばに寄ってきて、俺らにだけ聞こえるような声量で一鳴き。寝ている皆に配慮してくれたんだろう。
「馬車の内部へは、我が振動、騒音、そのほかの影響が出ぬようにはしているが…、賢いな」
とリンヴィ様。防音、防振完備の結界でもあるのかな? ありがとうございます。
ま、それはそうとして、センに魔力をあげようか。いい加減、リンヴィ様にはセンが妙に賢い理由を間接的にではあるが、明かしてもいいだろう。
四季の方を見ると頷きを返してくれた。よし、同意は得られた。センに魔力をあげようと二人で近づき、口元に手を持って行く、
「ブルッ!」
注意を促すように鳴いてリンヴィ様を見た。「いるけどいいの?」と聞いているんだろう。
忘れていると思われているのかな…。いや、この子のことだから、純粋に心配して聞いてくれているんだろうけど…。あれ? 何でそんなこと思ったんだろう?
「お前らが二人だと周り見てねぇからだよ!」
!?
「ブルルッ!」
「どうしたの?」と心配そうに聞いてくるセン。
「ダイジョウブ。何もないよ」
「ワタシモデス」
何でタクの声が聞こえてきたんだ…。幻聴だな。きっと。疲れてんのかな…。とりあえず話題を戻そう。えーっと、話題は確か…。センに魔力をあげる事だったね。
「うん、さっきの話題の答えだけど、いいよ。リンヴィ様は言いふらすような人でもないし」
「信頼に値する人ですから」
秘密を打ち明け、その上で、力を見せておく。そうすることで、こちら側いてくれたらいいなぁ…、なんて下心もあるしね。
「ブルゥ」
「そっか」と言わんばかりになくと、視線をこちらに戻す。その目は控えめに言ってキラキラと溢れんばかりに輝いている。
「現金な子だなぁ…」
「そこがかわいらしくもありますけどね…」
空気は読めるけど、基本この子は素直だ。四季と苦笑いをしながら手を差し出すと、センが俺らの手をはむ。そしてはむはむと口を優しく動かす。
「む。その子…、魔物か」
「そうですよ」
「そなたら色物に好かれるの…」
色物って…。確かに、属性を列挙すればそうかもしれないけど…。
「それに基本、家族関係構築します」
「あ、ああ。そうか…」
何か微妙な反応された!? 思ってた反応と違う…。「あー。そういうこともあるよね」的な反応を期待していたのに…。
当然ながら、センも家族である。と、俺らは認識している。ただ、人間じゃないからどこかペットのような…、みんなとは少しだけズレた扱いになっている感は否めないけど…。
そっと手持無沙汰な手でセンの頭を撫でる。センは嬉しそうに鳴く。確かに信頼されていると感じる。うん。これが感じられるなら大丈夫だ。
「それにしても…、手触りいいですよね…」
「だね…。たいした手入れもしてないのにね…」
というか手入れした記憶ないぞ…。基本この子が汚れるのは戦闘だ。そして、戦闘が終わると大抵俺らは気絶している。
それなのに、毛並みは真っ白で、触ればふんわり柔らかい感触が返ってくる。
「少々理不尽ですよね…、私は出来るだけ髪に気を遣ってなんとかこの状態をキープしているのですけど…」
頬をプクッとわざとらしく少し膨らませる四季。
「そう?」
俺は、センから解放された二人の手と、さっきまでセンを撫でていた手。合計3つをさっと魔法で洗って、四季の髪をそっと手に取る。
「なんとかキープって言ってるけど…」
言葉をそこで切って、髪を見てみる。
毛先はしっかりまとまっていてパサパサしてないし、髪全体は美しい黒い艶がある。それどころか、会った当初よりも増している気さえする。
そして、極めつけに、髪の根元の方に手を入れ、髪を掴みながら毛先までスッと手を動かしてみる。すると、一切引っかかることなく手は滑らかに毛先まで移動し、抜けた。
「四季の髪の状態はかなりいいと思うよ?これで悪いって言う人はいないと思う」
「…習君はどう思いますか?」
こっちを見ずに四季が聞いてきた。俺? 俺は…。
「好きだよ?この髪。単純に俺が黒い長髪が好きだから…、ってわけじゃなくて、本心からそう思う」
手で四季の髪をいじりながら言う。実際つるつるだし…、手触りいいし…。センとは別ベクトルだけど。今なら、朝日に照らされてより綺麗になっている。
「我の存在を忘れておるのか?それとも無視しておるのか?」
「…忘れているだけ」
「二人の世界に入るからな…。二人とも」
「だねー」
声のした方を見るとリンヴィ様といつの間にか起きた皆が優し気な目でこちらをみている。
「おはよう」
「おはようございます。レイコちゃん、調子はどうですか?」
「昨日よりはマシです。本調子とはいきませんが…」
そうか…。
「じゃあ、今日も体にいい食材使おうか」
「先のは体にいいぞ」
「では、それを使いましょう」
先の…、ハマグリとシギか。よし、解体だ。
「驚嘆すべき切り替えの速度だ」
「…あの空気から逃げたわけじゃないけどね」
「わかっておる。見ればわかる。あやつらがそなたらを心配していることぐらいな」
リンヴィ様達が何か言っているけど、そんなに大事じゃないだろうしスルーだ。あ、そうだ。四季に謝っとかないと。
「四季、さっきは髪をべたべたと触ってごめん」
「気にしてませんからいいですよ」
あわあわと顔…、どころか肌を朱に染める四季。口を開こうとしては閉じる。というのを繰り返す。俺のせいだが、かわいらしい動きだ。
「「………」」
発言を待っているけど…、言わないね…。四季が言いたいことは少しだけ予想出来るけど…、言われたら言われたで答えるのは恥ずかしい。
だからと言って俺から言い出すわけにもいかないし…。「髪の感想を詳しく言おうか?」なんて。よし。棚上げしよう。
棚上げすると決めたら行動だ。行動して忘れる。捕まえた貝とシギを解体。こいつらの名前は、シギが『シェミ』で、貝が『バート』というらしい。
シギの名前が「シェル」に似てて、貝が「バード」に似た名前。何故に英語? とか、何故に逆? とか言いたくなるけど、きっと大した理由などない。
とりあえずそいつらはまとめてスープに。味付けはほぼ塩だけ。出汁が取れるしね。あ。野菜入れないとバランスが崩壊する。適当に見繕って入れよう。
パンはスープに浸せばふやけて食べやすくなるはず。
______
完成。そして実食。美味しかった。食べたことのない味で形容しようがないけど…、とにかく美味しかった。たぶんフォアグラとか、ミルガイとかそんな感じ。
まぁ、フォアグラはおろか、ミルガイも食べたことないけど! レイコもきちんと無理なく完食できてたからよかった。
「さて、どうしようか」
「湖探索しないのか?」
ガロウの声。
「ん?あのなぁ…」
呆れの色をにじませながら後ろを向くと、ガロウより先にレイコと目が合った。
レイコは嬉しそうに、こちらを安心させるように微笑む。発言者であるガロウも「そんな反応するよな」という顔をしている。
え…、何?
「行って下さい。私。待ってますから」
「レイコが心配」という理由を先につぶしに来た!?
「何故…、という顔をされていらっしゃいますけど…、お父様とお母様なら「私が心配だから…」と、これを理由に「私とともにいる」とおっしゃられることは容易に推測できますよ?」
「だな。今までの俺達への対応を見ていれば誰でもわかるぜ」
「会って間もない我でさえ。推測は容易であったぞ」
言外に、「我よりも長い皆ならすぐに察せる」という意図を込められているのがヒシヒシと伝わってくる。わお…。
「我が守護する。これで魔物のことは憂う必要もなかろう?それとも、我が信用ならぬか?」
少々芝居がかった困り顔をするリンヴィ様。棘が立たないようにわざとそうとそうしてくれているんだろう。出来た人だ。
リンヴィ様の人格はこれに象徴されるように申し分ない。この人が信用できないなら世界の8割の人は絶対に信用しちゃいけない人になる。
強さは申し分ない。こっちが触媒魔法かましただけでろくに戦ってないけど…。
現に魔物に湖畔で襲われていない。湖はあれだけ賑やかだったのにも関わらず。朝ご飯の獲物は別だけね。あれは俺らから仕留めに行ったから。湖畔から一歩も動かなかったけど…。
レイコもやせ我慢をしている様子はない。なら、本人が「行って」と言っているならば、それを尊重しようか。無理に一緒にいるよりはそっちのほうがいいだろう。面白いモノがあれば後で見せてあげればいい。
だから、「探索する方向でいい?」と確認の気持ちをこめて四季を見ると、同じ目で見返してきた。よし。
「リンヴィ様、二人をお願いしてもいいですか?」
「ああ。任せよ」
「行ってらっしゃいませ」
「行ってらっしゃい」
二人の嬉しそうな顔と弾んだ声に、後押しされて湖の縁へ。
何故だろう? 少し寂しい気持ちがする。これが子離れされた親の気持ちなのだろうか? 体験したことないからわからないけど…。ふと、「このままあの二人は俺達から離れていくのだろうか?」という考えが頭を…、
「…ない」
「ないねー」
!? なんで頭に考えがよぎった瞬間に力強く否定されたの!? 怖い。あ、でも、今更か…。アイリだし。
「その心はなんでしょう?」
お、四季が聞いてくれた。
「…見てたらわかるでしょ。…戌群説得の算段をしている方が有意義」
「ねー」
アイリもカレンも、やれやれ…。という気持ちを隠しもしない。それにしても…。
「ずいぶん感覚的だな…」
「ですよね。あまりに雑では…?」
「そんなことないよー」
「…ん。二人がわたしに…、あの子たちにもたらしたものを自覚すべき」
もたらしたもの? 抽象的すぎない? ふわふわしていて特定できない…。
「…無意識でやってるんだね。」
「そこがー、いーんじゃなーい?」
「…だね」
困惑しきりの俺らを置いてけぼりにして、二人だけで完結してしまった。聞いても、きっと教えてくれないだろう。この壊れそうな眩しいものを大切に扱うような顔を見ている限り。
「諦めて行こうか」
「ですね。遺跡があるのは確か湖の真ん中でしたよね?」
「だったはずだよ」
場所は本で読んだからだいたいわかる。本当にだいたいだけど…。いくら昔の本だからって雑すぎるんだよね…。
測量技術が発達してなかったのかもしれないけどさ、なんだよ、湖のだいたい中心に遺跡の中心っぽい部分がある。(意訳)って。舐めてんのか。
「とりあえず橋掛けて中央部分まで行きましょっか」
「だね。かなり広いから…、橋の持続時間にだけは気を遣っておかないと地獄を見る」
具体的には湖ポチャ。落ちても死にはしないけど…、あんまり落ちたくはないし、いきなり足場が無くなる体験はしたくない。たまに寝る前に突然落下するような感覚を味わうけど…、わざわざ味わいに行くような種を残しておく必要はない。
「「『『橋』』」」
湖の端から中心に向かって土が延びる。さて、渡ろう。一緒に行くのは四季とアイリ、それにカレンだ。
「そーいえばさー。これって橋でいーの?」
「ん?どういうこと?」
しばらく何もなく歩いていると、カレンの声がしたので聞き返しながら振り返る。何故か、アイリがカレンの口を塞ごうとしている。何やってんの君ら…。
「落ちますよ?」
「…わかってる。でも…」
「いいよ、アイリ。何か考えあっての事だろうけど、言わせてあげて」
「カレンちゃん。どういう意味ですか?」
手と口でアイリを制すると、アイリは「むぅ…」と納得のいかなさそうな顔で引き下がった。
「そのままだよー。これって、橋なのー?」
と足元を指さした。どういうこと?
「橋だよな」
「橋ですよね」
思わず四季と顔を見合わせたけど…、出てきた答えは同じ。というか、『橋』という紙で魔法を使った以上、それしか言えないけど…?
「こっちの端は地面に繋がってるけど、向こうはどうなのー?」
向こう…? ああ、反対側か。反対はどうなんだ? 見てないからわかんないな。でも…、
「たぶん何もないな」
「ですね。橋の端は空中に浮いているんじゃないですかね?」
そもそも湖の端がどこか知らないし。
「じゃーさ、二人の中では、橋ってさ、間に通れない部分がある、地面の2地点を結ぶものだよねー。じゃー、これ、端っこ空中に浮いているけどー、どうなのー?」
……一理ある。これって橋? 少なくとも俺の知ってる橋じゃないぞ。あれ? じゃあ何なんだ?
「…ほら。言わんこっちゃない」
「うー。ごめんねー」
謎が深まり混乱が酷くなる、このままだと『橋』を、こういう用途で使えなくなりそうだ…!
「…建設中の橋は?」
!
「それでいっとこう」
「ですね」
よく考えると、『橋』を普通に使うときも、『長さがかなりあるとき、橋脚ないのに何で落ちない』とか、今みたいに使うとき『橋のモーメントどうなってるの』とかツッコミどころがあったけど魔法だからという事で処理しておこう。思考停止ともいう。
「それにしても…、魔物出ないな」
「ですね」
視界の端っこでは元気に食物連鎖起こしているのに…、橋の周りだけは静まり返ったようで。波すら立ちやしない。
「…喧嘩売りたくないんじゃない?」
「たぶんねー。二人を怖がっているみたいだしー」
「「何故?」」
「…リンヴィ様いる。お菓子感覚で『バート』と、『シェミ』倒した。魔力量多い…。とかじゃない?…後、怒らせたらまずいと察しているか」
なるほど。最後だけ小声でぼそぼそと言っていたから聞こえなかったけど。納得だ。
「あー。何か見えたよー」
「本当ですか?」
カレンの声に惹かれて、3人そろってカレンの横へ。そして、湖をのぞき込む。
相変わらず澄んだ水と湖底以外何も見えない…。あ、ナマコっぽい生き物が…、でも、それだけじゃあカレンはいちいち言ってこないだろう。じゃあ、一体何を見たんだ?
「そっちじゃないよー。もうちょっとむこー」
向こう? ああ、中心方向か。……何かが微妙に見えるけど…、はっきりとは見えない。
「まだ遠いのかなー?綺麗だよー?」
「ふむ。じゃあ、急いでみる?早く見てみたい」
「ですね。ですが、落ちないようにですよ」
わかってる。はやる気持ちを抑えながら走る。橋の幅をもう少しとっときゃよかったか。でもそうすると今度は長さと、持続時間が…。
妨害されることなく橋を走る。そして端に到着! さて、どんな景色が広がっているのか。