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『神機』:護りし者  作者: 赤魂緋鯉
外伝 2 『神機』:男爵と姫
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最終話

                    *



 それから数日後。『公国』内にある病院の屋上に、車椅子に乗って腕に点滴を打っているジェシカと、それを押すエリーナの姿があった。

 傷の経過が良く、外出の許可を貰った2人は、早速空中庭園になっている屋上へと繰り出した。


「いやー、やっぱり朝の空気って最高だね。実に爽やかだ」

「ちょっと寒くない?」

「うん。だから抱きしめて暖めて欲しいな」

「はいはい。傷が塞がってからね」



 両手を広げて、さあどうぞ、と言わんばかりに微笑むジェシカに、彼女の前へ回りこんだエリーナは自分の上着を羽織らせた。


「残念」


 それでも彼女の温もりと匂いを堪能出来たので、ジェシカはその言葉に反して、嬉しげな顔で肩を小さくすくめた。


「ところで……。その、……この前のアレって本気なの?」


 エリーナは少し目線を逸らし、頬を赤らめながらジェシカへそう訊く。


「ああ。ボクは冗談で愛してる、なんて言わないだろう?」

「まあそうだけど……」

「よし、じゃあ証拠に指輪でも買おうか? ちょうどサイズは分かってるし」

「要らないわよ、別に。あなたのその顔見たら分かるわ」


 ジェシカの顔はいつも通りの飄々(ひょうひょう)としたものではなく、明らかに照れくさそうだった。


「それに買ってるお金ないでしょ?」

「あー、そうだったね」


 あはは、とジェシカが控えめに笑った後、どちらからとも無く口づけを交わそうとしたところで、


「あっ。ジェシカさーん! エリーナさーん!」


 教会関係者の護衛を引き連れて、元気いっぱいな様子のアルテミスが現れた。


「おや、アルテミスじゃないか。おはよう」

「えっ、なっ、なんでこんな所に?」


 そんなときでも平常心なジェシカは、どこまでも優雅にそう挨拶する。

 一方、慌てて背筋を伸ばしたエリーナは、しどろもどろになりつつアルテミスに訊く。


 2人が何をしようとしてたか分かってない彼女は、事の次第を嬉しげに語った。


「ふむふむ。なるほど」

「それは良かったじゃない」

「はい。これでやっと、両親の墓参りが出来ます」


 そう答えたアルテミスは、ほんの少しだけ寂しそうな表情をして、


「ここでこうしていられるのは、お2人のおかげです。本当にありがとうございました!」


 すぐに満面の笑みを浮かべながら、愉快な傭兵2人にそう感謝した。




 そんなやりとりの後、『世界教』から謝礼金として、『大連合』製『レプリカ』の最新式カスタムモデルを買える程の金貨が2人に送られた。


 ジェシカの傷が完全に癒えると、それを元手に、『大連合』製ではあるが、少し型番落ちの機体を購入し、再び『自由』領内での傭兵生活に戻った。


 ……のだが。


「ジェシカー……。直りそう?」



 履帯が原因不明の破損を起こすわ、2本ある主砲が一門動かなくなるわ、挙げ句の果てに、コアが突然スタンバイモードになったまま、うんともすんとも言わなくなるわ、と相変わらずのトラブル続きの結果、『自由』東部にある荒野のど真ん中で立ち往生してしまった。


「いや。コアの物理的な初期不良だから、流石にお手上げだよ」

「ああそう……」


 メインモニターに出ていたウィンドウを全部消すと、苦笑しながら首を横に振った


「ひっ……、うわああああん!」


 あんまりにも理不尽極(きわ)まる状況に、エリーナはもう泣きじゃくるしかなかった。


「おー、よしよし」


 こんなときですら動じないジェシカは、いい年して子供の様に泣く相棒を抱きよせて慰める。


「まあそう気を落とさないで。ほら、まだ――」


 彼女が、不幸中の幸いに電気は使える、と言おうとした瞬間、完全にコアがシャットダウンしてしまった。


「……」

「……」

「……不幸中の幸いに、救難ビーコンは動くし、水と食料も丸々1週間分あるからさ」


 ペンライトを天井に向けてコクピット内を照らしつつ、ジェシカは限界値ギリギリいっぱいにポジティブな事を言った。


「……エリーナ?」

「……あはははっ」

「エリーナっ!?」


 もういろいろと限界になったエリーナは、無表情で泣きながら笑う、という器用な事をし始めた。


 そんな完璧な遭難からちょうど1週間後、


「あんた達、酷い臭いじゃない。もしかして諦めてよろしくやってた?」

「あはは……。想像にお任せするよ」

「もうなんとでも言って……」


 『白影』のシャーロットが用心棒をしている、大規模な商人隊が通りかかり、車体下でひっくり返って無の境地に達していた2人は無事に救助された。

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