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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十三章 扉

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エルーダ迷宮追撃中(報酬)27

 このなかで最後までエルーダ迷宮を攻略したのはサリーさんだけだったか?

「サリーさんのときはどうやって攻略したんですか?」

「マップ情報は見た?」

「変な日誌があるだけでしたけど」

「あれの通りよ。わたしは当時、下っ端だったから、リーダー任せで、付いて行っただけなんだけど。十パーティーぐらいだったわね」

「そんなに? 五十人以上?」

 精々二、三パーティーぐらいだと思ってたよ。十パーティーて……

「あんたたちはなんパーティーで攻略したの?」

「え? それは……」

 単独攻略しちゃ不味かった…… のかな?

 ロメオ君の目も泳いでいる。

 そうだよな。あの強さは翼とブレスの代わりにハンマー持ったドラゴンみたいなもんだからな。まずいな五パーティーぐらいにしておくか?

「リオナたちだけなのです。リオナがとどめを刺そうと思ったら、エルリンが先に倒したです。次はリオナがとどめを刺すのです!」

「ナーナ」

「『ヘモジが先』だって」

 オクタヴィアが通訳を入れた。

 場がシーンとなった。

「単独で? あれを単独で攻略したのか!」

 サリーさん以外はタイタンの強さが分かっていなかった。

 サリーさんは自分が過去、見たことを話して聞かせた。圧倒的な防御にどれ程、メンバーたちが苦労させられたかをこんこんと熱く語った。

 あれだな。明日マリアさんに説明するときの予行演習みたいなもんだな。ここはなんとか言いくるめないと。

「障壁の数は?」

 姉さんが話に介入した。

「五枚なのです」

 リオナの答えに全員が敵の強さを理解した。

 サリーさんは逆に自分が戦った相手が五枚持ちとは気付いてなかったようで、リオナに確認している。

 五枚と言えば、ドラゴン。再生能力と言えばドラゴンである。タイタンの強さは推して知るべしである。

 サリーさんのときで討伐までに要した時間は三時間ぐらいだったらしい。

 仲間が五回連続攻撃をした後に一斉攻撃を仕掛けていたことを思い出して、その意味を今になって理解したようだ。


「こんなにアイテムなかったわよ。わたしの分け前は宝石が五つだけだったわ。それでもいつもの稼ぎの何倍にもなって嬉しかったのを覚えてる」

「五十人で行ったのなら妥当なところだろ。宝石二百五十個だからな。どうせ亡骸は蜂の巣だったのだろ?」

 こんなに回収袋持って帰ってきちゃ、不味かったかな。でも三分の一はサンドゴーレムだしな。どうしよ。

「お前たちはどうだったんだ? どれくらい掛かった?」

 隣でちょこんと座っているオクタヴィアに尋ねた。

 あーッ、姉さん! それは駄目ッ! オクタヴィアには聞かないで!

「少し時間掛かった。ヘモジ二回叩いた」

「何分ぐらいかかった?」

「ナーナ」

 ヘモジが胸を張った。

「『二分かかってない』て」

 こらーっ、サリーさんが三時間て言ってるんだから、せめて「一時間ぐらい」とか言いようがあるだろ!

「二分?」

「障壁があると分かっていたら、最初から全力で行ったのです! そうすれば一分切れたのです」

 こらー、リオナーッ! 何拳握ってんだよ! 「運がよかった」とか言いようがあるだろ?

 一分は、いくらなんでも駄目だろ!

 ああ、姉さんがこっちを見てるよ……

 誰でもいいから、僕をこの場から逃がして!

「僕たちにはほら、万能薬があるから。いつでも全開でいけるからね。力を温存しなくていいから、それだけだよ」

 ロメオ君、ロメオくーん。さすが僕の親友だよ。僕の気持ちを分かってくれるのは君だけだよ!

「エルネスト、何か話があったんじゃないのか?」

 姉さんがわざとらしく、さりげない振りをして聞いてきた。

 ええと…… 小遣いのベースアップを…… 金…… いや、銀…… 十枚…… いや、三枚でも……

「どうした?」

「いえ、特に何も……」

 惨敗。



 アイシャさんは帰らなかった。

 翌朝はフィデリオが早起きして、食堂に顔を出していたので朝から賑やかだった。

 食べ残しの離乳食を摘まんだ。

「不味ッ!」

 僕も幼い頃こんな物を食わされていたのかなぁと、思いを馳せながら天井を見上げる。

 朝からフィデリオに追い立てられたらしく、オクタヴィアが梁の上で背中を丸めていた。

 ヘモジはミョルニルで既に応戦したようで、ふたりの間には序列ができあがっていた。

 今はふたり仲良く意味もなく廊下を周回しながら楽しそうに笑っている。

「若様、匿って」

 小声で声を掛けてくる。

「はいよ」

 オクタヴィアが降ってきた。

「お腹空いた」

 朝から大変だったな。


 僕は昨日の続きで、宝物庫の整理をする予定である。

『銀花の紋章団』の本部の金庫に荷物を一旦移す約束をしている。どうせなら領主館の宝物庫に運び込んだ方が早いのにと思ったのだが、ヴァレンティーナ様の宝物庫は仕掛けが複雑ですぐには開けられないらしくて、教えて貰えなかった。

 姉さんが迎えにきてくれると言うのでそれまで宝石の精製に勤しむことにした。


 地下に降りて宝石の入った回収袋を作業テーブルの脇まで引き摺っていく。

 サリーさんのときの報酬はちょうどこれぐらいだったんだなと思いながら回収袋の紐を解く。

 オクタヴィアが逃げてきた。地下はアンジェラさんに守られた聖域だからフィデリオも入ってこられないので安心だろう。

 作業テーブルの脇で丸まった。

 見られてると緊張するんだけどな。最初の石を拾い上げる。

「さすがにこのレベルになると不純物が少ないな」と感心する。が、石自体が大きいので結局、屑が出ることになる。その屑石のなかにも別の宝石の欠片が入っていたりするのでそれも分別しておく。

 停滞していたスキル上げもかすかに上がっているような気がした。

「確かに見たことのない石だな」

 調子が出てきたので、ヴァレンティーナ様が選んだ石の一つを拾い上げた。木箱に分けておいた内の一つだ。

 青い石は数あれど、ここまで鮮やかな青は初めてだった。不純物も殆ど入っていない。

 これだけは手を加えず、リオナの高級布の入った木箱に収める。どうせお抱え技師が加工するのだから余計なことはすまい。

 ヴァレンティーナ様の石では実験できないので、別の小さな青い石を取る。

 不純物は同様に殆どない。結晶も揃ってる。ほぼ完璧。

 それを更にいじくり倒すと透明度が増した。

 術式を施す石ならとことん結晶を揃えた方がいいのだろうけど、観賞用となると話は別のようだ。

「なんだ、ヴァレンティーナに送る石を加工してたのか?」

 突然、姉さんが背中越しに現われた。

 オクタヴィアが飛び起きた。

 箱に入れた石と僕が遊んでいた石を見比べた。

「お前、悪い方の石を送るつもりだったのか?」

「へ? 何言って――」

「こっちの方がいい石だろ?」

 僕が遊んでいた方の石を突き付けた。

「え? そうなの?」

「こっちの方が透明度がある」

「でも色はそっちの方が鮮やかだよ?」

「透明度が高い程、粒子が揃っていることを示してるんだ。だとしたら本来の石の色はこっちだ。それは不揃いで潰れていると言うんだ。確かにその色で透明度があれば言うことなしだがな」

「そうなの?」

「試しにうちの鑑定士に何も言わずに鑑定させてみろ」

 二つの石を僕に投げて寄越した。

「木箱はその後だ」


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