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エルーダ迷宮追撃中(報酬)26

「これって当たりなの? はずれなの?」

 ロザリアが聞いてきた。

「嫌がらせではあるな」

 目の前に転がっているのは金銀財宝選り取り見取りの宝の山であった。見たことのない色の宝石。各種金属の大きな塊。アダマンタイトの欠片まである。例の金属はなさそうだ。硬貨も回収袋に収まらないくらい大量に山積みになっている。それも金銀銅ごちゃ混ぜだ。

「一年分の稼ぎを一日で稼いだ気分だよ」

「去年だったら、一生分のって言ってたです」

「欲深になったかな」

「早く帰りたかったら、さっさと回収袋に。できるだけ分別して」

 ここを攻略した連中って、どれくらい儲かったのだろうかと、ふと興味が沸いた。

 明日、マリアさんに聞いてみることにしよう。いろいろと。

「その前に、今日は徹夜で仕分けだな、こりゃ」


 出口を探したら、部屋の奥に隠し通路が現われた。

 タイタンが倒れた拍子に、崩れた壁の亀裂の先にあった。

 例の文章の言った通りだった。出口はあった。

 僕たちは意気揚々と外へ出た。



 いよいよ宝物庫が資材置き場になってきた。

 宝石類を加工するのは取り敢えず後にして、食事までの間、ロメオ君も一緒に各種金属をまとめる作業をしている。

「銅は?」

「売却で。在庫は一箱あればいいよね」

「これ全部?」

「硬貨になるんだから、用途はあるよ。明日『銀団』に持ち込もう」

「銅貨はもっとあるのです」

「銅貨は引き取ってくれるのかな?」

「無理なら商業ギルド行脚ね」

「嫌な顔されそう」

「高い手数料取ってるんだから、枚数数えるぐらい何よ」

 金貨なら喜んで数えると思うけどな。

「銀は思ったより少ないな」

「アガタのところに回そうか?」

「了解」

「銀貨は? 商業ギルド?」

「銅貨だけじゃ恨まれるだろ?」

「それもそうだね」

「金は?」

「…… ロメオ君、金のゴーレム作る予定ない?」

「ないよ! 引き取らないよ! 家族全員卒倒しちゃうよ!」

「いっそ税金、延べ棒で納めるか?」

「そんなことしたら肉が減らないのです」

「なんだ、減った方がいいのか?」

「珍しいお肉がいつ手に入るか分からないのです! 倉庫には手頃な空きが必要なのです」

「金貨は? 金貨もギルドに?」

「どうせならこの町で処理したいな」

「ロメオ君のところにも商業ギルドはあるのです」

「数えるのたぶん僕だから」

「そうなの?」

「こういうのは持ちつ持たれつだからね。一番下っ端が駆り出されることになってるんだ。それに商業ギルドは全国区だから、町にうまみは余りないよ。冒険者ギルドのポイントにはなるけどさ」

「『銀団』か……」

「そろそろ小遣いの自由化を」

「エルリンには制限が必要なのです!」

「王様より大きな飛空艇作っちゃいそうだもんね」

「今思ったんだけどさ、あのなんとか言う金属使ったら船透明化できたんじゃないか?」

「だから誰が工事するんだって話でしょ?」

 ロザリアに突っ込まれた。

「そうだった」

「変な夢見たと思って忘れなさいよ」

「ナーナ」

「『手が止まってる』て?」

 お前らこそ金貨を積み上げて遊んでんじゃないよ。

「じゃ、金貨と金塊は『銀団』に。また姉さんに突っ込まれるよ」

「もう全部『銀団』に任せたら?」

「…… そうだな。面倒臭いもんな」

 どうせ姉さんにばれるんなら、中途半端に隠してもしょうがないよ。

「取り敢えず、上限アップを目指そう」


 その夜、姉さんを夕食に招いた。

 すると芋蔓式にヴァレンティーナ様とサリーさんとルチア嬢が付いてきた。

「それで話というのは?」

 デザートのウーヴァの皿を平らげると本題に入った。

 僕たちは地下の宝物庫に姉さんたちを案内した。

 宝物庫前には入りきらない回収袋十数個が転がっていた。

 そして満杯の宝物庫。壁の棚はすべて金とミスリルの塊。床には魔石と宝石が満載の回収袋の山。

「何これ?」

 姉さんが言った。

「今日の狩りで遂に溢れてしまいました」

「何狩ったらこうなるのよ?」

 ヴァレンティーナ様も目を丸くして周囲を見回した。

 僕がテーブルに置き忘れた宝石を明かりに透かして覗いた。青色の初めて見る石だ。

「サンドゴーレムとタイタンなのです」

 全員が各々回収袋の中身を覗いて回った。

「そっちの金塊と外の袋のいくつかはサンドゴーレムから回収した物で、残りの回収袋はタイタンから」

「この棚のミスリルは?」

「宝石集めてたら増えた」

 オクタヴィアが寸足らずな説明をした。

「宝石集めてるときに一緒にね」

「この量がおまけ?」

 サリーさんが呆れた。

 どっちがおまけかは主観でしかないけどね。

「少しずつアガタの所に出してるけど、高価な物だし、そうそう売れるものじゃないからね」

 溜め息をつかれた。

「この量はさすがに消費しきれないわね。教会にはもう充分売り付けた後だものね」

「こっちの金塊もですよ」

 ルチア嬢が棚を見詰めていた。

「ある所にはあるものですね」

「装備類がなんにもないな」

「だって必要充分揃ってるし」

「『紋章団』で買い取ってあげるけど、考えて狩りしなさいよ」

 そう言われても…… こっちは順番通り攻略を進めてるだけだし。

「ヴァレンティーナの船もミスリル化したらどうだ? 親父が食い付くかも知れんぞ」

「旗艦建造で悲鳴上げてるわよ」

「あんな馬鹿でかい物、作るからだ」

「え?」

「なんだ、知らなかったのか? ギルドのA級、S級依頼を見てみろ。ドラゴン討伐依頼が出てるから」

「三艇分じゃなかったんですか?」

「その予定だったんだけどね。献上やら何やらで予定以上にドラゴンが手に入ってしまってね」

「それで十個分の肺を使った船を造ることになったわけだ」

「十個!」

 僕たちが驚く番だった。あのダンディー親父……

「数を増やすこと考えなかったのかしらね」

 ヴァレンティーナ様も呆れ顔だ。

「小回りが利かないと的にしかならないんじゃ」

「火力で補うんだろ?」

「結局重くなるだけじゃ」

「お考えがあるのでしょ」

 ないことはここにいる全員が知っている。ただでかいのに乗りたいだけだ。

「でもよかったのです。王様が十個なら、エルリンが後二個ぐらい増やしてもばれないのです」

 聞いてなかったのか? 図体でかくしたら小回りが利かなくなるんだよ。

「今のところ、ミスリルの買い手、最有力候補は王様ということだな」

「絶対変な条件付けてくるよ、きっと」

「要は落とし所よ。国民の支持が得られるかが問題なの。『散財しました。ごめんなさい』じゃ済まないでしょ?」

「王の小遣いで作るわけではないからな。世論は無視できんというわけだ」

「高価なミスリルを買わせる以上、賛同しないまでも、致し方なしと思える程度の説得は必要なのよ」

「メリットをあげつらうしかないな。無理ならそれまでだが。ヴァレンティーナの船をミスリル製にする予定だと言えば、恐らく乗ってくるだろう。既にお前の船はミスリル製だしな。折角でかい船を造っても威信が保てなければ意味ないからな」

「なら早い方がいいよ。工房も迷惑するからさ」

「そうね。今夜中に話だけでも通しておきましょう。宰相の胃に穴が開かなきゃいいけど」

 ミスリルの話は駄目元ということでお願いするとして、もう一つの問題に移った。

「金塊は売らずに残しておいた方がいいわね。現物資産として有効だし。収まりきらない分は町の金庫に放り込んでおきましょうか?」

「そうだな」

「ギルドを通して時価で町が引き取りましょう」

「両方に手数料が入るわけね」

「ギルドを通した方が税金が安上がりなんだ。お前の場合最高税率が掛かるからな」

「よろしくお願いします」

「その代わり、少し見せて貰うわね。珍しい石が随分あるみたいだから。それと税金は現物でも構わないわよ」

 皆、吹き出した。

 ちゃっかりしてるよ、まったく。さすがリオナの姉さんだ。

 一つしかない石なら記念にとも思うが、幸いどれも複数あるようだから問題ないだろう。アイシャさんにも見て貰って、それでいらないようなら全部渡したって構わない。

「それにしてもタイタンからこんなに出たかしらね?」

 サリーさんが言った。


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