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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中(予行演習)33

 地下を進むと天井に大穴が空いていた。

「空が青いのです」

 赤く燃えた世界から突然現れた青い空は目に心地よい感覚を与えた。

 それにわずかながらではあるが風も流れている。

 突然、ドンという地響きがして、周囲の壁や天井が揺れた。

 穴から見える景色の先で噴火した真っ赤な溶岩が見えた。

 背筋が凍った。

 が、僕たちからはかなり距離がありそうなので胸を撫で下ろした。

「びっくりしたのです」

 僕も深い溜め息をついた。

 洞窟の穴から熱風が吹き込んできた。

「こっちには進むなということかな?」

「残ってるのはあっちなのです」

 別の穴を指した。

「出口分かるか?」

「今ので分からなくなったです。音がグツグツうるさいのです」

 熱風の来なかった穴に入るしかなさそうだ。

 洞窟は決して直線的に規則正しくあるものではない。上に伸びていたり、下っていたり様々だ。右に行くかと思えば左に、上に向かうと思ったら下に、下手をすると向かっている方角とは逆に戻っていたりする。

 出口のある方角は分かっているのだが、今の噴火で進路は完全にロストした。進む予定だったルートが見事に塞がれたのだ。

 さすがのリオナもこれにはお手上げである。

 熱風の来ない方に進むしかない。その内どこかで予定ルートに繋がるかも知れない。


 しばらくうねうねと洞窟内を歩いた。

 さすがに同じ景色にも飽きてきた頃、遠くで石が崩れる音がした。

「敵だ」

 僕のささやきにリオナは頷いた。

 火蟻だった。まだこちらは発見されていない。

 これもリオナが狙撃して仕留めた。

 巣穴がすぐ後ろに空いていたので僕は即行で塞いだ。

「危なかったのです」

「大事にならなくてよかった」

 昨日の感じだとまだ火蟻が出てくるエリアではない気がするが……

 地面が冷えてきたせいで洞窟のなかが暗くなってきた。

 僕は懐中電灯を点けた。

 上り坂を抜けた先に出口を見つけた。

 上層に出るとリオナが位置の確認を始めた。先の冒険者の匂いでも探しているのだろう。

 地図を覗き込んだ。

 どうやら出るべき出口から少し先に出たようだ。

 もう目と鼻の先が切り立った段差の多い荒野である。


「ここを下りないと火蟻の大群と出くわすんだよな?」

 入口の前で躊躇した。

「そもそもあれだけの数、地下に巣くってるわけだし…… 本当に地下の方が御しやすいのか?」

 要は一度に出てこないと言うだけだろうが、探知能力高いからな。あっという間に囲まれて同じ状況になるような気がしてならない。

 近場で噴火が起きるのを待った方がいいのかな?

 でもそうなると進路がまた変わったりするかも知れない。せめて進路が固定されていればいいのに。毎回変わるんじゃ、探索の意味も半減する。

「覚悟を決めていってみるか!」

 空を行きたいところだが、本日は地下経由と決めている。

 僕たちは再び、洞窟のなかに入っていった。


 入ってすぐにリオナは出口を見つけた。

 安心していたら予想外のことが起こった。

 進むべき道がなくなっているのである。

 目の前には進んだら最後、引き返せない程深い段差があった。

「罠っぽいな」

「どう見ても罠なのです」

「火蟻が一気に押し寄せてきそうな気がする」

 懐中電灯で向こう側を照らすが、今のところ出口は下の方にある一箇所だけだ。

 僕は壁に手を当て土魔法を使って、壁を強化しながら周囲を探る。

 すると壁の向こう側に別の空洞を見つけた。

 向こうにあったのは火蟻の巣穴で、一押しすれば崩れそうな程壁は薄かった。

「やっぱりそうだ」

 僕は念入りに周囲を固めた。思い切り硬化させた。

 ついでに足元の段差に緩やかなスロープを作った。

「よし、大丈夫だ」

 僕たちはスロープをゆっくり降りながら消音や消臭魔法を掛けて音を立てないように進んだ。

 底にある出口まで着たところで、また大きな振動が伝わってきた。

「噴火したです!」

 正面から熱風が吹き込んできた! それだけではない。煌々と燃え盛った溶岩が迫ってくるのが見えた。

「やばい!」

 僕たちは急いで後退しスロープを駆け上った。

 このタイミングであの穴を開通したらどうなるだろうかと考えた。

 僕は魔法を壁の周囲にぶち込んで、壁ごと崩落させた。

 蟻がキーキー言いながら次々姿を現わした。が、流れ込んできた溶岩が容赦なく彼らを襲った。溶岩流はどんどん穴を削って巣穴の方に流れ込んでいった。

 深い段差に溶岩がどんどん溜まっていった。溢れたらこっちも危ないのだが、どうやら溢れることなく、出入りのバランスが取れているようだった。

 やがて溶岩の流入が止まり、巣穴のあった高さまで浅くなると、次第に固まり始めた。

 とても進める状況ではなかった。

「引き返すしかないのです」

「さすがに地上に這い出してくることはないだろうな」

 僕たちは入口まで戻り、地上のコースを結局進んでいる。

「まったくなんだったんだ。火蟻を罠に掛けただけか?」

 殲滅させる手間を考えれば楽だったかも知れないが……

「あの壁は破壊するのが正解だったです」

「次があればそうしよう」

 あの場所が固定トラップならそれでもいいかもしれない。

 さて、一箇所出口を飛ばして、その先の入口を目指すか、出口に設定していた箇所から入って入口だった場所から出た方がいいのか、分からなくなった。

 取り敢えず近場から確かめることにした。

 道中、警戒していたが火蟻は出てこなかった。代わりに火蜥蜴が数匹出てきただけだった。

「あったのです」

 予定していた出口を覗くと穴が溶岩で塞がっていた。

「分かりやすいのです」

 これを親切と言っていいものか……

「次行って見よう!」

 この辺りから先は前回転移してしまったので探索していない場所だ。高台から洞窟入口のある方角を調べ、進むべきルートを決める。

「ほとんど直進なのです」

 洞窟という目印があるだけで、あれ程複雑に思えた地形が至ってシンプルな構造に見えてくる。

 引き返した分時間を少しロスしていたので、僕たちは少し足を速めた。

 日が差してきた。雲間が見えた。

「どこだ?」

 噴火するのはどの辺りだ?

 進入禁止エリアが正面から近付いてきた!

 そして空高く火柱が上がった。


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