表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
697/1072

エルーダ迷宮征服中(予行演習)30

 黒い大地を行くと、所々地面に大きな穴が空いていた。

「下が見えるよ」

 ロメオ君が言った。

 僕たちが下を覗き込むと、赤く染まった空洞が広がっていた。

 冒険者たちが言っていた地下洞窟には溶岩が流れていた。

「ここにいるだけで蒸し焼きになりそうだな」

「あれ、歩けるの?」

 地下の状況は地上より悪化していた。

「落ちたらダメージあるのかな?」

「あの上はさすがにまずいのです」

 真下に落ちたら助からない。当然進入不可エリアのはずだが…… さすがに試したいとも思わない。

 仮に落ちても冒険者たちがいた洞窟のような合流ポイントが結構ありそうなので、生きていれば地上に戻ることは可能である。

 見た限り、地下は地上以上に歩ける範囲が制限されているようだった。

 一方、僕たちの進む先でも覗き込むことができない穴があった。

「あれ?」

 まさかと思って天を見上げると澄み渡る青い空が……

「ああ!」

 間欠泉のように大穴から溶岩が吹き出した。

「うわっ!」

 僕たちは急いでその場から退避した。

 そして思った、洞窟を行っていたら大変な事態になっていたのではないかと。噴火する度に黄金色に輝く溶岩の洪水に見舞われていたのではないのかと。

 このフロア、所々マップ情報が欠けているが、どうやら噴火する度に地形が変わっていたからのようだ。

 だが、ここでおかしな事態になった。

 穴を覗こうと噴火が終わった穴を冷やすと、驚いたことに進入禁止エリアが後退したのである!

「ええ? もしかして禁止エリアが押し戻せるのか?」

「そんな馬鹿な!」

 僕もロメオ君も他のみんなも呆気にとられた。

 本来、許容範囲を超えて迷宮自体を傷付けることはできない。下手に干渉してはいけないし、やったら『闇の信徒』がやってくるはずなのだ。

 なのに、ここでは積極的に干渉することを推奨しているように思えた。

 勿論限度を超えてはいけないだろうが…… これだけ傍若無人な環境ではそれも難しそうである。

 おかげで、穴の縁まで侵入が可能になった。

 しかも覗き込むと今度は穴の下を覗くことができた。

 穴の底はまだ赤く輝いていて、表面にかさぶたができかけてはいたが、まだ波立っていて歩ける状況ではなかった。

「あれを凍らせて進めってことなのかな?」

「無茶振りだよね」

「さすがにそれはないと思いますけど」


 もう地下のことは置いといて、自分たちの立っている場所のことを考えよう。地下は下見段階の僕たちにはハードルが高過ぎた。

 僕たちが行き着いた場所は見渡す限り何もなかった。あるのは風化と隆起を繰り返した岩棚で構成された溶岩台地だった。

 かさぶたのような層が幾重にも重なり山となり、冷やされて亀裂が入り、滑落して谷になった。切り立った岩肌のせいで相当不便な移動が予想された。

 マップを見る限り、大まかな方向は丘を越えた向こうにありそうだった。ゴールは思いの外遠いが、見晴らしだけはいい。人目がなさそうだからこの辺りから転移してしまうのも手だ。

 ただそうなると一時的にどちらか一方に結界を張る者がいる。

 当然アイシャさんが務めるのだが、僕は改良したキューブを手渡した。

 だがそこで僕たちは敵に見つかってしまった。

 見晴らしがよかったのは敵も同じだったようだ。

 敵は火蜥蜴だった。

 一段下の棚にいた火蜥蜴が素早い動きで近付いて来たが、僕たちの足場に来るには大きく迂回しなければならない。

 ぐるっと回り込んでくる間に集中攻撃で倒した。


 周囲を見渡して、敵を見つけると射程が届く範囲で始末していった。

「敵が多いって言ってたのに、そうでもないな」

 拍子抜けしているとロメオ君がマップを取り出した。

 目の前に大地を切り裂く巨大な裂け目が横断していたからである。

 事前情報ではあの大きな裂け目を渡った先からが本番らしかった。

 でもここには仕掛けがあった。

 裂け目には石橋が三つ架かる場所があって、どこに橋が架かっているかは当日にならないと分からないと言うものだった。

 面倒臭い仕掛けであるが空に上がって見下ろせば一目瞭然なので、僕たちには障害にはならないだろう。

 今は比較的高い位置を歩いているから見晴らしに問題ないが、先に進むと高い壁に囲まれた迷路のような低い場所に降りることになるので周囲は余り見えなくなる。

「あの辺りでルートを確認して、あの丘の辺りでもう一度ってとこかな?」

 ロメオ君が言った。

「あの丘が明日もあればじゃがな」

 橋を渡りさえすればマップはある。地形の変化はなくなるということだ。

「敵は橋を渡った先から格段に強くなるらしいですから、この辺りの敵はスルー……」

 しゃべってる途中で敵が来た。

「火蟻だよ!」

「嘘……」

「不味いな」

 レベルは五十台ということは数で来るということだ。

 火蠍と同じ粘液攻撃。しかもこっちは爆発系。

 確かに数が多いとは言ってはいたが……

 拍子抜けしていたロメオ君もこの数にはさすがに呆然となった。

 攻略法は分かってる。

 結界で押しとどめながら、粘液の射程になったら……

「雷爆!」

 群れのど真ん中に雷をぶち込む。

 すると麻痺して、次々粘液を喉に詰まらせ、周囲を巻き込んで自爆していく。

 火の魔石(小)しか落とさないので深く考えない。

「……」

 五十台でも小なのか?

 興味が湧いたので少し調べてみることにする。


「なかなか殲滅できないのです」

 リオナが泣き言を言った。

 僕はまだ粘液を吐き出す距離にいない数体をダメージ最小限で仕留めるようリオナに言った。

 リオナは期待にこたえてライフルで敵の頭を撃ち抜いた。

 あとで回収しよう。

「多過ぎるよ」

 ロメオ君も愚痴った。

 確かに無限に湧いてくる。相変わらず加減を知らない奴らである。

「出てくる穴を塞がないと駄目か?」

 後で行き掛けに出会った冒険者に尋ねたところ、あの蟻は本来下層にいる奴らなのだそうだ。たまに地上と繋がってああなるらしい。噴火に巻き込んでやれば、出てこなくなるそうだ。

「どうすればいいかって? そりゃ、穴に爆炎でも叩き込むんだな。魔法使いなら簡単だろ?」

 打ち止めまで倒しまくった僕たちに冒険者は「ご苦労さん」とねぎらいの言葉を掛けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ