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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中(レイス討伐編)13

『アレッタ・レイス レベル五十』


「五十?」

 全員が首を傾げた。階層のレベルからいって十も下だった。

「これって……」

「まずいな」

 アイシャさんが呟いた。

 全員その意味を知っている。足りないレベル分はなんらかの方法で補われるということを。装備であったり、数であったり、特殊なスキルであったり、環境であったり。

 アレッタ・レイスの場合、それはほぼ確定している。それは数。使役するレイスの数だ。

 レベルダウン十を補う数となると……


 アレッタ・レイスが長い爪を生やした手をかざした。

 衝撃が辺り一帯を襲った。

 城壁の一部が吹き飛んだ。が、僕の結界は健在だった。

「危なッ!」

「『ハウリング』じゃ。結界がなきゃ、意識を飛ばされておったな」

「封じ込め、行きます!」

 ロザリアが前に出た。

「了解! みんな行くぞ」

「五…… 四…… 三…… 二…… 一!」

 ロザリアが聖結界でアレッタ・レイスを封じ込めた。

 僕の方はアレッタ・レイスを今の距離から近づけないように『完全なる断絶』を広範囲に展開した。

 ロザリアの結界を打ち破ろうと、アレッタは衝撃の第二波を放った。

 この程度の攻撃は見慣れているので怖くはない。

 ロザリアも結界を解くことはなかった。

 怖いのは目に見えない『生命吸収』だけだ。恐らくアレッタ・レイスの『生命吸収』はオクタヴィアでなくても、食らえばイチコロだろう。絶対に射程に入れるわけにはいかない。

 既にロザリアの聖結界のダメージは入り始めている。

 やはり、標準パーティーなら光の魔法使いが最低でもふたりは欲しいところだろう。安全を期すなら三人だ。教会予備軍の助っ人に入って貰ってクリアーするのが一番安全な策だろう。

 咆哮と共に城壁が更に大きく崩れた。中門のアーチが吹き飛んだ。

 アレッタの後ろの壁が崩れて、外の景色が飛び込んできた。

 同時に虚空から十五体どころではない、レイスの大軍が城壁の外に現れた。

 破壊された表門から郭の辺りに沸き上がり、ゆらゆらと揺れている。

「これは、反則だよね」

 ロメオ君が呟いた。

 僕は『生命吸収』されないだけの距離を改めて確認し、気合いを入れ直した。

 そして一網打尽にするべく、ポケットの『眩しい未来を貴方に!』を握りしめた。

「村人総出演なのです」

 リオナは落ちている銀の矢を拾っては弓を射た。

 姿を現わし始めた一体に見事に命中して、昇天させた。さすが狩人。

「ギルドに報告することばかり増えるのぉ」

 アイシャさんは軽口を叩きながら、リオナが実体化させたレイスを仕留めていく。

「これじゃ誰も後追い調査してくれないわよ。絶対」

 ナガレが雷を落とした。数体に命中して動きが止まった。

 ロメオ君がまとめて爆炎で跡形もなく吹き飛ばした。

 残ったレイスが怒り狂ってロメオ君目掛けて襲い掛かる!

 そして一斉に虚空に消えた。

「来るぞ!」

 と思ったらすべてのレイスが手前に姿を現わして、悶え始めた。

『眩しい未来を貴方に!』や『完全回復薬』の浄化作用がまだ残っているのだ。

 僕の結界もしっかり効いているから、レイスは為す術がない。消えて引き下がった。

 だからと言って、こちらの攻撃が緩むことはない。

 一体、また一体と数を減らしていった。

「ちょっと……」

 ロザリアが呟いた。

 アレッタ・レイスが再び叫んだ!

 すると再び、レイスの軍団が……

「まさか、無限湧き?」

「ちょっと、こっちの魔力が」

 ロザリアが回復のために万能薬の小瓶を飲み干した。

 同じタイミングでアレッタ・レイスは咆哮を上げて空気を振動させた。向こうも間隙を狙っていたようだ。

 銀の粉は払われ、浄化作用のあった地面も効果を消されてしまった。

 レイスが再度襲いかかろうと近づいてくる。

「大丈夫。順調」

 オクタヴィアが僕のリュックから頭だけ覗かせて言った。

 確かにアレッタはダメージを蓄積させていた。

「でも思ったよりしぶとい」

 普段、照明係に甘んじているが、ロザリアの魔力も出会ったときに比べて遙かに成長している。照明を朝から晩まで、無補給でともし続けられる魔法使いが一体、この世に何人いることか。しかも平行して攻撃や結界まで平然とやってのけるのだ。ロメオ君の制御力も大概だが、ロザリアも負けてはいない。

 兎に角、そんな彼女の魔力を食い尽くして尚、膝を屈しないとはどう考えても標準を超えている。レベル五十でこれだけ強いと言うのだから末恐ろしい。末があるかどうかは知らないが。

 僕は『眩しい未来を貴方に!』をアレッタに向けて投げつけた。

 周りの連中と一緒に巻き込んだ方がアレッタの消耗も早いだろう。

 逃げ切れなかったレイスは次々、昇天していった。

 姿を消して回避したレイスも姿を現わすと残光に捕まった。そして見えない壁に阻まれたまま近づくこともできずに消えていった。

 銀の粉をまた散布し直した。そして残存するレイスに向かって総攻撃。

 三度目の咆哮が空に轟いた。

 再びレイスの軍団が現れた…… と思ったら皆煙のように昇天して消えた。

「作戦終了よ」

 ロザリアが額を拭った。と同時にアレッタ・レイスの姿が消滅した。

「はーっ」

 全員、大きな溜め息をついた。

 周りを見回すが、領主の姿も兵士の姿もなかった。

 取り敢えず、アレッタの遺体の確認に向かった。

 胸元にネックレスが輝いていたが、禍々しさが消えていた。

 アイシャさんがネックレスを外した。

「呪われてない?」

「否、もはや別物だ」

 僕に鑑定してみろと手渡した。

 すると――


『アレッタの首飾り、あらゆる状態異常を起こす攻撃を無効化する。こちらの状態異常攻撃の成功率を倍にする』


「これって…… どうなの?」

 僕は尋ねた。正直、今更感で一杯だった。

「一個だけですか?」

「そうみたいだな」

「命がけの割には少ない実入りだな」

「何言ってるんです! これがあれば誰だって、第一線に立てますよ」

「全員似たような装備、もう着けてるじゃない」

「でも、ジャラジャラ着けなくても一個で済むのです」


 誰のものにするか話し合った結果、最大の功労者、ロザリアが使うのがいいという結論に達した。だが、曰くの付いたネックレスは着けたくないと断られたので、一番の犠牲者に贈られることになった。


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