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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中(レイス討伐編・攻略再開準備)1

新章突入です。

 パスカル君たちがいなくなってから十日。船の一日も早い完成を夢見ながら、ミスリルを工房に運び込んでいると、棟梁から「もう充分だ」と言われて、突然やることがなくなった。当然、改装中だから船も使えない。

 一方、リオナたちは資金を投入して装備のアップグレードにいそしんでいた。

 そろそろ攻略を再開する時期じゃないかと、なんとなくみんなそんな気になっていた。

 そこで、全員揃って安全率の再評価と、これからの対戦カードを吟味して、更なる深度への攻略を再開する決定を下した。


 安全評価はまず、装備からである。どれくらい安全のマージンを取っているか話し合われた。

 僕の装備は基本的にドラゴン装備になった以外は何も変えていなかった。装備付与のための宝石をすべて、現在作れる最高ランクの物に切り替えただけである。付与だけなら従来の二倍ほどの強化となる。もはや常時ヘルメス装備状態だ。これなら今後の攻略にも充分耐えられるだろうと評価された。

 例の危ない杖に関してはパーティー使用を自主的に禁止した。

 ジュエルゴーレム狩りは、船の改装に必要なミスリルが集まったので、宝石回収に目的を変えたが、宝石の加工転売が今の僕の一番の資金源である以上、ジュエルゴーレム狩りをやめることはできなかった。なので、杖もひとりのときは積極的に利用していくことに決めた。便利なことに変わりないのだから。より緻密なデーターを集めるためにもやめられない。それに成長した先に別の何かが見えてくるかもしれない。

 取り敢えずパーティーでの使用は禁止である。

 ちなみにトレントの杖を使用するのはロメオ君だけである。

 僕もアイシャさんも武器は剣だし、ロザリアも当分グングニルを使い続けるらしい。

 ロザリアはグングニルの障壁貫通能力が捨てがたいらしく、代用ができるようになるまで杖の成長を見守りつつ、切り替えるかどうか判断するらしい。

 あとはリオナだが、リオナは余り気にせず、よく切れる解体用のナイフとして使っていくそうだ。

 なんだかんだ言って、余力のあるロメオ君以外、実験段階の物を実戦投入する気はないということである。姉さんも元々、実戦用に作ったわけではないし、嫌な顔はしないだろう。むしろ僕の杖の一件で自分の研究に手応えを感じているんじゃないだろうか?

 武器もそうだが、装備の方も皆それぞれ、路線はほぼ一緒であった。

 付与効果の増強と、材質の確認を行なって、僕の装備同様、合格点を貰った。

 ただロメオ君の『闇の使徒』の装備だけは力不足になりつつあったので、姉さんが飛び切りいいものを用意した。魔法の塔の制服と同質の素材を使った衣装だった。さすがに同じ物とはいかなかったようだ。そして僕たちの装備同様、『ほとんどヘルメス装備』仕様に改良されたのであった。


 さて、ここまでしても地下四十一階層を攻略するには心許なかった。

 それはそもそも攻略を打ち切った最大の要因がそこにあったからである。


 敵の名はレイス。ゴーストの仲間で悪霊である。肉体と分離した生き霊が戻れなくなった存在だと言われている。そんな蘊蓄、だからどうしたということなのだが。

 とにかくレイスは冷気攻撃を主体とし、病気などの状態異常を併発させる典型的なゴーストタイプであった。ただし、こいつの持つ『生命吸収(エナジードレイン)』のスキルだけは厄介この上なかった。

 それこそがレイスの最大の特徴であり、僕たちに足踏みをさせた最大の要因であった。

 四十階層を超えるとさすがに、汎用装備で立ち向かうには厄介な敵が増えてくる。つまり専用の装備が必要になってくるのである。今回のレイスはまさにそれだった。

 本来、冒険者は霊だとかを討伐するには向いていない職業だ。大体が力自慢か体力馬鹿な連中であるため、攻撃力を意に介さない幽霊を相手にするには分が悪かった。死んだ後のことは大概、教会の領分というのが暗黙の了解であった。

 勿論、冒険者だから攻略できないと言うことではない。

 そのために僕たちは対策を講じているのである。

『生命吸収』を持つ魔物は少なからずいるが、レイスが厄介なのはその特異性にある。

 本人の精力? がある間はレイスの『生命吸収』はさほど怖くない。吸われたところで気が付かないぐらい大したことないのだ。ただ、瀕死のレイスが仕掛けてくる『生命吸収』は起死回生、一発逆転の一撃となるのである。

 レイスは精力? がないほどに強力なカウンターを仕掛けてくる。

 以前のリオナの体力なら、一撃で即死だったろう。オクタヴィアは言わずもがなである。

 しかもふたりともアンデット戦においては外せない索敵担当であるから、失えばこちらは視覚を奪われたも同然。脱出しなければ壊滅も視野に入ってくる。恐らくそうなれば、血が頭に上ってそれどころではなくなるだろうが。

 そこで、ふたりの強化が何より必要になってきたのである。

 例えドラゴン装備であっても防げないのがこの手のアンデットの攻撃である。が、付与効果によってリオナの体力は三倍になっている。もはや、一撃で沈むことはない。オクタヴィアは…… きょうのために用意したネックレスの山と、お守りを持って、僕の結界のなかにいて貰う。


 僕たちは朝のミーティングを兼ねて、振り子列車のなかで久しぶりに全員でお茶会をしていた。

「『銀の粉』持ったのです」

「こっちも装備完了だ。粉の予備はいくらでもあるからな」

 僕たちは全員、銀の粉の入った袋を腰ベルトに括り付けた。

「これをレイスに振り掛けてやれば、レイスは姿を消せなくなります。同様に銀の矢も有効です」

 ロザリアの聖結界のなかに足を踏み入れた時点で、レイスは瀕死の重傷を負うことになるが、ゴーストと違って、レイスには起死回生の一撃がある。まとめてこられたら、専門家のロザリアでも保たないだろう。そこで、いつも通り接近される前に叩く、という基本に立ち返ることになる。

 僕の結界はゴーストにも有効であるが、『生命吸収』を跳ね返せるのかと言われると、やってみないと分からないとしか言えなかった。跳ね返せれば、戦闘は大分楽になるが、できなければ対策が必要だ。

 そこでその対策として、今回は状態異常をトータルで十割防ぐアクセサリーを用意した。

 オクタヴィアにも首輪と腕輪と足輪。尻尾に金環と、どこぞのいかれた王様が飼っている、気の毒な猫のような格好をしている。

 殲滅は火と光魔法で行くので火力に問題はない。リオナも今日は『霞の剣』である。手数はある。


 地下四十一階層は鬱蒼とした森のなかだった。時は夕刻、怪しい赤い空だった。


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