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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十一章 夏休みは忙しい

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夏休みは忙しい(パスカル君と夏休み)78

 さあ急いでエルーダに戻らないと。

 ポータルで転移してエルーダ村に入り、裏山を登り、駅のホームに向かった。

 着くと早速、僕は荷物を並べ始めた。

 残していく物は持ち出せない大物だけにする。

 棍棒の香木はそのままではまずいので手頃なサイズに切り分けた。アイシャさんが手頃な大きさにしてくれた玉座の金塊もわざわざ自然に転送したように見せかけるためにゲートに一旦通して、同心円状に配置し直した。回収袋にまとめた宝飾品類も置いていく。放り込むタイミングはランダムなはずなので、均一にならないように注意した。丸めた織物なども無造作にゲートに通した。

「よし、大体放出したかな。後は個人で持ちだしたことにできるだろう」

 作業が終ると、迷宮の脱出ゲートから出たように装って、村まで戻った。

 このまま帰るのもなんだな。

 転移ゲートを見つめた。

「ミスリル回収していくか」

 僕はジュエルゴーレム狩りに向かった。


「どこまで進化するか見せて貰いましょう」

 ライフルは封印してその分杖に頑張って貰うことにした。

 作戦は、やはり、敵の被害を最小限に抑えながらということになるので一撃必殺は変わらない。一撃で核を破壊する方向でいく。

 ただ、精密さがね…… ここは範囲魔法で、しかも破壊しない方向でいけないものか……  そんなこと可能なのか? 矛盾してやしないか?

 破壊しないとなれば、衝撃系の魔法だろう。内部だけを破壊するとなると、思い付くのはそれだけだ。近付けば、いくらでも対処のしようがあるのだが、魔法と言えば遠距離攻撃、遠距離攻撃と言えば魔法だ。

 使う魔法は衝撃波の指向性モード。異世界の知識のなかにある、オタク兵器のアイデアを拝借することにする。オタクが何かは知らないが。工房の名前か何かだろう。

 物質には固有振動というものがあって、どんな硬い物でも共振させることによって破壊できるという信じられない理論がある。しかも破壊するのは共振を起こした物だけだと言うから、これがうまくいけばミスリル集めは恐ろしく楽なものになる。

『魔弾』とどっちが便利かはやってみないと分からないけれど……

 空気を振動させればいいのか? それでは効率が悪そうだが。かと言って直接手で触れてと言うのは本末転倒だ。

 ちょっと試すか。

 近場の眠ってるゴーレムの核を探るとすぐ見つかった。胸の心臓の位置に埋まっていた。

 あれだけを狙って共振させればいいんだよな。

「…… よく分からない」

 やかんが沸騰したとき、ガラスのコップや窓が振動するあれらしいのだが。振動を与えればいいんだよな。

「やばッ!」

 ゴーレムが起きてしまった。

 僕は杖を構えて衝撃波を放った。単純な衝撃破壊だ。周辺の部位を巻き込んで核をぶち抜いた。

「あちゃー」

 損害大である。

 そう言えば、唸るのも共振らしいが。

「あーあー」

 自分で空気を振るわせてみる。

 うーん、できそうなんだけどな……

 亡骸が宝石に変わったので回収がてら、一つ破壊してみることにした。

 手のひらに載せて与える振動の間隔を徐々に変えてみる。

 イメージ…… イメージだ。

『鉱石精製』のスキルも相俟って、なんとなく感覚で分かってきた。

 突然、ひびが入った。

「うわっ!」

 力を加えていないのに…… 簡単に真っ二つになった。

「これかッ!」

 もう一つ宝石を出して試した。同じ振動では破壊できなかった。これが固有振動か。それぞれの材質ごとに違うという。更に振動を増したとき、こちらもきれいに亀裂が入った。

 結構厳しいな。

 僕の一番苦手な細く長くの典型だ。

 魔法制御の修行にもなるな、こりゃ。

 苦手意識の克服に努めよう。

 兎に角、倒してからじゃ試せない。

 地道に行こう。

 それからしばらく僕は破壊の鬼になった。起きてきたゴーレムに大きな風穴を開け続けた。

「よし、この振動域では破壊できない」

 独り言も多くなる。

「次はもう少し振動を小刻みに」

 僕は振動を与え続けた。


 それから何回かしてのことだった。

「あれ? 起きない?」

『一撃必殺』の反応も消えた。

 大きな石の人形が直立したまま動かなくなった。

 うまくいった?

 隣りの奴の反応も絶えていた。

「あれ?」

 もしかして二体一緒に?

 三体目のゴーレムにはまだ反応があった。

 振動の感覚を思い出しながら、核を砕くメージをし続けた。

 反応が消えた!

「やった!」

 さて、これを杖を使って…… どうすりゃいいんだ?

 増幅してやればいいのか? 範囲魔法みたいに広範囲で起こしてやれば。

 突然、杖を持つ手に痺れが走った。

「痛っ!」

 思わず杖を落としてしまった。

「え?」

 僕は拾い上げる手を止めた。

 つ、杖が…… 変化した!

 ウィスプのコアを巻き込むようにして固定していた柄の先端が消えてなくなっていた。代わりに串に団子を刺したような形状になっていた。

 こりゃ…… なんだ?

 ウィスプのコアの周りを三つ、光る輪っかが回転していた。しかもどれ一つとして、どこにも接触していなかった。どんなに振っても落ちないし、ずれたりもしなかった。触ろうとしても幻影のように通り過ぎてしまって、触れることができなかった。

 とうとうおかしな領域に突入してしまったか?

 まあ、僕に合せて変化したのなら使いやすくなっているに違いないが。そう思って早速試してみることにした。杖の先を次のブロックにいる三体のゴーレムに向ける。

「核を破壊しろ!」

 輪っかの形状が変化した。三つの輪が一枚の円盤のようになってそれぞれが目の前で回り始めた。

 そして輝いた。一瞬見えたのは紛れもなく魔法陣だった。

 数秒して光は消え、輪っかの形状は解除され、三重の輪に戻っていた。

「なんだったんだ?」

『一撃必殺』で確認すると三体とも反応はなかった。

 しまった。壊してからでは核の位置がわからなかったんだ。まず核の位置を確認してからでないと。

『一撃必殺』でコアの位置を確認すると、壁に並んでいる三体のゴーレムに杖を向けた。

 杖の輪っかが再び形状を変えて光を放った。そして前回同様、すぐに光は消えた。

 僕は急いでゴーレムに近付いた。そして核のあった場所を丁寧に崩していった。

「……」

 核がきれいに割れていた。

 凄すぎる! なんなんだこれ! 共振破壊って…… 魔法だ。これは異世界の魔法だ!

 結局、杖任せで碌に仕事もしないうちに、ゴーレムを殲滅してしまった。しかも、後半、ゴーレムの欠損はゼロである。

 でも柔らかい敵には無理っぽいな。鉱物系の硬い奴とか、武器破壊にしか使えなさそうだ。でも、この形状、まだまだ仕掛けがありますよという意気込みを感じる。

 さ、取り敢えず用は済んだし戻るとしよう。

 パスカル君たちとは最後の夜だ。


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