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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第八章 春まで待てない
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武闘大会(四回戦)9

 三十分の休憩の間に闘技場が整地され、いよいよ残り八人による勝負が始まった。

 僕は『隠密』補助の付いたイヤリングを外した。

 ここから先、もうこいつはいらないだろう。敵は押しも押されもせぬ騎士揃いだ。

「今度の相手はアレッサンドロ・アルボレートじゃな」

 強そうな名前だ。

「盾と剣、オーソドックスな剣士じゃな。年齢的に一番脂の乗っている時期じゃろうの。油断は禁物じゃ。前試合は接戦で戦闘時間も十分を越えておる。疲労の蓄積があるかもしれん」

 メモの情報だと、中肉中背。爺さんの言う通り、盾と剣を装備。元近衛騎士団とあった。ヴァレンティーナ様辺りからの情報か?

『アルボレート家は騎士の家系。ユニークスキルに気を付けろ』とあった。

「ユニークスキル!」

 爺さんと目が合った。

「ほお、元近衛か」

 ユニーク持ちじゃ、大会が終ったら、どうせ再雇用されるんだろうな。

「王様の子飼いという奴ですかね?」

「恐らくな」

「勝っちゃっていいんですかね?」

「手加減は無用じゃ。駄目ならとっくにちょっかい掛けてきておろう? あの王のことじゃ、勝負は勝負と割り切っておるじゃろうよ。只な、こちらの手の内が知られている可能性はあるの」

「結界はばれてると考えた方がいいですかね?」

「それぐらいの入れ知恵はしてくるじゃろうな」

「『結界砕き』を持ってる人間を選んできた?」

「当然、そういう人選をしてくるじゃろう」

「どんなユニークを持ってるのかな?」

「いつも言っておろう。自分のペースで戦えと。相手に合わせる必要などない。ユニークなど発動させる前に決着を付けてしまえばいいんじゃ」

「簡単に言いますけどね」

「できないことをアドバイスはせんぞ。今のそなたなら結界などなくても相手を追い込めよう。エンリエッタ殿との試合を思い出すことじゃ。邪念を払い、ただ無心に撃ち込むことじゃ」

 

 第一試合が始まった。僕と爺さんは階段を上がり、通用口の前で第一試合を見学することにした。勝った方と次の試合で戦うのだから、しっかり見ておかなければ。

 新人騎士と白亜城目的の刺客の対戦である。

 刺客の方が一日の長があると思いきや、新人選手のまさかのラッシュだった。完全に化けの皮を被っていたようだ。新人騎士はスピードで相手を圧倒した。押して押して押しまくった。

 観客が沸いた。大番狂わせが起こるのではないかと、会場が波打った。

 だが、刺客の方が一枚上手だった。打ち疲れを起こしたところに、重い『シールドバッシュ』を合わせてきた。一瞬の隙だった。新人は脳震盪を起こしたようで、攻撃の手が止まった。

 二発目のバッシュが頭を直撃、審判が割って入って勝負ありの宣告をした。

「手練れじゃの」

 爺さんはそれだけ言った。もうどいつもこいつも王様の子飼いに思えてならない。

「第二試合、準備してください」

 いよいよ、僕の番が来た。


 一礼をした。明らかにこっちを知っているという雰囲気だった。

 どう責めたものか、積極的に行くか、様子を見るべきか。

 自分らしく行く。となれば積極的に押していくしかない。問題は敵がどのタイミングでユニークを使ってくるかだが、勢いに任せるか。

 前の試合の新人のラッシュを思い出した。自分もああなるんじゃないかと疑心暗鬼になる。

 リオナの顔が飛び込んできた。オクタヴィアとナガレと一緒に最前列の防御壁に身を乗り出していた。

 急に落ち着いた。なんというか迷いが吹っ切れた。

 恥ずかしい試合は見せるわけには行かない。あいつが大喜びするような試合をしないと。

 第二試合、開始の合図がなされた。

 アレッサンドロは、いきなり『結界砕き』を放ってきた。

 情報がやはり伝わっていたようだ。

 僕は『千変万化』で一気に加速して、迎撃した。

『結界砕き』が発動しなかった。そのことに相手は驚いたようだった。

 二撃目にユニークを準備していたようだったが、受けに転ぜざるを得なかった。

 発動モーションがちらりと見えた。

 でも、そんなことは関係ない。

 僕の一撃がアレッサンドロを襲う!

 盾が空高く吹き飛んだ。

 アレッサンドロは攻撃から防御に転じるのが遅れた。僕の一撃に腕ごと持って行かれ、盾を手放さざるを得なくなった。

 僕の二撃目が容赦なくアレッサンドロの喉元を狙っていた。

 かろうじて二撃目を剣で弾いたが、その目には恐怖の色が浮かんでいた。

 すかさず僕は三撃目を入れた。

 アレッサンドロは身体を強引によじり、地面に転がることで回避した。

『雷神撃!』

 勝負あった。地を這う稲妻が命中したのだ。そして敵は麻痺して動けなくなった。

 四撃目を入れようと斬りかかったところで、審判に割って入られた。

 僕はそのことに愕然とした。

 審判も『雷神撃』の射程にいたはずなのに、それを回避しただけでなく、次の一撃を押さえにきたのだ。

 この審判何者?

「勝負あり!」

 僕は勝った。

 リオナの方を見ると、リオナが無邪気に喜んでいた。オクタヴィアの手を取って、一緒になって飛び跳ねていた。

 僕は思わず笑った。喜んでもらえたようだ。

 僕は控え室への階段に向かった。爺さんが待ち構えていた。

「あそこで『雷神撃』を使うとは思わなんだぞ」

「ユニークスキル持ちと長期戦はごめんです」

「なぜ結界を使わんかった?」

「『結界砕き』が使われることは分かっていましたからね。特に腕力極振りされているわけでもありませんでしたから、裏をかいてやろうと思ってたんですよ」

「思ってもなかなか防御は捨てきれんものじゃがな」

「修行の賜ですかね」

 最初の『結界砕き』の突きが飛んできたときに、大丈夫だと確信した。彼の剣速は僕の知る人たちに比べて明らかに遅いと感じたのだ。フェイントかとも思ったが、二撃目のスタンスでなんとなく分かったのだ。彼のユニークスキルは剣速を上げるスキルなんじゃないかと。『連撃』系のオーバーブーストだと。

 これまで彼はユニークに頼り切った戦い方をしてきたのだろう。本来、最初の会合で使うべきスキルなのだろうが、『結界砕き』を入れたことで却って隙を生んでしまったのだ。

「自分らしく戦う」

 言うは易く行なうは難し。

 僕にはできたが、彼にはできなかった。常勝パターンを崩さざるを得なかったことが、彼の最大の敗因になった。

 三回戦は不戦勝者とベテランの戦いになった。実力伯仲。長期戦になった。不戦勝者はスキルを多用したがベテランにことごとく阻まれた。が、ベテランにも決め手がなかった。最後は場慣れしたベテランが疲労した相手を沈めた。スキルの使いすぎによるスタミナ切れが敗因のようだった。

 そして四戦目、またゾンビ戦士がおかしな戦いをした。スピードスターの圧倒的な攻撃に翻弄されながらも、最後には勝利を収めていたのだった。

 途中でスピードスターが勝つことを諦めてしまったような気がした。なんだか嫌な気分にさせられた。


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