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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第八章 春まで待てない
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武闘大会(準備中)3

 僕は気配を消した。途端に目標を失ったように周囲をキョロキョロし出した。

 凄いな、この装備。癖になりそうだ。ワーグの鼻をあかせるとはな。

『ステップ』で接近、一瞬で葬った。

「こりゃ、やばいな。暗殺者様々だ」

 スケルトンナイトとアーチャーだ。

 アーチャーが邪魔だな。『雷神撃』はどこまで射程があるんだ? さすがに近接攻撃スキルだから魔法のようには行くまいが。ナイト目掛けて全力の一撃を入れてみるか。

 僕は気配を消したまま正面から迫った。にもかかわらず、スケルトンはこっちを捕らえられなかった。気付いたときには既に間合いに入っていた。

「雷神撃!」

 ナイト目掛けて一撃を放った。雷が落ちた。光と熱と震動が襲った。雷撃より凄いんじゃないか? 放電が走る。

 アーチャーはどうなった? 僕は高台に登ってアーチャーを探した。灰になっていた。

「やばいな、『雷神撃』。本気で撃ったら人死ぬわ」

 取り敢えず魔法の矢を矢筒ごと回収する。骨は灰になるのに矢は無傷とはこれ如何に。

 ナイトの装備の回収をする。盾を頂いた。

「相変わらずいい装備してる。スケルトン先生よりはだけど」

 通路を少し進むと大きな影を発見する。

 本命、スケルトンプルート。スケルトンの巨人だ。長物は斧だ。

 さて、隠密で接近だ。息を殺し、魔力をセーブして、音を立てずに暗殺者の如く。パーティー戦ではできない戦い方だ。

 なんだ、鈍感だな。全然気付かない。

 取り敢えず、装備で上積みした分の力の程を知りたかったので、思い切りぶっ叩いた。

 すると足の骨が粉々に砕けた。

 突然の襲撃に驚いたプルートは斧を振り回した。僕は盾で攻撃を受けた。

 受け切れた。のみならず弾き返した。

 凄いなこの装備付与。僕が僕じゃないみたいだ。

 よし、力があるのは分かった。

 プルートの頭を潰した。

 相変わらず碌な装備を着ていなかった。周りを徘徊しているスケルトン連中の方がよっぽどいい身なりをしていた。

 しばらく行くとまたまたワーグのご登場だ。

「さあ、今度はスピード勝負だ」

『千変万化』で強化して、一気に接敵する。空気が水のように重く感じる。水中を進んでいるかのようだ。ワーグの腐った息使いが聞こえる。肺など朽ちてもうないのに。一挙手一投足がゆっくりと流れるように見えた。

 ここだ!

 牙を剥き出しにして、飛びかからんとする瞬間を狙って剣を薙いだ。上顎と下顎が真っ二つに裂けた。

 二匹目が鋭く床を蹴って向かってくる! 剣は間に合わないので肘を脳天に打ち付ける。

 脳天は粉々に砕け散った。

 三匹目がモルグの棚の上から襲いかかる。剣を切り返して串刺しにする。

 剣を振って、串刺しにしたワーグを振り払う。

「汚ない……」

 肘に腐肉がこびり付いている。急いで浄化する。

「やれたな」

 ワーグの動きに完全に付いて行けたのは大きな自信になる。

 後は実戦あるのみだが、ゼンキチ爺さんレベルの敵がこの迷宮にいるわけもなく、本日の用件は済んだと結論づけた。

「ヘモジ、帰るぞ」

「ナ……?」

 よくリュックのなかで眠れるな。

「チーズ買って帰るぞ」

「ナー」

 急に元気になった。

「ナナ、ナーナ?」

「うん。目標達成だ。ありがとな、ヘモジ」

 自力ではないことが恨めしいが、時間が限られている現状ではよしとしなくてはいけない。後はひたすら、強者と手合わせを繰り返すのみだ。

 問題は大会に出てくるような、力でゴリ押ししてくるタイプの知り合いがいないことだ。実家には山ほどいるのだがな。西方遠征で忙しい最中、まさか呼び寄せるわけにも行かない。

 こちらが手加減するようでは練習にならないからな。

『楽園』で調達できないだろうか? 練習用の木人君とか。


 チーズ屋は相変わらず盛況だった。

 ヘモジも目を輝かせている。

「きのうの騒ぎでほとんど使っちゃったからな」

 我が家用にいつものを半ホール。食べたことのないチーズをブロックで数種類。それと頼まれたものを一ホール。それ以上は重いし、リュックに入らない。

 リュックのなかから追い出されたヘモジは僕の肩に乗って風を切る。というよりチーズのいい香りを嗅いでラリっている。

 地上に出ると食堂に一直線に向かった。そして厨房の裏口を叩いた。

「おお、手に入れてくれたか!」

 買値の倍の値段で売れた。しかも、お昼が無料サービスだ。ラッキー。

 リュックは消臭しているので、今日は臭わないはずだ。

 僕とヘモジは心置きなく昼食を楽しんで帰路に就いた。


 リュックごとエミリーに任せると僕は早速、『スキル大全』を拝みに『楽園』に入った。

 案の定『雷神撃』は『サンダーボルトブレイク』の上位スキルだった。破壊力は十倍。効果範囲は五倍だ。そこに僕の魔法ステータスが載っかるから、破壊力はユニークの必殺技に匹敵するようだ。

 実にまずいことになった。自ら苦労を背負い込んでいる格好だ。

 スキルがなんなのか分かれば、取り敢えず安心だが。『過ぎたるは及ばざるがごとし』と言うし。

 僕は『楽園』を出ると、今まで使っていた宝飾関係を専用の宝石箱にしまった。新しい装備に身体を慣らさないと。

「みんなは?」

「いつも通り、エルーダに狩りに行きましたよ」

「あれ? すれ違わなかったな」

 僕は爺さんのところに向かった。

「おお、準備はできたようだな」

 僕は爺さんに洗いざらい話した。装備品のこと、スキルのこと。

「さすがというか、なんというか。相変わらずぶっ飛んでおるの」

「そうですか?」

「この装備は完全にやり過ぎじゃが、レギュレーション違反ではないから文句は言えまいな」

「よかった」

「はははっ、いくら武闘大会とはいえ、国宝級の装備など誰も付けようとは思わんよ」

「なぜ? こういう時じゃなきゃ、役に立たないでしょうに?」

「『装備破壊』を手に入れたもんが何いっとる? 皆破壊をおそれとるんじゃよ。だから大概壊されても気にならない程度の装備をしていくもんなんじゃ。大会とはいえ、所詮模擬戦じゃ。本気の装備など普通しやせんて。それにしてもなんなんじゃ、この装備は? ドラゴンの大群とやり合うつもりか? いくらした?」

「特大魔石がふたつ」

 爺さんが口をぽかんと開けた。

「高いんだか安いんだか分からんの」

「優勝できれば安い買い物だったと思えるでしょう」

「参加者はあざとく見ておるぞ。上等な装備をしている奴から狙われる。この装備は美しさも手伝って相当目立つじゃろうのぉ。敵は『装備破壊』を嬉々として使ってくるぞ」

「まずいですね」

「全然まずく見えないんじゃが?」

「この装備すべて着けると破壊耐性二百パーセント超えるんですよね。魔法使いでもなきゃ破壊は無理だと思います。それに僕の結界もありますからね。装備にはそう簡単には接触させませんよ」

「呆れたな」

「注文を出したこっちもこうなるとは予想しなかったもので。お店の人が張り切っちゃったみたいですね」

「羨ましい話じゃ、これがあったらわしでも大会で優勝できたやもしれんの」

「爺さんはもう出ないの?」

「援護射撃してやりたいのは山々なんだが、年齢制限があってな。わしはとっくに蚊帳の外じゃ」

「強いのに、勿体ない」

「その分弟子に頑張って貰うさ。さてやるかの。しゃべっていても強くはならんからの。装備は外しておけ、わしの骨が折れる」


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