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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第八章 春まで待てない
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エルーダ迷宮暴走中(オーガ・無翼竜・クヌム編)6

 片側が完全に無防備になった。

 だが結界は作用している。僕は銃を全弾ぶち込んで、空になった弾倉を取り替えた。

 何度か攻撃を浴びたが、結界を越えてくる攻撃はなかった。

 やがて階下からふたりが戻ってきて、戦列に復帰した。

「ヘモジの一撃の方が早かったかな」

 敵を鎮圧したときには、僕とロザリアの銃弾の手持ちはほぼ空になっていた。

 リオナの分も含めても残弾はあと僅かだった。

 殺し合うだけならこちらにはまだ出していないカードがあるが、報酬を見す見す捨てるとなると勿体ない気がした。

 マップ情報も通過ルートをエリアごとに区切っているだけで、細かい通路の策定まではしていなかった。恐らくどこからでも行けるのだろうが、こうも入り組んでいたのでは。決断のしようがない。

 このエリアの敵はほぼ殲滅したが、隣りのエリアには手付かずの敵がほぼ同数控えている。

「リーダーとして決断を」というので、僕は「せっかく空になったのだから」とこのエリアの詳細な情報取得に乗り出すことにした。

「現在位置はほぼこのエリアの中央に位置している。四方を確認してルートの選定が終ったら今日は引き上げよう」

 この場所にアイシャさんと敵が見えないふたりを残して、散策を開始する。ふたりには見えない敵を見えるようにする仕組みをアイシャさんが教えるそうだ。なんでも風の流れが視認できるように感覚を操作する魔法とか。僅かな風の流れも影像として視覚できるらしい。

 僕も教わりたかったが、「そなたはもういらんだろう」と一蹴された。

 僕とヘモジ、リオナとナガレに別れて周囲の探索を開始した。


 入り口の立て看板から攻める。担当は中央のラインから向かって右側だ。僕たちはまず最初の入り口の通路が一本しかないことを確認する。やがて道は三方向に分かれる。まっすぐ行けば僕たちが来た中央の中庭に出る。僕は右回り、リオナは左回りだ。

 僕とヘモジは右の階段を上り、一番高い建物を目指した。

 ここはやはり中央突破が正解だったようだ。通路の両側には周囲を見渡すこともできないような高い塀がそびえていたのだ。右側のエリアをほぼグルリと一周して中央の広場に合流した。中庭の上階段から内側のエリアに侵入できた。さっき通ってきた周囲の通路を見下ろせる上の階層に出てきた。

 これは一方的だ。下の様子が丸わかりである。これでは上からの集中砲火は免れない。僕たちはもう一周する形で上階を総なめにした。

「なるほど」

 一見複雑に見える構造も理屈を照らし合わせるとそう複雑なものではないことが分かった。このフロアーは侵攻用の通路と迎撃用の通路が二重構造になっているのだ。そして中庭で二つのルートは交差する。

 上階中央に兵士たちの詰め所があった。なかにはまだ敵の残党が残っていた。

 僕たちは詰め所の入り口を破壊した。

 敵に動きなしか? 罠か?

 僕たちは最大限に用心して、建物のなかに潜入する。

 ヘモジが先行して進み、潜伏した敵を見つけてはハンマーで殴って気絶させていった。さすがにヘモジサイズの敵がハンマーを振ってもそれが凶器になるなどと思わないようで、気を抜いた瞬間、ミョルニルの餌食になるのである。

「ある意味反則だよな」

「ナーナ」

 制圧完了だ。魔石を回収したいのでとどめを刺させて貰う。

 部屋のなかの一体から鍵が出てきた。

 突き当たりにその鍵が合う宝箱があった。

 なるほどね。奴がここのボスだったのか。

 宝箱を鍵で開けると、なかからお宝がザクザクと出てきた。

 冒険者やっててよかったと思える瞬間である。

 なかのお宝をすべて回収すると袋は大した重さになった。

 これじゃ、どの道先には行けないな。

 確かにここは美味しい狩り場かも知れないけど、常に劣勢を強いられる場所だ。他の冒険者がいなくて当然である。こんなエリア食い物にできるのは遠距離特化した僕たちぐらいなものだ。

 それでも弾丸はほぼ使い果たしたのだ。普通のパーティーはどうやって通過しているのだろうか?

 お宝のなかから羊皮紙が現れた。

「これは!」


 僕たちはそこから出ると、リオナたちと合流するため、中央を越え反対側に出た。

 途中、回収してきた物をアイシャさんたちの所に置いていった。

 今頃、中身を見てうれしさに震えているだろう。

 やがて、こちら側の詰め所に辿り着いた。構造はほぼ左右対称だった。

 敵は討伐されている様子だった。なかにふたりの反応がある。

「丁度よかったのです。鍵が欲しいのです」

 リオナが宝箱を前に言った。

 ヘモジがリオナたちが倒した敵のひとりから懐を改めた。鍵が出てきた。

「なるほど」

 ナガレが感心した。

「あいつが持ってたですか……」

「獲物の回収はしてないのか?」

「今倒したばかりなのです」

「じゃ、お宝拝見」

「向こうにもあったの?」

「ナーナ、ナーナナ」

 両手一杯広げて報酬のでかさをアピールする。

 リオナが宝箱を開ける。蓋が開いた。

「何があるかな?」

 こちらにあったのは羊皮紙だけだった。

「これだけ?」

 最初に開けた箱にだけお宝が入っているのだろうか? 落差が酷いな。

「これって地図じゃないの」

 それはこのフロアーの地図だった。因みに僕たちの回収した羊皮紙は次のエリアの地図だった。

 地図を見比べると、僕たちの探索が正しかったことが証明された。だが、一箇所見落とした場所があった。それは詰め所の足元だ。

 僕が調べた方は、こっちの探索が終ってからだ。

 下への隠し扉を探す。

 絨毯に隠されていた扉が現れた。


 じめじめしていた。どこからも風が入らないせいか、息苦しい。開けた扉を風が通過する。

 明かりを照らすとなかにあったのは留置施設だった。

「一応扉を見張っててくれ」

 僕はリオナとなかに降りた。生命反応はない。それぞれの牢屋も空だった。収穫なしか。

 ナガレもなかを見たいというのでヘモジと一緒に交替した。

「何もなかったわね」

 僕たちはアイシャさんたちと合流すると、訳を話して僕たちが見逃した詰め所の下の探索に向かった。

「空気が流れてる」

 隠し扉を開けたときのリオナの第一声であった。

 どこかに通じてるのか? 地図を確認してもそんな表記はなかった。

 僕たちは階段を降りた。

 そこは彼らの生活空間だった。

 と言っても寝る場所が用意されているだけの粗末な空間だったが。奥に裏口があった。

 結構奥がありそうだな。見張りの連中を呼び寄せる。

「どこに続いてるのかしらね?」

 ナガレが扉を開いた。

 裏口の先には手彫りの洞窟がひたすら伸びていた。

「ちょっと待って」

 ロメオ君が地図に情報を書き足すのを待ってから進む。

 やがて真っ直ぐ進む道と下への階段が現れた。

 全会一致で真っ直ぐ取りあえず進むことに決まった。

「外の匂いが近いのです」というリオナの声を聞いたからだ。

 その言葉通り、洞窟には終点があった。

 朽ちかけた扉を蹴り飛ばす。

 外に出た。敵の反応はない。

「ここは……」

 そこは無翼竜の巣があった渓谷だった。

 ショーカットだ。僕たちはこの洞窟の位置を記録する。地図にも記憶にも。

 となると、先ほどの地下に降りる階段も気になる。

 リオナの腹時計を確認して、もう少し時間があると判断。取りあえず降りることにした。進むことが困難だと判断したら撤収することにする。

 全員が分散して持っていても、さすがに回収した獲物が重くなってきた。

 そういや携帯荷車用の『浮遊魔法陣』がもう完成していたんだった。持ってくるべきだったな。

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