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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第八章 春まで待てない
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エルーダ迷宮暴走中(オーガ・無翼竜・クヌム編)4

遅れました。ごめんなさい。m(_ _)m

 昼食を取って、地下三十二階攻略である。

 マップ情報によると、三十一階層からは敵の種類が三種になるらしい。内二体は前のフロアーのお下がりである。そう言うわけで三十二階はオーガ・無翼竜・クヌムだ。コアゴーレムがいなくなってクヌムという奴が参加する。

 クヌムというのは羊頭の魔法使いだ。水魔法を使うらしい。

 このフロアーの特徴は前回同様であるが、内装が若干生活臭がするものに変わっていた。

 樽が転がっていたり、食いかけの食卓があったり、朽ちた本棚に獣の骨が飾られていたりと、まるで無頼漢のアジトである。

 壁の燭台はどれも火の魔石で、正直暗かった。

 このフロアー、前半はオーガが、後半は羊頭が多くなるらしい。

「既存の奴らは今まで通り、クヌムが現れたら取りあえず遠距離から様子見だ」

 このフロアーには踏み板を踏むと炎が出てくる罠が仕掛けてあった。これ見よがしに吹き出し口があるので誰でも見れば一目で分かる罠だった。問題はフロアー全体が暗いことであった。

 こんなとき頼りになるのは光魔法だ。ロザリアの杖の先に灯る光だ。

 僕たちは足元に注意しながら進む。

 遠くで樽を蹴飛ばす音がした。

「オーガ発見なのです!」

 なんだろうな、始まる前から感じるこのグダグダ感は。

 通路の角から頭を出したところをリオナが一撃で仕留める。

「変なフロアーなのです」

「確かにつまずきそうな物でいっぱいだな」

 飲み散らかした酒瓶やら、酒樽やらが無造作に転がっている。

 オーガが飲んだわけではないだろうが、やたらつまずいたり蹴飛ばしたりして、位置を知らせてくれる。

 戦う前にまず整頓しろと言いたい。

「広場に三体」

 リオナとナガレとヘモジが前に立つ。

「オクタヴィアも必殺技欲しい」

 僕の耳の横でオクタヴィアがささやいた。

「戦わない奴も必要なんだぞ。全員が戦いにのめり込むと周りが見えなくなるからな。冷静な奴が必要なんだ」

「ヘモジやっつける」

 そっちか!

 そっちは勝手にやってくれ。

「クッキー半分も食べられた」

「また作って貰えばいいだろ」

「みんなもクッキー缶持てばいいのに」

「オクタヴィアから貰うから美味しいんじゃないか。みんなだって非常食は持ってるだろ?」

「そうかな?」

「そうだよ。お茶の席で出したらみんな嬉しそうだろ?」

「う…… うん」

 尻尾が揺れる。

 オクタヴィアはリュックのなかに戻ると顔を出して言った。

「食べる?」

「戦闘中だから一個だけな」


 敵が来る。

 目の前で炎が上がった。

 たまーにふらついてるオーガが戦う前に丸焦げになっていることがあると言うが、なるほどトラップの威力もこれ見よがしな分、容赦がなかった。オーガの全身が炎に包まれている。

 トラップに掛からなかった二匹が接近するが、ナガレとヘモジの一撃で果てた。

 ヘモジの攻撃で死んだ奴の方がなぜか気の毒に思えた。

「ナーナナー」

 おお、このタイミングでレベルアップか。

 僕はヘモジを再召喚する。

 トラップに引っかかった一体は、よろめきながら起き上がり接近してくる。

 身体に火がまだくすぶっている。

 それを突然横から捕食した奴がいた。

 無翼竜だった。

 以前背中に乗せるほど仲のよかった奴が、隙を見せたらこれか? それともこのフロアーでは捕食対象になっているのか?

「これだから野蛮な魔物は……」

 アイシャさんが風の刃で一刀両断にした。

 雑魚敵殲滅用の魔法で何やってんですか!

「一枚に見えて、実は何枚も重なっておるのじゃ。どうじゃ、参ったか」

 解説いりませんから。


 岩が削れてできたような長い橋が架かった渓谷が現れた。

 無翼竜の巣だった。

 こちらに反応して、ゾロゾロと接近してくるでかい蜥蜴の群れだ。

 ロザリアが詠唱を始めた。

 ここであれを使うのか。

「氷結爆裂!」

 橋の中央で氷の棘花が咲いた。

 刺し貫かれた無翼竜はそのまま押し出され、自重で氷柱がポキリ、奈落に落ちていった。

 後続の連中も前進しようと針の山を乗り越えてくるが、ポキリポキリと足場を失う度にバランスを失い、仲間を引き連れて奈落の底に落下していく。

 見ている分には面白いが、手前にいた連中の相手もしなくてはいけない。

 僕は結界を維持しながら、仲間の攻撃を見守った。

「あそこ」

 オクタヴィアが指示した場所にはトラップがあった。

 僕たち一行は左に流れて罠を敵群と挟むような位置取りをした。

 敵は勝手に罠に掛かってくれる。そしてロメオ君が風を巻き起こし火炎の竜巻(トルネード)だ。

 敵を一網打尽にする。

 すり抜けてくる残党を個別に対応しながら、敵のいなくなった橋を僕たちは越える。

 手摺りがないと怖いな。

 橋を越えると立て札があった。

 

「『この先、クヌムの地。力なき者は進むべからず』」

 

 いよいよクヌムとご対面だ。

 広い空間だった。今までの通路はなんだったんだと言わんばかりの豪華さで、照明も煌々と輝いていた。

「いきなり成金の世界だね」

 ロメオ君が言った。

「見えておるか?」

 突然アイシャさんが言った。

「うじゃうじゃいるのです」

 ナガレやヘモジ、オクタヴィアが頷いた。

「ほんとに?」

「うそ、何も見えないわよ?」

 ロメオ君とロザリアは後ずさった。

「敵は魔力を攪乱してきている」

 ナガレが言った。

 いつぞやの特殊装備みたいなものか? 魔力のなだらかな散布。

「『魔力探知』は効かないんだね」

「そなたは見えておるのか?」

 アイシャさんが僕を見る。

「よく見えてるよ」

 横から何者かにいきなり殴りかかられた。

 結界が敵を弾き返した。

 なるほど羊頭だった。

 それ以外は人のそれだったが、まさか接近戦を仕掛けてこようとは。

 羊の面を被っているかのようでなんというか怖い。特に無表情なところが。

 アイシャさんが止まった敵を切り裂いた。

 ロメオ君とロザリアは突然沸いて出た敵を見て驚いていた。

「なるほど見えておるようじゃな。いつの間にそんな物を手に入れたんじゃ?」

 早速、僕の『竜の目』に気付いたか。

「以前、兄さんと暗殺者を狩りに行ったときにね。見えなかったもんで、ドーピングを」

「そうそう手に入れられるものではないのだがな」

「嫌な体験だった」

「なら安全だ。見えない者はエルネストのそばに」

「あの、僕たちは?」

「『魔力探知』を捨てて、音と目で判断するんじゃ。それに一度接敵すれば、敵も隠れてはいられない。結界に敵が引っかかるのを待つんじゃ。視力が奪われたわけではないからの」

 僕は接近してくる敵にわざと結界を拡大して当てた。

「見えた!」

 ロメオ君が叫んだが、仕留めたのはリオナだ。

 そうしている間に最初の羊頭が石に変わった。

「なっ!」

 水の魔石(大)だった。

「人と大きさ変わらないのに?」

「こりゃ、幸先がいい」

 要は魔力量の多さだからな。それだけこいつは魔力を内包していると言うことだ。

 どんな魔法を繰り出してくるのか……

 宝飾品を漁るといい物があった。指輪や杖も回収した。

 こりゃ、いい狩り場かもしれない。

 二体目の装飾を回収していると、魔法が飛んできた。

「水流だ!」

 僕の結界が塞いだが、相当な水量だった。魔力はやはり潤沢ということか? 二発目が打てたら考えてやろう。

 ナガレの落雷が敵の頭上に落ちた。

「接近戦が効かぬとなったら、切り替えが早いな」

「魔法使いだろ?」

「人が勝手に戦闘スタイルを分けているだけだ。彼らの本質は勝つためならなんでもするフリースタイルだ。軽装なのも隠密のためだろう」

 久々に手応えのある相手だった。

 期待した隠密装備はなかった。


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