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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第八章 春まで待てない
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西方遠征8

「二匹がいない?」

「どこ行った?」

 全員が息を潜めて索敵する。

 魔法攻撃のせいで魔力残渣が船の周囲を覆う。敵は頭上にいた。

「真上だッ!」

 完全に死角だ。

 テトは全力で振り切りに掛かる。

 火竜が侵入角を変えながらダイブしてくる。急降下から一転、急上昇、そしてまた急降下。

「ワイバーンより身軽だな」

「おまけに飛び道具も持ってるし」

『来るよ』

『大丈夫だ。捕捉した』

 親父の声だ。

 火竜が吹き飛んだ。空中でバラバラに四散した。

 あーっ…… 肺があるか確かめたかったのに。

 残りの一匹がすぐ後ろに張り付いた。後部に火炎攻撃が命中する。

『問題ありません』

 ロザリアが言った。

 突然、火竜はバランスを崩して落ち始めた。

 どうやら片翼が凍ったらしい。炎を吐きながら地上に落ちていった。

「テト、船を近づけてくれ」

 僕は『第二の肺』の確認に向かった。

 でかい亡骸を、我が名剣で切り裂いた。

 残念ながら目的の物はなかった。早々都合よくは行かなかった。

「肉食べるのです。美味しそうなところを一つ」

 僕は解体屋じゃないぞ。どの部位がうまいかなんて分かるわけないだろ。

 取りあえず筋肉の塊の胸肉と、太股の肉を回収した。血を洗い、切り分けて袋に詰めていく。

「いい土産ができたな。うまいかどうか別にして」

 人海戦術で肉を船に運び込む子供たちの姿がやたらと嬉しそうである。

 あっという間に二階の船倉はいっぱいになった。

 そして船は予定地に戻らず、このまま帰路に就くことになった。

 オープンデッキに網とコンロを持ち出して、早速肉を焼き始める。

「一応薬。毒にでも当たったら飲むように」

 僕は万能薬をいつでも取れる場所に置いた。

 誰から食べるか、じゃんけんをして順位を決めたようだ。

 一番手はヘモジであった。

 一番肉に興味ない奴が焼けた最初の一枚を口に放り込んだ。

 モキュ、モキュ。ヘモジには最初の一枚はでかすぎた。なかなか食い切れない。子供たちがまだるっこしい思いで食べ終わるのをじっと待っている。

「…… ナ?」

「うまかったか?」

 子供たちが身を乗り出す。

「ナー…… ナ」

 ヘモジはマイペースだ。

「『普通』だって」

 オクタヴィアが残念そうに通訳した。

 ヘモジを参加させたこと自体間違いだったと遅ればせながら全員が悟った。

 二番手の責任が重大になった。

 二番手はピオトだった。ある意味これも人選を誤っている。

「うまい」

「どううまいんだよ? 硬いとか、柔らかいとか。なんかあるだろ? ドラゴンの肉より上とか、下とか……」

「…… 美味しい」

「言い換えただけじゃんか! 感想だよ、感想ッ!」

 いいことを教えてやる。

 なんでもよく食べる奴に感想を求めてはいけない。

 取りあえず毒はなさそうだな。後は腹痛の心配だけだ。


 結論から言うと、鶏肉のようにあっさりしていて、それでいて歯ごたえと肉らしいコクがあり、ぱさぱさした感じはするけど、噛むとジューシーな肉汁が溢れてくる絶品のような、癖になるような、物足りないような、でも普通の肉だったらしい。

 お前らの舌が当てにならないことだけはよく分かった。肉ならなんでもいいんだろ。

 格付けは後で肉屋に持っていって、プロの舌にお願いすることにする。

 取りあえずオープンデッキでは親父たちを交えて肉祭りが始まった。

 職業意識がしっかりしてるテトでさえ、欲求には抗えないらしく、珍しく「操縦を替わってくれ」と自ら頼んできた。


 僕はひとり操縦席でのんびり景色を眺めながら、物思いにふける。

 獲物の搬入をスムーズに行かせるためにはやはり一階部分と二階部分を入れ替えるべきだろうな。仮にも冒険者の船だ。獲物を回収しやすくする倉庫の配置が必要だ。

 見張り部屋も天井のハッチを開けて頭上を狙えるようにしないといけないな。頭上が完全に死角になっている。停泊中とは言え、まさか一気に間合いを詰められるとは思いもしなかった。甘かったな。早急に対応が必要だ。

 西への遠征が本格的に始まる前に火竜の巣を探すことになるだろう。せめて状況を知らなければ、異世界で言う『夏の虫』になってしまう。

 火竜は一体どこから来たのやら。

 ヴィオネッティーの船は探索には回せないだろう。物資や人の搬送で忙しくなるはずだ。後方に支援用の町も作らないといけないだろう。春までにやるべきことが多すぎる。

 

 地竜と冒険者たちが戦っていた場所の上空を通過した。

 どうやら討ち漏らしたようだ。死骸らしき物は雪原には残っていなかった。積雪の暴れ具合を見る限り、侵攻ルートはずらせたようだが。

 でも内地に行かれては、それはそれで面倒なのではないかな。問題を先送りしただけだろう。

 ヴィオネッティーの正規軍が来るまでの時間稼ぎだと思うが。

 地竜の肉まで要求されたら堪らん。早々に通過してしまおう。

 つくづくこの領地には飛空艇が必需品だなと思えた。

 今抱えているこの領地を治めるだけでも一杯一杯なのがよく分かる。西方の案件をうまく処理しないとジリ貧まっしぐらだ。


 

 リバタニアに到着したのは日も暮れかけた夕刻だった。親父たちを降ろして、酒屋で棟梁の土産を購入して僕たちは船を出した。途中コンテナの回収をして、スプレコーンに着いたのはすっかり日が暮れた夜中だった。

 格納庫に慎重に船を収める。コンテナが壁スレスレだった。

 やはり姉さんに頼んでここも広げて貰うしかないだろうな。

 一番艇が既に格納庫に収まっていた。

 やはりあのフォルムの方が美しかった。

 微妙なラインの違いなのに雲泥の差である。

 子供たちは土産を持たせてさっさと家に帰した。さすがに家族も心配していることだろう。

 僕たちはそれから小一時間、土産の積み卸しを行なった。


「どう?」

 僕はアンジェラさんとエミリーに火竜の肉を試食して貰った。

「うーん」

「……」

 微妙な顔つきをした。

「微妙な味ですね」

 エミリーが苦笑いした。

「確かにね。噛み応えはあるけど、なるほど、噛んでいるとうま味が出てくるね。繊維が多いんだね。獣人にはよくても人族にはちと硬いな。脂がもう少し多いといいんだけど。干し肉にするといい味出すかもしれないね」

 なるほど。さすがアンジェラさん、アドバイスは的確だ。今度機会があったら、脂肪が付いていそうな部位を選んで回収してくることにしよう。こいつは肉屋に回して干し肉にでもして貰うことにするよ。


 さて、もう一つ土産がある。こっそり持ち帰った巨大陸亀の甲羅である。

 持ち帰ったはいいが、大きすぎて置き場所がなかった。

 なんに使えるかも分からないし、取り出す理由も見つからなかった。ヘモジ用に巨大な盾でも作ってやろうか?

 やはり売り払うか。買値はいくらだろう?

 翌日、『銀団』のギルドハウスに寄って、巨大陸亀の甲羅の需要などを聞いてみた。すると返ってきた回答は「硬くて、でかくて加工しづらいので売り物にはならない」と言うことだった。

 僕は書庫に閉じ籠もり『楽園』に向かった。

 今回は部屋を押しつぶされてはいなかった。でかい甲羅は窓の向こうの景色に溶け込んでいた。

 加工法は…… 

 探せば見つかる、不思議な本棚。


『錬金術師の方程式』


 ほんのり光る頁を開くとありました。『毒竜などのベノム系生物の毒液から強酸水を作り、溶かして切断する。ただし、強酸水を入れるには水晶の器が必要』。

「毒ね……」

 知ってる毒といえばヒドラか、巨大蛙だな…… 問題は毒を入れる容器だ。大量にいるからな。

 取りあえず容器集めだけでもしておくか。いや、それも何を作るか考えてからだ。

 思わず持って帰ってくるんじゃなかったと反省した。


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