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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第七章 銀色世界と籠る人たち

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閑話 友への手紙4

「では、これから抽選会を行なう。その前に入植の意思の確認をせねばならん。このなかで自分の金で今すぐ家を買って入植しようという者、我々の面倒を受けずに済む宛てのある者は抽選する必要はない。今すぐ不動産屋を当たるなり、友人知人を探すなりするとええじゃろう。わしらの厄介にならないからといって、今すぐここを追い出すようなことはせん。ただし明日までじゃ。明日にはまたそなたたちのような者たちがここにやって来るからの。抽選会を行ない、明朝、決められた家に引っ越して貰うことになる。家は住む人数によっていくつかのタイプに分かれるが、基本同じ物だと思って貰って構わない。わしからの個人的な意見だが、特に行く宛てがないのなら、取りあえず部屋を借りてみることをお薦めするぞ。月の家賃もそう高いものではないからの」

 我が家は、第二村の転移ゲート広場からすぐの場所になった。どうやらゲートから近い家から埋められていくようだ。

 明日が待ち遠しい。

「皆さん、お食事会が始まりますよ。下りてきて下さい」

 肉祭りが始まったようだ。


 芋洗い状態だった。

 村中の獣人たちや、人族の家族が集まってきていた。

「今日の肉はなんだい?」

「姫さんからは野牛と、コロコロと、岩蟹の脚だな。あとは持ち寄りで兎と熊だな。あとはコーンスープと酒樽とジュース樽が」

 広場の一角に樽が積み上げられていた。

「飲み放題、食い放題ですよ。皆さん遠慮しないで下さいね」

「食器がないぞ」

「肉がまだ焼けてないのに、食器だけ持ってどうすんだい」

 笑いが起こった。

「まずは乾杯だ。コップだ。コップ」

「誰か、酒樽開けろ」

「すいません、差し入れ持ってきたんですが」

「差し入れはこっちだよ」

「椅子が足りんぞ」

「丸太追加。あーっ、面倒臭い。若様探せ!」

「若様ー、若様いませんかー?」

 若様?

「ナーナ」

「あ、若様。すいません。椅子が足りなくて」

「酔っ払ってもここで寝ないでよね」

 歓声が上がった。若様が何かしたようだ。

「サンキュー、若様」

「ああ、こっちにも頼んます」

 あれが若様? まだ子供じゃないか? あの子供がここの大地主なのか?

「みんなどいて。一気にやるから」

 すると若様は魔法で土から大量のブロックを作った。

「凄い……」

 若様というのは魔法使いだったのか!

「よーし、みんな運べ」

 男たちがブロックを運び出して会場に椅子とテーブル代わりに置いていった。

「明かり付けるわよ。びっくりしないでね」

「お姉ちゃん早くー」

 人族の少女に獣人の子供たちがじゃれついている。

 空に眩しい明かりが灯った。大きな光の魔石だった。

 子供たちが歓喜して飛び跳ねる。

「光の魔石なんて生まれて初めてみた」

 義姉が呟いた。僕も教会にしかない物だと思っていた。

「ほら、君たちもこれを持って」

 僕たちに酒の入ったコップが渡された。

「お嬢ちゃんと坊ちゃんにはこっちだ。まだ飲んじゃいけないよ」

 葡萄ジュースだ。匂いで分かる。

「そろそろ肉が焼けるぞーっ」

 全員が一方向を見つめている。そこには壇上があった。

 その壇上にひとりの人物が上がった。

 若様じゃないのか? 獣人の女性だ。

「他の長老は朝が早いので、今回はわたしが音頭を取らせて貰います。まずは急な催しであるにも関わらず、お集まり頂きましたこと、心より感謝申し上げます」

「いつものことだ。気にすんな」

「感謝すんのはこっちだろ?」

「ユキジ婆ちゃん、お肉焦げちゃうよ」

 笑いが起こった。

「おや、それは急がないといけませんね。では、手短に。まだまだ寒い日が続きますが、大いに食べて、飲んでリフレッシュして下さい。では――」

「乾杯ーっ!」

 全員がコップを掲げて一気に飲み干した。

「あっ、それと千年大蛇の肉も頂いたので、食べたい方は胃袋を開けておくように」

「おーっ、まじか? この時期にあれが食えんのか?」

「蛇を食べるの?」

「何言ってやがる、これだから人族は」

「すげぇうめえんだぞ。騙されたと思って食ってみろよ」

「若様だって食ってんだから大丈夫だ。なあ、若様」

「あれはみんなみたいな丈夫な顎がなきゃ、噛み切れないんだよ。でも味は最高だから。癖になる美味しさって奴」

「さすが若様、分かってんじゃねーか」

 笑いが溢れ出す。

 なんでだ? 若様って、地主だろ? なんで労働者と一緒に肩を抱き合ってんだ。

「ナーナー」

「あいつも飯食うのか?」

「ごめん。うちの召喚獣ちょっと変なんだ」

「ヘモジー、一緒に食べようぜ」

 子供たちが集まってきた。

「オクタヴィアは?」

「ナーナ」

「いた!」

「あぎゃ」

 尻尾が二本ある猫が子供たちに拉致された。

「それは食わんでくれよ」

「食うわけないだろ、エルフの姉ちゃん」

 エルフだ…… エルフまでいるのか?

「すっげーな。お祭りじゃねーか。よう、若様、うまくやってるか?」

「それはこっちの台詞だ。試掘うまくいってんのか?」

「もう少し深く掘らねーと分かんねー」

「飲み過ぎんなよ」

「それは無理な相談だ」

 ドワーフが高笑いした。

「やろう共、食い尽くせ!」

「おーっ!」

「シシケバブー焼けた?」

「串焼き頂戴。コロコロのサイコロも」

「これも食え」

「げっ、ネギなんかいらねーよ」

「じゃあ、食わしてやらん。この絶妙なハーモニーが分からんやつは焦げた肉でも食ってろ」

「リオナ、おっさんがあんなこと言ってんぞ」

「おっさんの串焼きはサイコーなのです。わざわざアルガスから駆けつけてくれたです!」

「裏切り者ーっ」

 子供たちを先導している少女に見覚えがあった。

 それはあのときの少女だった。アルガスの広場で出会ったあの――

「あの子は…… 一体?」

「うちらの姫さんだ。若様の許嫁だよ。可愛いからって惚れんなよ」

 あの子が? 

 少女がこちらにやって来る。串焼きの束を抱えて。

「また会ったのです。食べてるですか? お腹が空いていては元気が出ないのです」

 彼女はまた串焼きの袋を差し出した。



 最近、君が隣にいてくれたらと思うことがよくあります。きれいな景色を見たり、楽しいことがあるとつい、いるはずのない君に話し掛けています。

 人が誰かを求めてしまうのは、悲しみを分かち合うためではないね。喜びを分かち合いたいからなんだとこの歳になってようやく気付きました。

 ユニコーンを初めてこの目で見たとき、どれ程寂しかったことか。

 ここは楽しいことが多すぎて、君と会えない悲しさばかりが募ります。


「別れた道は二度と合流することはないのだろうか?」


(義弟に前段をすべて削除するように頼まれましたが無視しました)


 とにかく僕の話は終わりです。こちらの入植はまだ始まったばかりなので、定員には余裕があります。今からでも大丈夫だと思います。

 僕たちはこの町でやっていくことに決めました。

 一緒にもう一度やりませんか?


『某月某日。スプレコーンの青空の下より。クラマール・ジュニア』


 *   *   *


『追伸。

 迎えに行った方がいいかしら?

 それとも、もう素敵な人ができちゃったかしら? 

 どちらにしても返事を頂戴。

 親友に近況を知らせてくれても罰は当たらないでしょ? 返信用のお金を同封します。くれぐれもよしなに』


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