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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第七章 銀色世界と籠る人たち
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エルーダ迷宮迷走中(スケルトンプルート・ワーグ編)11

 罠のある廊下をいくつかかわした後、広い部屋に出た。

 それらしき棺桶が転がっていた。

 なかからびっくり箱のように出てくるんだろうなと思いながら接近するが、反応がない。

 僕は棺桶の縁をつま先で蹴って起こす。

 骨を軋ませながら、スケルトンナイトが起き上がるが、寝ている間に盾を頂戴しておいた。

 僕はその盾で思い切り頭を殴り飛ばした。骨がバラバラに砕け散った。

「ああ、しまった! どこ行った、頭蓋骨?」

 結構大きな音がして転がったから気付いただろうと周囲を見渡すと、なんだろう? 今一盛り上がりに欠けている。

 いくら僕が『山の老人の秘薬』を飲んだからと言って、いきなりこんな反応はないはずだが。

 僕は転がっている頭蓋骨を串刺しにして、次の相手を探す。発見されるまで魔力を増大させてみる。

 自分が魔力を思いきり絞っていたことに気付く。

 ワラワラとスケルトン軍団が寝床から起きてくる。

 僕は寝ぼけている敵の数を減らして行く。三匹ほど剣で倒したところで、敵はようやく剣を振り上げた。

 矢が飛んできた。

「え?」

 僕は柱の陰に隠れた。

『認識』スキルで確認。


『スケルトンアーチャー、レベル四十四、メス』


 飛び道具か。僕は燃やした。

 敵も進化している!


 僕は斧を振り上げ、よろめきながら接近してくる敵の頭を、腕ごと刎ねた。今のはウォーリアだ。

 氷の魔法が飛んできた。

 柱の向こうに見慣れた奴が。

 ソーサラーだ。魔法の威力が上がっている。しかも積極的に魔法を使ってくる。

 お返しに火の玉をプレゼントしておいた。

 相変わらず炎耐性は皆無だった。魔法使いがいいのかそれで? 

 突然鋭い、突撃をかましてきた敵がいた。

 結界に弾かれ切っ先があらぬ方へ、ひねった腰に一撃を加えた。真っ二つになって床に転がったが、すぐにくっついて起き上がってきた。


『スケルトンランサー、レベル四十五、オス』


『ステップ』が使えるのか…… 一気に詰めてくるのはさすがだ。

 でも……

 僕はお返しに『ステップ』を使って、懐には入り、顎から剣を突き上げた。

 火の玉が飛んできた。崩れた壁の上に別のソーサラーだ。

 僕はくたばったランサーを盾にした。すると見事に命中、ランサーは燃え上がった。

 魔法を放ってソーサラーも燃やしてやった。

「仲良く燃えてろ」

 突然、目の前の柱が崩れてきた。

 僕は咄嗟に『ステップ』を入れて別の柱の陰に隠れた。

「なんだ?」

 周囲のギミックをことごとく壊しながら、一匹のスケルトンが現れた。見上げるほど背が高く、赤く変色した骨の巨人である。

 倒れた柱を軽々飛び越え、ワンランク上の装備を揺らして、まるで生きているかのように俊敏に振る舞った。

「すごいな、想像以上だ」


『スケルトンプルート、レベル四十五、オス』


 とてもさっきのランサーと同レベルとは思えない。

 人には長過ぎる両手剣を振り回しながら、飛ぶように接近してくる。

 どうやらあいつには見えるようだ。

 僕目掛けて、障害お構いなしに剣を振り下ろした。

 繰り出された一撃は石の柱を砕いた。素で受けきれるとはとても思えない。

 僕は盾を捨てて、両手で奴の太い足の骨を薙ぎに行く。

 プルートは咄嗟に跳躍して、後方に飛び退いた。

「うわっ、身軽だ。面倒臭っ!」

 火の玉をぶち込んだ。が、威力半減。

「なっ! 魔法装備?」

 僕は気配を押さえ、『ステップ』で接近、こっそり足を切断しに行ったら蹴飛ばされた。

 一度見つかると気配を絶つのは無理か?

 仕方ないので、威力を上げた火の玉を近距離からぶち込んだ。

 が、それも避けやがった。

 そしてお返しとばかりに剣を薙いできた。

 近くにいた仲間のスケルトンの首が飛んだ。

 味方もお構いなしとは恐れ入る。

 僕は『千変万化』を使って加速し、間合いから脱出する。

 離れ際に火の玉を顔面に見舞ってやった。

 さすがに重心が踏み込んだ片足に乗った状態では回避行動は取れないだろう。

 プルートは頭だけを仰け反らせたが、悪あがきだった。

 握っていた巨大な両手剣が飛んできた。

「うわっ!」

 剣の柄が倒れた柱の根元に引っかかって、あらぬ方角に飛んでいった。

「怖いことしやがる」

 普通武器を投げるかな?

 プルートは顔面陥没、息絶えていた。

 兜の材質をチェックした。残念、ただの鉄製だ。他の装備も同質だった。一点だけ魔法装備だったが、着られないのでは意味がない。宝飾関係もチェックしたがめぼしい物はなかった。

 宝石だけ外して回収した。

 他のスケルトンたちの装備もチェックした。こちらもめぼしい鎧はなかったが、二、三本売れそうな武器を見つけた。それと魔法の矢が入った矢籠だ。回収しておいた。宝飾関係はさすがに進化していた。

 これはいい稼ぎになりそうだ。

 高値で売れそうだった。僕たちが以前、アンデットフロアーで回収した宝飾関係の上位版が出るようだった。

 よし狩り尽くすか。


 廊下にまたワーグである。

 隠遁して接近。面倒臭いので爆炎攻撃。群れの中央に落としてやった。あっという間に消し飛んだ。

 するといきなり槍が飛んできた。

 魔力に反応したランサーである。ここのスケルトンは平気で武器を投げるな。僕は槍を拾うと投げ返した。

 カランカランカラン……

 天井に当たって手前に落っこちた。

「……」

 天井が低過ぎた。僕の肩では山なりに投げない限り、敵まで届かない。

 骨より遠投能力ないってどうなんだろうな? 生きてる人として。

 槍を拾おうと前進してきたランサーにモヤモヤを具現化した火の玉をぶつけてやった。

 周囲が明るくなるほどよく燃えた。

 どうだ、思い知ったか。

 ランサー以外、いなかった。

 なんだ、ひとりで散歩だったのか? 寂しい奴め。

「……」

 僕は自分の背中を振り返る。今の発言はなかったことにする。


 更に奥に進んだ。道が二股になっていた。

 マップを見て、出口に繋がらない方に曲がった。

 あった。増援部屋だ。

 増援部屋とはトラップ部屋の一種で増援要請の罠のある部屋だ。似たものに召喚部屋というのがあるが、全くの別物である。

 増援部屋は普段通路などに仕掛けてある増援の罠より広い範囲の魔物が集まってくる罠だ。広範囲から追い詰められ、結果として部屋に籠城させられる羽目になる大掛かりな罠である。

 大概、数に根負けして脱出することになるので、引っかかったら即脱出が原則らしい。

 わざと発動させて魔物を集めておいて、脱出、転移して出戻り、その隙にエリアを抜けるとか、お宝を頂くとかいう使い方もできるらしい。

 発動しても部屋に閉じ込められるわけでもなく、接近までには時間的な余裕がある。足の速い魔物のフロアーは諦めて貰うとして、結構緩めな罠である。

 一方、召喚部屋は閉じ込められた上に魔物が召喚されてくる緊急性のあるトラップだ。気付いたときには大概手遅れ、脱出するにも苦労することになる。

 召喚されてくる魔物はフロアーのレベルより若干低くなっているとは言え、その数は決まっていない。

 いつぞや、僕たちがプレートメイル男に落とされた地下三十一階の罠がまさにそれである。運が悪いとフロアーの魔物ともリンクするので最悪である。因みに扉は外からは開くようなので、敵味方入る分には自由らしい。

 部屋を探索する間、扉は閉めないというのが、冒険者の鉄則である。だからといって、踏み床や、宝箱の罠など、その扉を閉めるために仕掛けられた複合的な罠もあるので、安心してはいけない。


 僕は大きな扉を開いた。

 奥に宝箱がこれ見よがしにあった。

 僕は扉が閉まらないように、回収品の剣を扉の隙間に挟むと、部屋のなかに入った。

 宝箱まで進むと迷宮の鍵を使って箱を開けた。

 なかから出てきたのは矛の先っちょだった。

 刃先は銀色の波紋を描いていた。変わった模様があることから、材質はダマスカスではないかと思われる。

『認識』スキルでも『古い矛先?』としか認識されない。僕が知らないんだから当然だろう。

 あとでエルフかドワーフに鑑定して貰うことにする。

 メモ書きがあり、『ブリューナク、五』とあった。

 使えるものなのか? 五とある以上、一も二もあるのだろうか。取りあえずリュックのなかに仕舞っておく。珍しい材質なので、売れば金になるかも知れない。

 僕は扉に挟んでおいた剣を回収して、部屋を出た。

 お、近くにいた魔物たちが「ご飯ですよ」と母に呼ばれた子供のようにワラワラと集まってきた。

 僕は敵が一番少ない通路に退避した。

 が、いたのはプルートだった。しまった、数じゃなかった。


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