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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第七章 銀色世界と籠る人たち

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エルーダ迷宮迷走中(セベク編)4

 出口階段まで全部で二十一匹の蛙を魔石に変えた。僕が倒したのは最初の頃の一匹だけだ。ヘモジの分を僕にカウントすれば別だが。

 予定より大分早く、転移部屋に到着した。

「どうする?」

「ご飯にするのです。混んでるから丁度いいのです」

 外に出ると、兵士詰め所で長い列ができていた。

 列はシスターのメアリーさんの前まで続いていた。

「どうかしたんですか?」

 門番さんに尋ねた。

「数でゴリ押しして、返り討ちにあってきたみたいだ」

「敵は?」

「ヒドラらしい」

「九本首!」

 リオナが嬉しそうに飛び跳ねた。

「残念七本だ」

「雑魚なのです」と肩を落として食堂へ歩き始めた。


 食堂の座席は半分ほど埋まっていた。いつも座っていた席も取られていたので、適当に座る。

 リオナの注文はステーキセット大盛りでいつも決まりだ。

 僕は日替わりを選んだが、この日のリオナはまだメニューとにらめっこをしていた。

 珍しいこともあるもんだ。

「うーん」

 恐らくスキルのせいだろう。いつもの量では足りないと感じているのだろう。

「ステーキもう一枚」

「大盛りと普通サイズ一枚ですね?」

「大盛り二枚」

 おい!

 店員が目を丸くする。ここのステーキは普通ではない。冒険者仕様である。料理はどれもこれも、大食漢に合わせた分量になっている。大男でもここのステーキ大盛りは食い応えがあるのだ。

 十歳児が大の大人でも食べきれない量にチャレンジするというので、その場の視線を集めた。

 結局ぺろりと食べきったが、それから一時間はお腹が張って動けないでいた。万能薬が食い過ぎに効くか分からないが与えておく。

「これからは胃腸薬も持ち歩くか」

 黒猫もいるしな。

 頭のなかで調合の材料を思い浮かべる。熊胆(ゆうたん)はこの時期手に入らないので薬を店で買った方が早いと判断する。後で薬売りから買っておこう。

 一時間を棒に振ることになった僕たちは眠り羊のいる地下十一階の山岳地帯の草原に寝転がった。

 羊たちは既に冒険者たちに狩り尽くされていて、今は姿一つ見えなかった。

「のどかなのです」

 リオナはスヤスヤ眠り始める。食っちゃ寝の幸せの極致だ。

 僕は次のフロアーの確認をする。

 セベク。鰐顔の化け物だ。見た目はドラゴンから羽を取って、小さくした蜥蜴だが、それでも二メルテか三メルテ程あるらしい。前脚は退化していて、攻撃は専ら強靱な顎と牙だ。

 鰐と同様、水辺は要注意であるが、陸での足の速さも特出すべきものがある。リオナは兎も角僕は逃げ切れないだろう。


 地下二十三階には冒険者が一組もいなかった。

 高級皮を狙う奴らがいそうなものだが誰もいない。既に狩られたのかと思いきや、フロアー中に魔物の反応が残っている。

 すぐそばの池に反応があった。微かな風にも波が立つほど静かな水面だった。

 セベクが水中からこちらを虎視眈々と狙っている。

 僕は池の畔を遠巻きにしながら、雷撃を池に落とす。

 呆気なかった。

 腹を向けて死骸が一つ浮き上がってきた。ギミックの魚は悠々と泳いでいる。

 ここじゃ魚釣りは無理らしい。

 氷を張りながら死骸を回収し、コアの心臓を取り出す。

 簡単じゃないか。そう思ったとき、事態が動いた。

 遠くにいるはずのセベクが反応したのだ。

「血の臭いを嗅ぎ付けたです」

 リオナがそう言った。どうやらセベクの血のなかには仲間を誘発する何かが含まれているようだった。

 僕は咄嗟に消臭するが、池に流れ込んでしまったものはどうしようもなかった。

 いつぞやの火蟻のケースに近い。

 道理で皮が高級でも誰も狩りに来ないはずだ。

 これじゃ、二匹目以降、心臓をえぐり出している時間がない!

 取りあえず一匹だけでも名札を付けて転送する。

「血が血を呼ぶか……」

 ギリギリまで接近させ、順番に絞めていく。血に反応すると言っても限度がある。範囲内の敵を予め倒してしまえば問題ない。後は時間の問題だ。

 ということで迫ってくる敵を一時的に凍らせ、足止めをする。足が恐ろしく速いので結界に一度ぶつけて足止めしたところを凍らせる。

 リオナに解体作業を進めて貰う。

 解体する手が空いたら次の一匹に銃弾をぶち込んで貰う。すっかり力加減になれたようで頭を吹き飛ばすこともなくなった。解体した心臓はどうせ屑石にしかならないので遠くに放り投げてもらう。

 後続が都合のいい場所に誘導され、僕の魔法の餌食になる。いつぞやの岩蟹討伐で使った手だが、魔力が上がったおかげで、なんの苦もなく楽に捕獲できる。

 つくづくドラゴンの恐ろしさを知る。ドラゴンにはこの程度の攻撃、全然効かないんだから。


 しばらく流れ作業をして一帯のセベクを狩り尽くした。

 リオナは解体作業で馬鹿になった手を振る。

 僕は手の汚れたリオナに変わって万能薬を飲ませてやる。リオナは回復した小さな両手を開いたり閉じたりして復活をアピールする。

 次のポイントに移動する。僕たちにこびり付いた臭いが敵を呼ぶ。向こうからやって来てくれるのは有り難い。ただ、足の速さは尋常でないので油断はできない。


「大量、大量」

 根こそぎ取り尽くした感じだな。

「いくらぐらいになるのかねぇ」

 最後の獲物を転送する。

「高級なのです」

 返り血を浴びたリオナと僕は全身を魔法で浄化していく。

 お互いほっと胸を撫で下ろす。

「ふたりきりだと解体も大変だな」

 僕たちは笑いながら残りの行程を歩いた。

 階下の脱出部屋に到着すると僕たちは外へ出た。さすがにいい時間になっている。

 僕たちは解体屋を目指した。

 案の定、人海戦術でてんてこ舞いだった。

 取りあえず今日の分で三十二枚分の納品書を貰った。残りは明日精算ということになった。

 商業ギルドの裏手にある搬入カウンターで水の魔石をまとめて売り払い、納品書を貰い、冒険者ギルドの窓口へ進んだ。


『依頼レベル、C。依頼品、水の魔石(中ランク)。数、五。期日、天後月末日まで。場所、エルーダ迷宮洞窟。報酬依頼料、金貨五枚、全額後払い。依頼報告先、冒険者ギルドエルーダ出張所』

 四セット分を支払い、端数も売り払って、締めて金貨二十一枚である。

 さらに解体屋の納品書を依頼書と一緒に窓口に提出する。


『依頼レベル、C。依頼品、セベクの皮。数、一以上。期日、天後月末日まで。場所、エルーダ迷宮洞窟。報酬依頼料、金貨五枚から/枚、全額後払い。依頼報告先、冒険者ギルドエルーダ出張所』


 三十二枚分の依頼をこなして、金貨百六十枚である。


「相変わらず、無茶苦茶ね。三十二匹も倒すだなんて」

 マリアさんが呆れ顔だ。

「それは今日の分だけなのです。残りは明日なのです」

 フロアーにいるほぼ全てのセベクを狩ったから、明日の方が多いはずだ。

 というより明日も来なくてはならなくなった。

「何匹狩ったの?」

 僕とリオナは顔を見合わせた。

「八十ぐらい?」

「五十までは数えてたです」

 どう考えてもオーバーキルだと言わんばかりの顔で見られた。

 仕方ないだろ、一フロアーずつしか先に進めないんだから。

 そうしたのはそっちなんだからな。

 僕たちはスプレコーンに戻り、家路に就いた。

 また少し雪が積もった。


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