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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第七章 銀色世界と籠る人たち

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スノードラゴン討伐改め、アイスドラゴン討伐2

 傾斜地で加速してそのままジャンプ。空高く飛び上がり、着地する。

 何度も繰り返していると、只飛び上がるのではなく、空中でアクロバティックなことをしたくなる。空中でターンを試みる。それができたら切り返し。

 ボードの傾き、魔力の強弱でエッジの効き具合まで違ってくるから不思議だ。そんな術式いくら姉さんでも仕込んでいるはずがないのに。

 それができるとより遠くまで飛びたくなる。

 そしてより高く。

 雪上を滑るという、当初の目的はどこかに行っている。

 こりゃ、もう別のスポーツだ。

 僕は勾配を見上げると、今度は雪原を逆走することを考える。

 微妙な角度調節と加速を繰り返しながら雪原を上っていく。

 爽快感がない。

 きつい。雪が却って大きな抵抗になる。

 上りに関しては宙に浮いている方が楽だ。

 身体がだんだん動きに慣れてくる。

 魔力の加減にも慣れてくる。

 コツは上昇時は真っ直ぐ上昇することに専念し、シュプールを描いて遊ぶのは余力のある滑空時にやることだ。これも慣れてしまえば関係ないことだが。

 さすがに疲れたので、水筒で喉を潤し、休憩をとる。魔力もがっつり減っているのでしっかり補充する。

「もうちょっと高いところに行きたいもんだね」

 欲が出た。

 すっかり山登りにも慣れ、木々を縫うように進めるようになると、より早く、より長くという欲が出る。


 見晴らしのいい山の頂に上った。

「絶景かなー」

 ここからひたすら降りるのか。感動が止まらない。

「行くぞー」

 僕は降下を始めた。するといきなり地面に亀裂が。

 やばい、雪崩だ。

 完全に飲み込まれるタイミングだった。

 僕は咄嗟にジャンプして回避した。

 足元を雪崩が通り過ぎて行く。

 下手の谷間を巨大な雪の波が襲う。

 風魔法で吹雪を払いながら、雪崩が通りすぎた跡に降り立つ。

「なんで雪崩が……」

 整備された遊び場ではないので、こういうこともあるだろうが、せっかくの雪原が台なしである。木々も軒並み倒された。

 突然背後に大きな魔力を感じた。

 振り向くとそこには、今にもこちらに襲い掛からんとするでかい頭があった。

「お前が雪崩を起こしたのか!」

 僕は猛スピードで逃げた。

 荒らされた雪原の跡を、森のなかを一気に駆け下りた。

 あれはアイスドラゴンだ!

 騎士団のある領地にいるはずの奴がなんでこんなところに? 別物?

 距離が開いた。

 振り切れた、と思ったら、いきなりブレスを見舞われた!

 きのうの教訓で、見えない距離まで影響を及ぼすことは分かっている。

 軸線にいては駄目だ。

 はじき飛ばされたかのように高度を一気に上げて、そのまま弧を描いて、ドラゴンの死角に入る。

 ブレスはすぐには止められないようで、ドラゴンの反応は遅れた。

 頭上から弾丸を全弾放り込む。ここは『魔弾』しかない。早く薬室を空にしないと。

「!」

 障壁がない! 

 全弾が、見事に硬い鱗に弾かれた。

 こいつ…… 魔力切れを起こしてるのか?

 やはりきのうのスノードラゴンの対戦相手だったんだ。

 恐らく北の領境にいたもう一匹から逃げるためにここまで逃げてきたんだろう。あるいは第二ラウンドで追いやられたか。

 僕は実弾に続けて『魔弾』をぶち込んだ。

 アイスドラゴンは身体をよじって、一撃を避けた。

「あれを避けるのかよ!」

 地面で破裂した衝撃を食らって、ドラゴンは仰向けに雪原に突っ込んだ。


 スノードラゴンにリベンジすべく、ここで魔力の回復でも図っていたのだろう。

 ギリギリまで魔力を抑えて、来たるべくときに備えて。

 そこへ、魔力が豊富な餌がぶんぶん飛んできたわけだ。


 地上に落ちたドラゴンは怒りの咆哮を上げる。

 羽を大きく羽ばたかせ、気力をみなぎらせていく。一気に来る気だ。

 手負いとはいえ、アイスドラゴンの飛行能力は今まで見たどんな魔物より凄い。

 あの巨体を地面ギリギリまで下ろしながら、それでもぶれずに追いかけてくる。

 ワイバーンならとっくに地面に落ちてるところだ。

 羽ばたきの突風が気流を乱す。

 気流が乱れるのは困る。僕は止むを得ず上空に逃げる。

 それを狙っていたかのように、奴は一直線に突っ込んでくる。

 僕はエッジを限界まで利かせて、全開で弧を描く。

「駄目だ、追い付かれる!」

『魔弾』ッ!

 僕は後方にいつ以来かのぼた餅をばらまいた。

「当たれーッ!」

 まるでこちらの手を分かっているかのようにひらりひらりと交わしていく。

 地面に落ちたぼた餅の雨が轟音を上げる。新たな雪崩が別の斜面を下り落ちる。

「しつこいッ!」

 僕は銃で奴の軌道を予測して大きめの『魔弾』を撃ち込む。

 障壁が一枚復活していた。が、一枚では魔弾の敵ではない。

 爆風に巻き込まれてアイスドラゴンは大きく姿勢を崩した。

 ドラゴンは大きく旋回して再び距離を取る。

 仕切り直しである。

 距離をおけばブレスを撃ってくる。

 撃たせるわけにはいかない。

 でも今はそれどころではない。魔力が足りない。飛行に、『魔弾』に、結界に絶賛魔力大放出中である。

 僕は万能薬の小瓶を飲み干すと、瓶を投げ捨てる。

 町に知らせるか? いや、町に向かったら町がやばい。せめて退避とバリスタの準備をするだけの時間が必要だ。

 取りあえずあの峠を越えないと。町からは見えない。

 ドラゴンの体勢が整ったようだ。大きな口を開ける。

「くそ、タイミングが合わない」

『魔弾』を撃ち込もうと思っていたのに、タイミングを逸した。

 ここは逃げの一手である。

 僕は強引に軌道修正する。高度を一気に下げて森のなかに姿を隠す。

 二発目のブレスが来る!

 僕は全力で飛び、峠の陰に隠れた。

 頭の上を猛烈な吹雪が通過する。

 山が揺れた。

 まただ。雪崩が起こった。

 僕は雪崩のなかに身を投じた。

 ドラゴンは魔力探知の達人である。一方、全力で逃げるために僕は魔力をダダ漏れにしている。隠れようがない。

 それでも時間を稼がないといけない。

 雪崩に巻き込まれたと思わせる! 来い!

 でかい図体が迫ってくる。

 雪崩にぼた餅を混ぜる。

「今度こそ!」

 ぼた餅爆弾だ!

『魔弾』が奴の鼻ずらで数発まとめて爆発した。

 雪崩に突っ込んできた手前、ドラゴンも自由が利かなかったようだ。

 今度こそ直撃だ!

 ブレスが放たれた。

 視界を薙ぎ払う一撃だった。

 ぼた餅ごと薙ぎ払いやがった……

「こいつ……」

『魔弾』をこれでもかというぐらい撃ち込んだ。

「落ちろよーッ!」

 奴はきれいに身体をひねって回避する。

 くそぉッ…… ウロチョロしやがって。

 ブレスが来る! そう思ったときだ。

 半鐘の音が微かに聞こえた。

 アイスドラゴンが音に反応した。

 やばい。興味が移ったようだ。

 誰だって楽して食事に有り付きたいものな。

 でも、まだ行かせるわけにはいかない!

 銃を奴の顔面目掛けて撃ち込んだ。

 万能薬の小瓶をもう一瓶空ける。

 ドラゴンは直撃を食らって山の傾斜に突っ込んだ。

「余所見をするからだ」

 僕は『一撃必殺』を発動した。が、落ちた場所にドラゴンがいない?

「いた!」

 山の傾斜に沿ってそのまま加速、再び浮力を受けて巨体が舞い上がる。

「あの野郎!」

 町との距離を一気に詰めた。

 僕は全力で追いかける。

 が、距離が縮まらない。

 僕は風を起こした。風魔法で僕自身を吹き飛ばした。

 僕は自分の進行方向に稲妻を落とす。

 ドラゴンは町の手前の森に落ちる。

「『魔弾』だけだと思うなよ。蜥蜴野郎!」

 雷爆を落としてやると余裕をかましていたドラゴンが悲鳴を上げる。地面が大きく陥没した。 もうブレスは撃てないのか? 残っていた魔力もこれまでか?

『魔弾』ッ!

『千変万化』ッ!

「『一撃必殺』ッ!」

 ブレスを放ってきた! 

 僕は正面からブレスを受ける。

 ガギッツ!

 奴の顎が遂に僕を捕らえた。

「こいつ…… 威力のなくなったブレスを囮にして直接攻撃か!」

 これがドラゴンなのか? 恐ろしいほど狡猾だ。天賦の才がある。戦うために生まれてきたまさに世界最強の魔物。

 結界ごと噛み砕こうと顎に力が込もる。

 目が合った。

「『一撃必殺』ッ!」

 アイスドラゴンの頭が吹き飛んだ。

 長い首が項垂れ、羽が二つに折れて、でかい図体が落ちていく。

 ズンッ!

 森のなかに衝撃が走る。雪埃が空を覆う。

「勝ったのか……」

 周囲を見渡すと、惨憺たる景色が広がっていた。

 山の頂は崩れ、雪崩で山肌は崩壊。森には大きな陥没した跡が残っていた。


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