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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第六章 エルーダ迷宮狂想曲
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エルーダ迷宮狂想曲33

 罠があったら困るんだが。地図がないのはほんとに痛い。というよりこんな場所地図にもあっただろうか?

 慎重に行こう。

 壁には魔石ではなく松明が掛けられている。光の魔石より暗い。

 魔力探知モードで視界を補う。

 道の先に一匹、見張りがいる。外の連中と違って、がっつり鎧を着込んでいる。

 わざと見つかり、彼にこの長い一直線の通路を歩かせることにする。この道には何かありそうだ。周囲に他の敵はいない。

「さあ、来い!」

 僕は懐中電灯の光を向けた。

 見張りは慌てて、長い一本道をせっせと歩いてくる。僕は罠がなかった場合に備えて、剣で真っ二つにする準備をする。

 ほぼ中間地点でドカーンと見事に吹っ飛んだ。

 あちゃー、爆破トラップだ。

 僕は爆破跡に近づく。

 装備を物色しようと思ったのに台無しだ。

 凹んだ地面に切れたロープが残っていた。

 なるほど、これなら目視できるな。少々視界が暗いが何とかなるだろう。

 取りあえず、見張りがいたところまで進む。

 どっちだ?

 通路が左右に分岐している。中央は窪地になっていて、敵が一杯だ。足元に積まれた漬け物石が気に掛かる。恐らくあれは投擲用の石だろう。

「まとめて消去したいところだね」

 ライフルの弾倉を十発入りの物と取り替える。

 まずは近場のあれからだ。

 バシュ!

 草原トロールは洞窟にいても草原トロールというのだな? 大きな図体が崩れ落ちた。

 次は右の遠距離要員。次は左。斧を持った脳筋はスルーだ。

 安全を確保して、いざ前進。二股を左に折れた。

 プチッ

 なんか足に引っかかった。

「まずい!」

 僕は来た道を急いで退避した。爆発の衝撃が襲った。

 ゲホゲホッ。一帯埃まみれになった。

「グオオオォ グホ、グホ」

 おっ、襲いに来たトロールも咳き込んでる。

 リオナ直伝、別に教わった訳じゃないけど、探知スキルを使ってのめくら打ちだ。

 接近してきた偵察三匹を仕留めた。

 もう来ないか?

 僕は周囲を探索する。

 大丈夫のようだ。

 左の道は吹き飛んでしまったので右に行く。

 結局どちらから行っても同じ場所に合流した。

 合流した先にボス部屋みたいな雰囲気のでかい扉があった。見張りの一行が巡回していたので、落とし穴にまとめて落として弾丸を見舞ってやった。

 部屋の鍵はと…… 掛かっていなかった。

「誰もいない?」

 ここじゃないのか? 奥に進むとまた部屋が。そこにはさっきより強そうなトロールが。

 手に何かの骨でこしらえた槍を持っている。


『草原トロールチーフ、レベル四十、オス』


「いかにもって感じだ」

 どうだろう、ライフルでやれるかな…… 『一撃必殺』を発動する。

 久々に手強い奴が現れた。

 実弾を抜いて『魔弾』をいつでも撃てる状態にしておく。

 周囲を探索すると、並んでいる部屋の扉にそれぞれ同じ敵が貼り付いているのが分かる。そして部屋のなかにも何かがいた。

「村人かな?」

 乱戦は不味い。人質を殺されるのは避けたい。

『魔弾』『一撃必殺』モードを発動。軽めにぶち抜く。

 周囲の敵にはばれなかったようだ。僕は前に進む。罠がなければ突貫するのだが。

 僕は倒した敵が見張っていた部屋を覗く。

「見つけた。村人発見」

 絵面的にはこのまま殺したい。

 救出はこの辺りを片付けた後だ。

 隣の部屋の見張りを倒して、反対側の見張りも倒す。

 奥の敵には罠があるかチェックするために死地を歩いてきて貰いましょう。僕は懐中電灯を照らした。

 敵がノコノコやって来る。

 どうやら罠はないようだ。安心しかけたとき目の前で吹き飛んだ。

「……」

 びっくりした。結界なかったら巻き添え食ってたよ。怖いわー。

 この洞窟には罠職人がいるのか? 

「グオオオオオッ」

 反対側にいた奴が、爆破を聞きつけ接近して来た。

 僕は振り返り様、『魔弾』を腹にぶち込んだ。

 通路を一本分吹き飛んだ。

 僕は大きく息をする。この辺りに敵はもういない。

 村人開放だ。

 拘束されている村人たちを開放していく。

 はっきり言って怖い。張り倒されたら死ねる距離だ。

 幸い何もされることなく、一人目の開放を済ませた。するとあとの開放は彼がやってくれた。

 ねずみ算式に開放されたトロールが増えていく。

「こ、怖い!」

 一部屋辺り、四、五匹。六部屋を開放して団体さんができあがる。それが僕の周りをウロウロしているのである。

 ようやく最後の一匹が開放されたようだ。

 礼も言わずに、地響きをさせながら出口のある通路に消えていった。

 石橋で会ったトロールだけが特殊だったのか?

 なんかやりがいに欠ける依頼だ。大勢に囲まれて威圧されただけじゃないか。これで報酬がくだらなかったら、あのトロール、真っ二つにしてやる。

 更に奥へ行くと似たようなコロニーがあった。やり方は同じだ。

 捕まっていたのは主にメスと子供たちだった。相変わらず礼も言わずに消えていった。

 さて、洞窟のなかもかなりさっぱりしてきた。

 氷の塊を怪しい場所に投げ込みながら先を急いだ。

「後は最深部のみ!」

 果たしてそこに捕らわれている奴はいるのか? 

「トロールのお姫様なんて見たくないぞ」

 サクッと扉の前にいる二匹の草原トロールを仕留めると扉を開けた。

 マッチョなトロールキングがいた。

「……」

 負けた理由が分からない。どう考えても一匹だけ体格違うから。こいつと同格の敵がどこかにいるということか?

 今は考えまい。

 糞ッ、なぜ味方を開放するときの方が緊張するんだ。

「タスカッタ、ボウケンシャヨ」

 おおーっ、さすがキング。道理をわきまえて――

 体格が体格なので、壁を壊して出ていった。

「……」

 一通り見渡してもう何もないことを確認すると、僕は帰還することにした。

 そして洞窟から出ると一匹のトロールが待っていた。

「ブジオワッダヨウダナ。レイヲイウ。ヤクソグノシナダ。ダイジニシテクデ」

 僕は一枚のカードを受け取った。

「ヘモジ、カード。ヘモジ、ショウカンデキル」

「へもじ?」

「ヘモジ、トロールノエイユウ、サイキョウノセンシ。サイショ、ヨワイ。ダンダンツヨクナル。デハ、サラバダ」

 ドスンドスンと弾むように斜面を下りながら、敵を薙ぎ倒していく。敵がゴロゴロと坂を転がり落ちる。そして、あいつも蹴躓いて一緒になって落ちていく。

「お前らこの傾斜に住む適正ないんじゃないのか?」

 敵がきれいに一掃された坂を僕はのんびり景色を見ながら下る。

 一応、敵側のキングがいないか、振り返って索敵を掛けてみるが、それらしき者はいなかった。

 さてと、出口を目指さないと、大分遅れたからな。

 みんなはもうお昼を食べて午後の部に向かったかもしれない。

 やがて平らな場所に出ると僕は石橋まで戻った。

 水で喉を潤してから、貰ったカードを確認した。

 なるほどトロールの絵面のカードだった。裏側を見るとそこには召還術式が!

 僕は早速ヘモジを召喚することにした。

「ヘモジ召喚ッ!」

 黄色い召喚魔法陣が地面に光る。

「…… 小さッ!」

 オクタヴィアサイズのトロールが出てきた。

『ナー』

「……」

 キリリと決めポーズをした。

「ヘモジ?」

『ナー』

「ヘモジ、武器は?」

『ナ、ナー』

 ハンマーを取り出した。

「金槌みたいだな?」

『チョウ!』

 ハンマーを空にぶん投げると鳥に当たった。鳥とハンマーが落ちてきた。ヘモジはハンマーを回収すると、鳥を引きずって戻って来た。

『ナー』

「くれるのか?」

『ナー』

 この鳥はギミックじゃないのか? 取りあえずお近づきの印だからな、貰っておこう。

 それから出口までの道すがら召喚獣ヘモジは、小動物を狩りまくった。しばらくするとカードが光った。

『ナーナナー』

 ヘモジが開放して欲しそうだったので、一度開放した。カードの輝きが収った。カードがレベル二に進化していた。

 なるほど、敵を倒すことで強くなるのか。

「やっぱりレベルの高い敵を倒した方が実入りはいいのかな?」


 それから再召喚したヘモジと小一時間ほど歩いてようやく出口に辿り着いた。

 ヘモジを開放してから外に出ると、ヘモジから貰った鳥はやはり消えてなくなっていた。

 食堂で食事を済ませると、僕はヘモジと一緒に眠り羊の元に向かった。

 凍らせた頭をハンマーシュート!

 ヘモジのカードが目映く輝いた。

『ナーナナー』

 出戻って来たヘモジはレベル十になっていた。ようやくリオナサイズになった。ハンマーも身体と一緒に成長するのは面白い。

 さて、ヘモジで遊ぶのは止めて、リオナたちを追いかけることにする。

 地下二十階、デザートゴーレム討伐である。

 入ってすぐ引き返した。

「駄目だ。地図ないと死ぬ」

 地下二十階層は砂漠エリアだった。


『ヘモジ入手クエスト』発動条件。

 ・その日、石橋ポイントまでトロールと一切交戦、殺害をしない。

 ・ソロであること。

 ・トロールを助ける。

 ・内緒(ヒント、七分の一)


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